【完】天涯孤独になった筈が、周りで奪い合いが起きているようです

迦陵 れん

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第四章 再出発

後の祭り

 少しずつ、少しずつ、だが確実に騎士の男達がラズリへと近付いてくる。

 彼等と一定の距離を保つべくラズリは後退るが、後ろに下がるより、前へ進む方が断然有利だ。加えてラズリは後ろを振り向けない為、背後に切り株などがあれば、そこで足が止まってしまう。

 どうしよう……。

 徐々に追い詰められていくのを感じながら、ラズリは懸命に考えた。

 一番手っ取り早いのは奏が戻ってきてくれることだが、森は広大だし、木の実集めに夢中になっているであろう彼が、いつ戻るかは分からない。

 闇は暫く忙しいと言っていたから来てくれるはずはないし、自分だけではどうしたって逃げ仰せるのは不可能だろう。街を出てから騎士達に遭遇する気配すらなかったから、完全に油断していた。

 こんな事なら、奏と一緒に木の実を取りに行けば良かった。そんな後悔をするも、今となっては後の祭りでしかない。

 一か八か大声をあげれば、奏に気付いてもらえるだろうか? けれど逆に、大声をあげた瞬間、それを合図に騎士達が一斉に襲いかかって来る恐れがある。

 この場合、どうするのが正解なんだろう?

「奏……早く戻って来て……」

 状況的にも精神的にも追い詰められ、心細くなったラズリは騎士達に聞こえない程度の声で呟いた。

 この状況で助かるには奏の助けを待つしかないなんて、自分が情けなさすぎて涙が出そうになる。

 それでも騎士達に涙を見せるのは嫌で、ぐっと歯を食いしばると、ニヤニヤとしたいやらしい笑みを浮かべたアランの姿が目に入った。

「そろそろ答えは決まったか?」

 鞘から剣を抜き放ち、アランは陽の光にギラリと刀身を光らせて見せてくる。

「俺はお前がどちらを選んでも依存はない。いや、寧ろ抵抗してもらった方が楽しめるから、是非抵抗してもらいたいと思っているんだが……どうだ?」

 どうだ? と言われても、それで「はい、抵抗します」などと言う人物がいるわけがない。もしそんな事を言うとしたら、単なる気狂いではないか。

 やっぱりこの男は、頭がおかしいんだわ……。

 そう結論付けて、ラズリはアランに気付かれないよう、背後へと一瞬だけ目を向けた。

 こうなったら素早く身体の向きを変えて、全速力で逃げるしかない。近くにいる騎士達はラズリを捕まえる為か全員馬から降りているし、まさか馬を放り出してまで追って来ることはないだろう。

 ならば──。

 身体の向きを変えるべく、片足に力を入れる。だが、そんな些細な変化に目敏く気付いたらしいアランが、瞬時に騎士達に号令をかけた。

「逃げるぞ! 捕まえろ!」

 なんて嫌な奴!

 舌打ちしたい気持ちをおさえて、ラズリは踵を返し、走り出す。が、いくらも走らないうちに、背後から伸びて来た手に背中をドン! と押された。

「きゃあっ!」

 勢い余って地面に滑り込むようにして転び、全身が擦れる。

「いったぁ……」

 身体のあちこちが痛みを訴えて来るものの、構っている暇はない。一刻も早く立ち上がって逃げなければ、彼等に捕まってしまう。けれど──。

 ラズリが立ち上がるよりも早く、何者かに足を掴まれ、後方へと思い切り引っ張られた。

「あうっ!」

 そのまま全身を引きずるようにして後ろへ引かれ、あまりの痛みにラズリは苦痛に顔を歪める。

 そんな彼女の耳に、アランの楽し気な声が飛び込んできた。












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