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第十章 目覚めた能力
変わらない答え
ルーチェにただ会いたいと、氷依が願い転移した場所は──残念ながら彼女の思惑とは違う場所であった。
否、氷依自身はルーチェの元へ転移したつもりであったため、転移してすぐ目に入ったものに、違和感を覚えて首を傾げる。
「…………?」
一体ここは何処なのだろう? わたくしはルーチェ様の声に導かれて、此処へと転移してきたはずなのに。
不思議に思いながら周りを見回してみたところで、不意にガチャリと扉の開く音がして、何者かが氷依のいる部屋へと入室して来た。というより、部屋へ入ろうとした所で氷依がいることに気付き、驚いて動きを止めたようだった。
「え……な、なんで? どうしてあなたが此処にいるの?」
「ラズリ、そいつに近付くな!」
驚いた勢いのまま、無警戒に氷依へと近付いて来ようとした少女を、赤い髪の青年が慌てて止める。
何故、彼女達が此処にいるのだろう? 何故、自分はルーチェ様の元ではなく、彼女らの元へと来てしまったのか。
理由が分からず、氷依は呆然と彼等を見つめた。
せっかく最期にルーチェ様に会えると思い、残された力を振り絞って転移して来たというのに、まさかこんなことになるとは。
もう転移するだけの魔力は残ってはいないし、赤い髪の男は灰色の魔性とは違い、そう簡単に自分に触れられるような真似はしないだろう。もし彼が近付いて来てくれたなら、さっき灰色の魔性にしたように、彼からも魔力が奪えるかもしれないのに。
警戒心を剥き出しにしている男には、一寸の隙もない。無論それは、彼の後に付き従うようにして部屋へと入室してきた三つ編みの青年も同様で。
チラ──と乱れた髪の隙間から男を見、氷依はギリ、と唇を噛み締める。
決死の思いで灰色髪の魔性から魔力を奪い転移したのに、こんな所で最期を迎えることになるなんて──。
「最期に一目……ルーチェ様に会いたかった……」
その言葉を最後に氷依は意識を失い、その場にドサリと倒れ伏した──。
※ ※ ※ ※
「ち、ちょっとあなた! 大丈夫?」
何事かを呟いた後、いきなり意識を失った女魔性に驚き、ラズリは咄嗟に駆け寄ろうとした。
が、奏に阻まれ、近づくことはできなかった。
「もう、なんなの⁉︎ 邪魔しないで!」
女魔性と自分の間に立って〝通せんぼ”をしてくる奏に、ラズリは怒って声を荒げる。
だってあんなの、普通じゃない。自分の前に突然現れたと思ったら、特にこれといった言葉を発することもなく気を失うなんて。
そもそも魔性は、意識を失うことがないのではなかったの?
奏に聞いた話によれば、魔性は寝るどころか、食べ物を食べることさえないと聞いていたのに。
この女魔性に出会ったのは、一度だけ。
けれど、あまりにも強烈な印象を持った彼女のことを、ラズリはしっかりと記憶に留めていた。
今目の前で意識を失っている女魔性と、この前会った女魔性が同一人物だとはとても思えない。それほどまでに今、彼女は弱ってしまっている。
そんな状態で、彼女は一体何をしに此処まで来たのか。満足に動くことさえできないような状態では、同じ魔性同士である奏どころか、人間である自分とでさえ戦うことはできないだろうに。
「奏……この人、どう見てもおかしいよ。何かあったに決まってる。せめてもう少しぐらい……動けるようにしてあげることはできないの?」
自分が手を貸すことができないのなら、せめて奏になんとかしてもらおうと思ったのだけれど、無情にも彼はキッパリと首を横に振った。
「いや、無理だね。ラズリからしたら可哀想かもしれないが、正直ここまで魔力が少なくなってると助けるのは不可能だ。俺らにとって魔力ってのは基本的に自動で回復するもんであって、どっかから補給したりして回復するようなもんじゃないからな」
「そうなんだね……。じゃあ、どうやってもこの人を助けることはできないっていうこと?」
そんな酷いことって──と思いながら尋ねるも、奏の答えは変わらなかった。
「その通りだ。できることは何もない」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
AI校正始まりました!
