201 / 205
最終章 飛翔
予想外すぎる出来事
思いもよらずラズリから口づけをされ、驚きのあまり奏は動きを止めた。
そのままそっと頬に手をやり、じわじわと込み上げる喜びに、思わず口角を緩める。
「ラズリ……これって、その……ラズリも……俺のことを?」
喜びを噛み締めつつ途切れ途切れに聞いてみれば、ラズリはほんのり頬を染めた。が、頷いてくれたわけではない。
ここでラズリが頷いてくれれば、最高だったんだけどな……。
そんな風に思うも、焦りは禁物だと、すぐに自分に言い聞かせる。
理由はどうあれ、一度はラズリに拒絶された身だ。であるのに、今こうして再び何事もなかったかのように傍にいられるだけでも、十分に幸せだろう。
それに、彼女にはこれから能力を奪われた後のルーチェのことなどを話さなければならない。
そういったことを考えると、いつまでも甘い空気に浸っていることはできず、奏は優しくラズリの両肩に手を置くと、腰を落として視線を合わせた。
「どうしたの?」
キョトンとするラズリに、奏は少しばかり言い淀む。
隠したところで、どうせいつかは言わねばならないことであるし、彼女も気持ちが落ち着けば聞いてくるだろうから、言わないという選択肢はない。だが本当に、今言ってもいいものなのか?
もう少し時間を置いて、ラズリの方から聞いてきた時にでも教えてやればいいんじゃ……。
チラリと、そんな考えが頭をよぎる。
実際にそうしたところで、それはただの時間稼ぎにしかならず、最終的にラズリにはきちんと教えなければならないが、それでも。それでも、今でなくてもいいんじゃないか──?
「あ、ええと、あのな……」
言い出しかけた手前、何かを言わなければならず、なんと言うべきか奏が考えを巡らせた時──。
「闇のこと?」
ラズリが、いきなり予想外のことを口にした。
「え? 闇?」
まさかラズリの口から闇の名前が出るとは思わず、今度は奏がキョトンとしてしまう。
彼のその反応に、ラズリは違和感を覚えたのだろう。途端に、「闇の話じゃないの?」と、怪訝そうな顔をされてしまった。
「ああ! いや、そう、そうだ! 俺が話したかったのは闇のことだ! あいつ今回やたら無茶して、とりあえず今はここに来る前にいた宿屋で休ませてるんだけど──」
「うん、知ってる」
「え?」
食い気味に頷いたラズリの言葉に、奏は凍りついたように動きを止める。
どうしてラズリがそれを?
「私、奏が闇を宿屋に転移させたこと何となく分かったから、だから宿屋まで行って、お札を使って闇のこと眠らせてきた」
「え? え?」
ラズリの口から紡がれる、奏自身が知らない出来事に、彼の頭の中が疑問符でいっぱいになる。
え? どういうことだ? ラズリが一人で城から宿屋まで行った? しかも、札を使って闇を眠らせたって……ええ?
