44 / 205
第四章 再出発
危険察知能力
街を出て、数日歩いた先にあった森の中。
沢山のキノコを両腕いっぱいに抱えたラズリは、満面の笑みを浮かべていた。
「ラズリは本当に食いもんが好きだよなぁ」
ラズリの隣を歩きつつ、食べられそうな木の実を次から次へと毟り取りながら、奏が呆れたように呟く。
「だって、住んでた村では決まったものしか食べられなかったから、こんなにも色んな種類の食べ物があるなんて知らなかったんだもん」
村の周りは森に囲まれていたものの、森へ行くことは基本禁じられていた為、ラズリは今まで森で採れたものを殆ど口にしたことがなかった。
唯一口にしたことがあるものといえば、村人であるウォルターが密やかに森から採ってきていたキノコぐらいで。
あのキノコがもの凄く美味しくて大好きだったから、この森でキノコを見つけた時、嬉しくなって採りまくってしまったのだが──問題が一つあった。
「ねぇ奏、キノコって毒があったりするのよね? この中で、どれが安全なやつだか分かる?」
調子にのって見つけたキノコをもれなく全部収穫したラズリだったが、キノコに関する知識が皆無だったのだ。
それは当然キノコだけでなく、食べ物全般に関することだったけれど。
そして最悪なことに、食事を必要としない奏も勿論、食の知識なんて持っている筈がなくて。
「う~ん……試しに俺が全種類食べてみても良いが、毒って……俺に効くのか?」
なんて事を言い出す始末。
詳しく聞いたところ、たとえば毒キノコを食べたところで、人間なら死ぬかもしれない危険なものでも、魔性である奏には何の異常も顕れないかもしれないとのことだった。であれば、奏に毒味してもらっても、なんの意味もないわけで。
「だったらこの大量のキノコ、どうしたらいいの?」
泣きそうな顔でラズリは問うが、奏はそれに肩を竦めることしかできない。
闇ならきっとどれが危なくてどれが安全か分かるだろうが、いかんせん、彼は今ここにはいないのだ。
「奏がもうちょっと頼りになれば良いのに……」
そのため、ラズリが思わずそう呟いてしまっても、それは仕方のないことだったろう。
こんなにも沢山のキノコがあるのに、どれが安全か分からなければ、一つだって手をつけることはできない。──尤も、手をつける前に毒キノコがある可能性に気付けたことについては、僥倖とも言えるかもしれないが。
最悪、試しに食べた一つが猛毒を含んでいたら、そこでラズリの人生は終わっていたかもしれないのだから。
どんなにキノコが好きでも、流石にそんな危険を冒してまで食べる気にはなれず、ラズリはしょんぼりと下を向く。
「じゃあさ、キノコは諦めて木の実でも食うか? 取り敢えず目についたやつは全部毟っておいたからさ」
落ち込んだラズリを元気づけようと、奏が集めた木の実をバラバラとその場に広げた。
「ほら! 美味しそうなやつがいっぱいあるぞ?」
もしも闇が一緒にいたなら「木の実だから毒がないなんて、誰が言ったんでしょうかね?」とでも言ったのだろうが、不幸にも彼は今ここにいない──二度目──。
「そうね、木の実だったら危ないものはなさそうだし──」
と手を伸ばしかけて、ラズリは途中で動きを止めた。
奏が広げた木の実の中に、如何にもといった感じの毒々しい色のものが混ざっていたからだ。
これは、さすがにヤバいんじゃ……。
ラズリの危険察知能力が優れていた──と言うより、奏の危険察知能力は死滅しているのかもしれない……と戦慄した瞬間だった。
「ラズリどうした?」
動きを止めたラズリを不審に思ったらしい奏が首を傾げ、よりにもよって毒々しい色の木の実を摘み、ポイっと自分の口の中へと放り込む。
「あっ!」
思わず声を上げたラズリと見つめ合いながら、奏は眉間に皺を寄せつつそれを咀嚼し、やがてゴクリと飲み込んだ。
「そ、奏、大丈夫?」
眉間に皺を寄せていたことから、奏が何かしらの違和感を覚えたのかと思い、心配したラズリだったが。
「やっぱ、味も何も特に感じるものはねぇな」
返ってきたのは、そんな能天気とも思える科白で。
やっぱり魔性には食べ物に含まれる毒は害を及ぼさないのだということに安堵しつつも、心配した気持ちを返せとも思い、ラズリは持っていたキノコを、詰め込めるだけ奏の口に詰め込んだ。
「ひゃふり? ふぁひひゅりゅひゅびゃ!?」
「うるさい! ちょっと黙ってて!」
目を白黒させている奏を放置し、ラズリはぷんぷんと肩を怒らせながら、森の奥へと一人で歩を進める。
取り敢えず採ったキノコは奏に保管してもらって、闇に会えた時に鑑定してもらおうかな。毒のあるキノコは、全部奏に食べてもらえば良いし……。
考え無しの奏の行いのせいで、いらぬ心配をさせられたのだから、意趣返しにそれぐらいしたって許されるだろう。
腹が立ったとはいえ、手に持っていたキノコを全部奏の口に突っ込んだのは、やり過ぎだった──勿体ない──と思いつつ、ラズリは新たに見つけたキノコへと手を伸ばしたのだった。