早速使っておりますが……誤字脱字への安心感があります(о´∀`о)
ただ……『表現が古い』と言われた時は……「だって時代が古めだもん!」と言い返してみました( ´ ▽ ` )
否、氷依自身はルーチェの元へ転移したつもりであったため、転移してすぐ目に入ったものに、違和感を覚えて首を傾げる。
「…………?」
一体ここは何処なのだろう? わたくしはルーチェ様の声に導かれて、此処へと転移してきたはずなのに。
不思議に思いながら周りを見回してみたところで、不意にガチャリと扉の開く音がして、何者かが氷依のいる部屋へと入室して来た。というより、部屋へ入ろうとした所で氷依がいることに気付き、驚いて動きを止めたようだった。
「え……な、なんで? どうしてあなたが此処にいるの?」
「ラズリ、そいつに近付くな!」
驚いた勢いのまま、無警戒に氷依へと近付いて来ようとした少女を、赤い髪の青年が慌てて止める。
何故、彼女達が此処にいるのだろう? 何故、自分はルーチェ様の元ではなく、彼女らの元へと来てしまったのか。
理由が分からず、氷依は呆然と彼等を見つめた。
せっかく最期にルーチェ様に会えると思い、残された力を振り絞って転移して来たというのに、まさかこんなことになるとは。
もう転移するだけの魔力は残ってはいないし、赤い髪の男は灰色の魔性とは違い、そう簡単に自分に触れられるような真似はしないだろう。もし彼が近付いて来てくれたなら、さっき灰色の魔性にしたように、彼からも魔力が奪えるかもしれないのに。
警戒心を剥き出しにしている男には、一寸の隙もない。無論それは、彼の後に付き従うようにして部屋へと入室してきた三つ編みの青年も同様で。
チラ──と乱れた髪の隙間から男を見、氷依はギリ、と唇を噛み締める。
決死の思いで灰色髪の魔性から魔力を奪い転移したのに、こんな所で最期を迎えることになるなんて──。
「最期に一目……ルーチェ様に会いたかった……」
その言葉を最後に氷依は意識を失い、その場にドサリと倒れ伏した──。
※ ※ ※ ※
「ち、ちょっとあなた! 大丈夫?」
何事かを呟いた後、いきなり意識を失った女魔性に驚き、ラズリは咄嗟に駆け寄ろうとした。
が、奏に阻まれ、近づくことはできなかった。
「もう、なんなの⁉︎ 邪魔しないで!」
女魔性と自分の間に立って〝通せんぼ”をしてくる奏に、ラズリは怒って声を荒げる。
だってあんなの、普通じゃない。自分の前に突然現れたと思ったら、特にこれといった言葉を発することもなく気を失うなんて。
そもそも魔性は、意識を失うことがないのではなかったの?
奏に聞いた話によれば、魔性は寝るどころか、食べ物を食べることさえないと聞いていたのに。
この女魔性に出会ったのは、一度だけ。
けれど、あまりにも強烈な印象を持った彼女のことを、ラズリはしっかりと記憶に留めていた。
今目の前で意識を失っている女魔性と、この前会った女魔性が同一人物だとはとても思えない。それほどまでに今、彼女は弱ってしまっている。
そんな状態で、彼女は一体何をしに此処まで来たのか。満足に動くことさえできないような状態では、同じ魔性同士である奏どころか、人間である自分とでさえ戦うことはできないだろうに。
「奏……この人、どう見てもおかしいよ。何かあったに決まってる。せめてもう少しぐらい……動けるようにしてあげることはできないの?」
自分が手を貸すことができないのなら、せめて奏になんとかしてもらおうと思ったのだけれど、無情にも彼はキッパリと首を横に振った。
「いや、無理だね。ラズリからしたら可哀想かもしれないが、正直ここまで魔力が少なくなってると助けるのは不可能だ。俺らにとって魔力ってのは基本的に自動で回復するもんであって、どっかから補給したりして回復するようなもんじゃないからな」
「そうなんだね……。じゃあ、どうやってもこの人を助けることはできないっていうこと?」
そんな酷いことって──と思いながら尋ねるも、奏の答えは変わらなかった。
「その通りだ。できることは何もない」
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