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第六章 因縁
残酷な言葉
なんだ、この女は?
突如として目の前に青い髪の女が立ち塞がり、アランは目を見開いた。
こんな女は知らない。関わった覚えもない。なのに何故、ミルド隊長と一緒にいる?
「お前に用はない。そこを退け!」
剣先をチラつかせて言うが、女は気にもしていないようで、全く動く気配がない。
それどころか、楽し気に此方を見つめている。
見た感じからして、女は魔性で間違いないのだろう。その証拠に、人間など恐るるに足りないと思っているだろうことが、ありありと伝わってくる。
「お前の相手はわたくしがするわ。何処からでも仕掛けてきなさい」
女のくせに、人を見下した上から目線の物言いに腹が立つ。魔性とは、全員が全員そういった物言いをするものなのか?
そういえば以前、相対した赤い髪の青年魔性も、同じような物言いをしていた。
騎士団内で副団長にまで上り詰めたアランのことを、無能と罵った赤い魔性。
あんな侮辱を受けたのは初めてで、だからこそあの魔性のことを思い出すたび、今だに全身の血が怒りによって沸騰するかのような感覚を覚える。
アイツだけは許さない。俺様のことを馬鹿にしたアイツ。
ただ、アイツが魔性で俺様が人間であるというだけで、無能呼ばわりしてきたアイツだけは──!
グツグツと、腸が煮え繰り返るような心地がする。
そして、それに呼応するかのように、先程修復された右腕がドクドクと脈打った。
「お前も……そうなのか?」
ポツリ、呟く。
「なに?」
「お前も……俺を無能と言うのか?」
あの時のアイツと同じように。
剣を握る右腕が細かく震え、それにより抜き身の剣が音を立てる。
アランの身体に纏わり付く黒い靄が、氷依とミルドをも取り込もうと大きく膨れ、勝手に動くが、そんなことアランにとってはどうでも良かった。
「隊長! 俺は……俺は無能なんかじゃないですよね?」
一番それを聞きたかった相手──氷依の背後にいるミルドに向かい、アランは真っ直ぐに問い掛ける。
俺はまだ、あなたにとって必要ですよね?
嫌われているのは知っていた。
任務といえど人道に外れる行為を嫌うミルドは、好んでそういった任務を引き受けるアランのことを、毛嫌いしているだろうということは。
しかし、それでも今回の任務において、ミルドはアランを副隊長に任命してくれた。
個人の感情に惑わされることなく、アラン自身の能力をかって──。
嬉しかった──認めてもらえたことが。誇らしかった──自分の実力が。
それなのに……捨てられた。ただ片腕を失くしたというだけで、あまりにも呆気なく。
「隊長! 答えて下さい! 俺があんたに捨てられたのは……実力の問題じゃないんですよね? 腕さえ戻れば……また必要としてもらえますよね?」
切実なる問い。
単にそれを聞くためだけに、ここまで必死に歩いてきた。
隊長に必要とされなければ、自分の存在価値が見出せなくなってしまうから。
縋るような思いで答えを待つアランに、しかしミルドの発した答えは、とても残酷なものだった。
利き腕を失くし、除隊を命じられ、見捨てられたことに一度は絶望したものの。自分を切り捨てたのは隊長の本意ではない。腕さえ戻れば復隊できると黒い靄を操る人物に唆され、必死の思いで追いかけて来たアランに──。
命令違反をしたのは、確かに悪かったと。それにより、利き腕を失くしたことも大き過ぎる失態だったと反省もしたアランに対し──。
「お前が……邪魔だった」
一言だけ、そう告げられた。
突如として目の前に青い髪の女が立ち塞がり、アランは目を見開いた。
こんな女は知らない。関わった覚えもない。なのに何故、ミルド隊長と一緒にいる?
「お前に用はない。そこを退け!」
剣先をチラつかせて言うが、女は気にもしていないようで、全く動く気配がない。
それどころか、楽し気に此方を見つめている。
見た感じからして、女は魔性で間違いないのだろう。その証拠に、人間など恐るるに足りないと思っているだろうことが、ありありと伝わってくる。
「お前の相手はわたくしがするわ。何処からでも仕掛けてきなさい」
女のくせに、人を見下した上から目線の物言いに腹が立つ。魔性とは、全員が全員そういった物言いをするものなのか?
そういえば以前、相対した赤い髪の青年魔性も、同じような物言いをしていた。
騎士団内で副団長にまで上り詰めたアランのことを、無能と罵った赤い魔性。
あんな侮辱を受けたのは初めてで、だからこそあの魔性のことを思い出すたび、今だに全身の血が怒りによって沸騰するかのような感覚を覚える。
アイツだけは許さない。俺様のことを馬鹿にしたアイツ。
ただ、アイツが魔性で俺様が人間であるというだけで、無能呼ばわりしてきたアイツだけは──!
グツグツと、腸が煮え繰り返るような心地がする。
そして、それに呼応するかのように、先程修復された右腕がドクドクと脈打った。
「お前も……そうなのか?」
ポツリ、呟く。
「なに?」
「お前も……俺を無能と言うのか?」
あの時のアイツと同じように。
剣を握る右腕が細かく震え、それにより抜き身の剣が音を立てる。
アランの身体に纏わり付く黒い靄が、氷依とミルドをも取り込もうと大きく膨れ、勝手に動くが、そんなことアランにとってはどうでも良かった。
「隊長! 俺は……俺は無能なんかじゃないですよね?」
一番それを聞きたかった相手──氷依の背後にいるミルドに向かい、アランは真っ直ぐに問い掛ける。
俺はまだ、あなたにとって必要ですよね?
嫌われているのは知っていた。
任務といえど人道に外れる行為を嫌うミルドは、好んでそういった任務を引き受けるアランのことを、毛嫌いしているだろうということは。
しかし、それでも今回の任務において、ミルドはアランを副隊長に任命してくれた。
個人の感情に惑わされることなく、アラン自身の能力をかって──。
嬉しかった──認めてもらえたことが。誇らしかった──自分の実力が。
それなのに……捨てられた。ただ片腕を失くしたというだけで、あまりにも呆気なく。
「隊長! 答えて下さい! 俺があんたに捨てられたのは……実力の問題じゃないんですよね? 腕さえ戻れば……また必要としてもらえますよね?」
切実なる問い。
単にそれを聞くためだけに、ここまで必死に歩いてきた。
隊長に必要とされなければ、自分の存在価値が見出せなくなってしまうから。
縋るような思いで答えを待つアランに、しかしミルドの発した答えは、とても残酷なものだった。
利き腕を失くし、除隊を命じられ、見捨てられたことに一度は絶望したものの。自分を切り捨てたのは隊長の本意ではない。腕さえ戻れば復隊できると黒い靄を操る人物に唆され、必死の思いで追いかけて来たアランに──。
命令違反をしたのは、確かに悪かったと。それにより、利き腕を失くしたことも大き過ぎる失態だったと反省もしたアランに対し──。
「お前が……邪魔だった」
一言だけ、そう告げられた。
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