沢山のキノコを両腕いっぱいに抱えたラズリは、満面の笑みを浮かべていた。
「ラズリは本当に食いもんが好きだよなぁ」
ラズリの隣を歩きつつ、食べられそうな木の実を次から次へと毟り取りながら、奏が呆れたように呟く。
「だって、住んでた村では決まったものしか食べられなかったから、こんなにも色んな種類の食べ物があるなんて知らなかったんだもん」
村の周りは森に囲まれていたものの、森へ行くことは基本禁じられていた為、ラズリは今まで森で採れたものを殆ど口にしたことがなかった。
唯一口にしたことがあるものといえば、村人であるウォルターが密やかに森から採ってきていたキノコぐらいで。
あのキノコがもの凄く美味しくて大好きだったから、この森でキノコを見つけた時、嬉しくなって採りまくってしまったのだが──問題が一つあった。
「ねぇ奏、キノコって毒があったりするのよね? この中で、どれが安全なやつだか分かる?」
調子にのって見つけたキノコをもれなく全部収穫したラズリだったが、キノコに関する知識が皆無だったのだ。
それは当然キノコだけでなく、食べ物全般に関することだったけれど。
そして最悪なことに、食事を必要としない奏も勿論、食の知識なんて持っている筈がなくて。
「う~ん……試しに俺が全種類食べてみても良いが、毒って……俺に効くのか?」
なんて事を言い出す始末。
詳しく聞いたところ、たとえば毒キノコを食べたところで、人間なら死ぬかもしれない危険なものでも、魔性である奏には何の異常も顕れないかもしれないとのことだった。であれば、奏に毒味してもらっても、なんの意味もないわけで。
「だったらこの大量のキノコ、どうしたらいいの?」
泣きそうな顔でラズリは問うが、奏はそれに肩を竦めることしかできない。
闇ならきっとどれが危なくてどれが安全か分かるだろうが、いかんせん、彼は今ここにはいないのだ。
「奏がもうちょっと頼りになれば良いのに……」
そのため、ラズリが思わずそう呟いてしまっても、それは仕方のないことだったろう。
こんなにも沢山のキノコがあるのに、どれが安全か分からなければ、一つだって手をつけることはできない。──尤も、手をつける前に毒キノコがある可能性に気付けたことについては、僥倖とも言えるかもしれないが。
最悪、試しに食べた一つが猛毒を含んでいたら、そこでラズリの人生は終わっていたかもしれないのだから。
どんなにキノコが好きでも、流石にそんな危険を冒してまで食べる気にはなれず、ラズリはしょんぼりと下を向く。
「じゃあさ、キノコは諦めて木の実でも食うか? 取り敢えず目についたやつは全部毟っておいたからさ」
落ち込んだラズリを元気づけようと、奏が集めた木の実をバラバラとその場に広げた。
「ほら! 美味しそうなやつがいっぱいあるぞ?」
もしも闇が一緒にいたなら「木の実だから毒がないなんて、誰が言ったんでしょうかね?」とでも言ったのだろうが、不幸にも彼は今ここにいない──二度目──。
「そうね、木の実だったら危ないものはなさそうだし──」
と手を伸ばしかけて、ラズリは途中で動きを止めた。
奏が広げた木の実の中に、如何にもといった感じの毒々しい色のものが混ざっていたからだ。
これは、さすがにヤバいんじゃ……。
ラズリの危険察知能力が優れていた──と言うより、奏の危険察知能力は死滅しているのかもしれない……と戦慄した瞬間だった。
「ラズリどうした?」
動きを止めたラズリを不審に思ったらしい奏が首を傾げ、よりにもよって毒々しい色の木の実を摘み、ポイっと自分の口の中へと放り込む。
「あっ!」
思わず声を上げたラズリと見つめ合いながら、奏は眉間に皺を寄せつつそれを咀嚼し、やがてゴクリと飲み込んだ。
「そ、奏、大丈夫?」
眉間に皺を寄せていたことから、奏が何かしらの違和感を覚えたのかと思い、心配したラズリだったが。
「やっぱ、味も何も特に感じるものはねぇな」
返ってきたのは、そんな能天気とも思える科白で。
やっぱり魔性には食べ物に含まれる毒は害を及ぼさないのだということに安堵しつつも、心配した気持ちを返せとも思い、ラズリは持っていたキノコを、詰め込めるだけ奏の口に詰め込んだ。
「ひゃふり? ふぁひひゅりゅひゅびゃ!?」
「うるさい! ちょっと黙ってて!」
目を白黒させている奏を放置し、ラズリはぷんぷんと肩を怒らせながら、森の奥へと一人で歩を進める。
取り敢えず採ったキノコは奏に保管してもらって、闇に会えた時に鑑定してもらおうかな。毒のあるキノコは、全部奏に食べてもらえば良いし……。
考え無しの奏の行いのせいで、いらぬ心配をさせられたのだから、意趣返しにそれぐらいしたって許されるだろう。
腹が立ったとはいえ、手に持っていたキノコを全部奏の口に突っ込んだのは、やり過ぎだった──勿体ない──と思いつつ、ラズリは新たに見つけたキノコへと手を伸ばしたのだった。
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️