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第八章 黒い靄
無能の巣窟
さて、どうしよう?
自分に向かって首を垂れる女魔性を見つめながら、ルーチェは次に打つ手を考えていた。
氷依の様子からして恐らくミルドも今こちらへ向かって来ている最中だろう。となると新たに出来上がった札は全て彼に渡すとして、この女魔性はどのように使うのが最も有用だろうか?
一人しかいない。
替えもきかない。
故に安易には使えず、使い所を考える必要がある。
下手に使って命を落とされたり、万一暗示が解けて逃げ出されでもしたら取り返しがつかない。
かといって、手持ちの魔性は彼女しかいないのだから、使わないわけにもいかないというジレンマ。
どうする? このままミルドを待って共に少女のいる場所へと向かわせるか、それとも単独で動かして、赤い魔性を誘き寄せるのに使うか……。
どちらにしろ、一旦ミルドが戻ってくるのを待たなければならない。いくら氷依がうまい具合にあの魔性を誘き寄せられたとしても、札を貼り付ける者がいなければ何の意味もないのだから。
「もう少しぐらい手足となるべき人員を残しておくべきだったかな……」
今更になって王宮内の人員を減らし過ぎたことに少しばかりの後悔を覚えるが、同時に、解雇する際自分に縋ってきた者達の姿を思い出し、ルーチェは緩く首を横に振った。
無能な人間を残しておいたところで、どうせ足手纏いにしかならないのだ。だからやはり自分のしたことは正しい。
ただ、使える人間があまりにも少な過ぎたというだけで──。
「無能な王の元に、無能が集まるのは仕方がないか……」
自分が蹴落とした前王に対し、つい嫌味が口を衝いて出た。
本当は、王宮にはもう少しぐらい使える人間がいるものだと思っていた。なのに代替わりしていざ国王となってみれば、臣下達は揃いも揃って無能ばかりで。
ほとんどの者が前王の情に流されやすい性格につけ込んだ、楽して甘い汁を吸おうとする屑ばかりだった。こんな者達ばかりでよく今まで王宮内をまわすことができていたなと思わず感心してしまうほどに。
そのせいで自分は少女を探し出すよりまず先に、王宮内の人員整理をしなければならなくなったのだ。
無能達に使う金も時間も勿体ない。自分はそんなに暇ではないし、優しくもないのだから。
必要なのは、ただ能力のある駒達だけ。駒になる能力さえない者は、どこへなりとも行って好きに暮らせば良い。これまで十分いい思いをしてきたのだから、そろそろ現実を見ても良いだろう。
──そんな思いで王宮から大量の人間を解雇して追い出し、今に至るというわけなのだが。
たった一人で人間の百人分以上の仕事を熟す魔性がいれば、人間の臣下など今の人数でも十分だと思っていた。魔性は数多く溢れているから、手に入れるのは簡単だと。
でも実際は、そうじゃなかった。
今の人数では、まったく人手が足りなかった。
その最たる原因は、思うように魔性が捕まらなかったことだ。
魔神や魔人の下級種にあたる魔使は島内の至るところで見掛けるが、魔人となると遭遇する確率が極端に低くなる。その上、魔人に遭遇してしまった時点で人間は命を諦めなければならないから、実際の遭遇率や魔人の出現場所すらも判然としない。
そんな状況の中、限られた人員に限られた枚数の札を持たせて魔性探しをさせるのは無謀だと、さすがのルーチェも認めざるを得なかった。
だからこそ、嫌がらせを兼ねてミルドにそれを任務として押し付け、強制的に王宮から送り出したのだが──。
彼は意外な運の良さと、秘められた実力を持っていたらしい。日数はかかったものの、見事一人の女魔性を捕まえてくることに成功したのだ。
自分に向かって首を垂れる女魔性を見つめながら、ルーチェは次に打つ手を考えていた。
氷依の様子からして恐らくミルドも今こちらへ向かって来ている最中だろう。となると新たに出来上がった札は全て彼に渡すとして、この女魔性はどのように使うのが最も有用だろうか?
一人しかいない。
替えもきかない。
故に安易には使えず、使い所を考える必要がある。
下手に使って命を落とされたり、万一暗示が解けて逃げ出されでもしたら取り返しがつかない。
かといって、手持ちの魔性は彼女しかいないのだから、使わないわけにもいかないというジレンマ。
どうする? このままミルドを待って共に少女のいる場所へと向かわせるか、それとも単独で動かして、赤い魔性を誘き寄せるのに使うか……。
どちらにしろ、一旦ミルドが戻ってくるのを待たなければならない。いくら氷依がうまい具合にあの魔性を誘き寄せられたとしても、札を貼り付ける者がいなければ何の意味もないのだから。
「もう少しぐらい手足となるべき人員を残しておくべきだったかな……」
今更になって王宮内の人員を減らし過ぎたことに少しばかりの後悔を覚えるが、同時に、解雇する際自分に縋ってきた者達の姿を思い出し、ルーチェは緩く首を横に振った。
無能な人間を残しておいたところで、どうせ足手纏いにしかならないのだ。だからやはり自分のしたことは正しい。
ただ、使える人間があまりにも少な過ぎたというだけで──。
「無能な王の元に、無能が集まるのは仕方がないか……」
自分が蹴落とした前王に対し、つい嫌味が口を衝いて出た。
本当は、王宮にはもう少しぐらい使える人間がいるものだと思っていた。なのに代替わりしていざ国王となってみれば、臣下達は揃いも揃って無能ばかりで。
ほとんどの者が前王の情に流されやすい性格につけ込んだ、楽して甘い汁を吸おうとする屑ばかりだった。こんな者達ばかりでよく今まで王宮内をまわすことができていたなと思わず感心してしまうほどに。
そのせいで自分は少女を探し出すよりまず先に、王宮内の人員整理をしなければならなくなったのだ。
無能達に使う金も時間も勿体ない。自分はそんなに暇ではないし、優しくもないのだから。
必要なのは、ただ能力のある駒達だけ。駒になる能力さえない者は、どこへなりとも行って好きに暮らせば良い。これまで十分いい思いをしてきたのだから、そろそろ現実を見ても良いだろう。
──そんな思いで王宮から大量の人間を解雇して追い出し、今に至るというわけなのだが。
たった一人で人間の百人分以上の仕事を熟す魔性がいれば、人間の臣下など今の人数でも十分だと思っていた。魔性は数多く溢れているから、手に入れるのは簡単だと。
でも実際は、そうじゃなかった。
今の人数では、まったく人手が足りなかった。
その最たる原因は、思うように魔性が捕まらなかったことだ。
魔神や魔人の下級種にあたる魔使は島内の至るところで見掛けるが、魔人となると遭遇する確率が極端に低くなる。その上、魔人に遭遇してしまった時点で人間は命を諦めなければならないから、実際の遭遇率や魔人の出現場所すらも判然としない。
そんな状況の中、限られた人員に限られた枚数の札を持たせて魔性探しをさせるのは無謀だと、さすがのルーチェも認めざるを得なかった。
だからこそ、嫌がらせを兼ねてミルドにそれを任務として押し付け、強制的に王宮から送り出したのだが──。
彼は意外な運の良さと、秘められた実力を持っていたらしい。日数はかかったものの、見事一人の女魔性を捕まえてくることに成功したのだ。
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