実際のところ、奏はまだ宿屋に闇の状態を確認しに行けていなかった。
ラズリの精神体が光を放ち、室内を眩しいほどの光で埋め尽くした後──光が消え去り、元の状態に戻った時には、ラズリの姿は忽然と消えてしまっていて。
闇の状態も気にはなったが、奏にとってはそれより何よりラズリのことが心配であったから、まず真っ先にラズリのもとへと駆けつけたのだ。
精神体の状態で大きな力を使って、ラズリがそのまま消滅してしまっていたら、どうしよう。
王宮内のベッドに寝かされているラズリの身体が、異常を来していたら、どうしよう。など、不安に思えばキリがなくて。
まずはラズリの状態を確認し、そのまま寝かせておいて大丈夫なようであれば、闇の様子を見に行こうと考えていたのだ。
それなのに、まさかラズリが闇の状態を知っているなんて。それどころか、彼女が闇を眠らせただなんて、思いも寄らなかった。
あまりにも予想外すぎる出来事に、奏の頭の中は真っ白になってしまったのだ──。
そのままそっと頬に手をやり、じわじわと込み上げる喜びに、思わず口角を緩める。
「ラズリ……これって、その……ラズリも……俺のことを?」
喜びを噛み締めつつ途切れ途切れに聞いてみれば、ラズリはほんのり頬を染めた。が、頷いてくれたわけではない。
ここでラズリが頷いてくれれば、最高だったんだけどな……。
そんな風に思うも、焦りは禁物だと、すぐに自分に言い聞かせる。
理由はどうあれ、一度はラズリに拒絶された身だ。であるのに、今こうして再び何事もなかったかのように傍にいられるだけでも、十分に幸せだろう。
それに、彼女にはこれから能力を奪われた後のルーチェのことなどを話さなければならない。
そういったことを考えると、いつまでも甘い空気に浸っていることはできず、奏は優しくラズリの両肩に手を置くと、腰を落として視線を合わせた。
「どうしたの?」
キョトンとするラズリに、奏は少しばかり言い淀む。
隠したところで、どうせいつかは言わねばならないことであるし、彼女も気持ちが落ち着けば聞いてくるだろうから、言わないという選択肢はない。だが本当に、今言ってもいいものなのか?
もう少し時間を置いて、ラズリの方から聞いてきた時にでも教えてやればいいんじゃ……。
チラリと、そんな考えが頭をよぎる。
実際にそうしたところで、それはただの時間稼ぎにしかならず、最終的にラズリにはきちんと教えなければならないが、それでも。それでも、今でなくてもいいんじゃないか──?
「あ、ええと、あのな……」
言い出しかけた手前、何かを言わなければならず、なんと言うべきか奏が考えを巡らせた時──。
「闇のこと?」
ラズリが、いきなり予想外のことを口にした。
「え? 闇?」
まさかラズリの口から闇の名前が出るとは思わず、今度は奏がキョトンとしてしまう。
彼のその反応に、ラズリは違和感を覚えたのだろう。途端に、「闇の話じゃないの?」と、怪訝そうな顔をされてしまった。
「ああ! いや、そう、そうだ! 俺が話したかったのは闇のことだ! あいつ今回やたら無茶して、とりあえず今はここに来る前にいた宿屋で休ませてるんだけど──」
「うん、知ってる」
「え?」
食い気味に頷いたラズリの言葉に、奏は凍りついたように動きを止める。
どうしてラズリがそれを?
「私、奏が闇を宿屋に転移させたこと何となく分かったから、だから宿屋まで行って、お札を使って闇のこと眠らせてきた」
「え? え?」
ラズリの口から紡がれる、奏自身が知らない出来事に、彼の頭の中が疑問符でいっぱいになる。
え? どういうことだ? ラズリが一人で城から宿屋まで行った? しかも、札を使って闇を眠らせたって……ええ?
実際のところ、奏はまだ宿屋に闇の状態を確認しに行けていなかった。
ラズリの精神体が光を放ち、室内を眩しいほどの光で埋め尽くした後──光が消え去り、元の状態に戻った時には、ラズリの姿は忽然と消えてしまっていて。
闇の状態も気にはなったが、奏にとってはそれより何よりラズリのことが心配であったから、まず真っ先にラズリのもとへと駆けつけたのだ。
精神体の状態で大きな力を使って、ラズリがそのまま消滅してしまっていたら、どうしよう。
王宮内のベッドに寝かされているラズリの身体が、異常を来していたら、どうしよう。など、不安に思えばキリがなくて。
まずはラズリの状態を確認し、そのまま寝かせておいて大丈夫なようであれば、闇の様子を見に行こうと考えていたのだ。
それなのに、まさかラズリが闇の状態を知っているなんて。それどころか、彼女が闇を眠らせただなんて、思いも寄らなかった。
あまりにも予想外すぎる出来事に、奏の頭の中は真っ白になってしまったのだ──。
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️