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第十章 目覚めた能力
生きている札
あれは……なに?
氷依の腕に見慣れない紙切れが貼り付いているのを見つけ、ラズリは眉間に皺を寄せつつ、それを凝視していた。
あんな物、今まで見たことがない。けれど、その物の持つ異様さは、見ているだけで十分に伝わってくる。
恐らくあの札のような物が身体に貼り付けられているせいで、女魔性は死んだように動かないのだろう。一目見ただけでそうと分かってしまうほどに、その札はなんともいえない嫌な気配を漂わせている。
「これ……剥がしてもいい?」
背後に立つ奏を振り返り、ラズリは上目遣いで問うた。
あの札を剥がしさえすれば、きっと彼女は動けるようになる。けれど奏の許しなしに動いても、邪魔されることは分かりきっているだけに、彼の了承を先に得るしかない。
あの札を剥がしたい──剥がしてあげたい、お願いやらせて……。
そんな気持ちを込めて、まっすぐに奏を見つめる。すると、ラズリの懸命な思いが通じたのか──奏はまず闇を一瞥し、彼が肩をすくめたせいもあったと思われる──最終的には首を縦に振ってくれた。
尤も、とても納得したとは言い難い、苦々しげな表情を浮かべていたが。
「……勝手にしろ。強制的に止めたところで文句ばっかり言い続けられそうだし、仮に説得しようとしたところでお前は絶対に譲らなさそうだからな。……それに、すぐ傍には俺がついてる。好きにやればいいさ」
「うん、ありがとう!」
言われたことには少しばかり引っ掛かりを覚えつつ、けれど許可してもらえたことは嬉しかったため、ラズリは素直に──せっかく許しをもらえたのに、余計なことを言って機嫌を損ねることは、さすがにしなかった── お礼を言った。
これでこの人を助けてあげられる。いくら敵だとはいえ、見殺しにするのは夢見が悪いもの……。
「今、剥がしてあげるからね」
自分にまで害があったらどうしよう? と若干不安に思いながらも、すぐ傍についていてくれる奏の存在に安堵し、ラズリはそっと札へと手を伸ばす。
今は嫌な気配に躊躇している場合じゃない。少しずつ、本当に少しずつだけれど、女魔性の輪郭が薄れてきているような気がするのだ。
一刻も早く札を剥がしてあげなければ、彼女の命が危ない。
逸る気持ちを感じながら、それでも札の放つ気配により焦りは禁物と自分に言い聞かせ、ラズリは慎重に指で札の端へと触れた。
「……きゃっ!」
刹那、札がビクッと反応したように動き、それに驚いたラズリは反射的に札から離れ、尻もちをつきそうになる。が、そこは奏に受け止められ、事なきを得た。
「大丈夫か⁉︎」
声を掛けられるも、ラズリの目は札を見つめたまま動かない。否、動かせないと言った方が正しいだろうか。とにかく、たった今起きた出来事が信じられず、しばし唖然としてしまった。
見ている時にはピクリともしなかったのに……どうして?
自分が触った時、あの札は確かに反応した。
突然つままれて驚いたような──自分に反応したような。
どちらかは分からないし、また、どちらの理由でもないかもしれない。けれど、あの札が自力で動いたことだけは間違いなくて。
あの札は生きている……?
そんな考えが脳裏を過ぎった。
まさか、そんな。
ふと思い浮かんだ馬鹿げた考えをすぐに打ち消すも、指に残る感触が忘れられず、ラズリはゾクリと寒気を感じた。
氷依の腕に見慣れない紙切れが貼り付いているのを見つけ、ラズリは眉間に皺を寄せつつ、それを凝視していた。
あんな物、今まで見たことがない。けれど、その物の持つ異様さは、見ているだけで十分に伝わってくる。
恐らくあの札のような物が身体に貼り付けられているせいで、女魔性は死んだように動かないのだろう。一目見ただけでそうと分かってしまうほどに、その札はなんともいえない嫌な気配を漂わせている。
「これ……剥がしてもいい?」
背後に立つ奏を振り返り、ラズリは上目遣いで問うた。
あの札を剥がしさえすれば、きっと彼女は動けるようになる。けれど奏の許しなしに動いても、邪魔されることは分かりきっているだけに、彼の了承を先に得るしかない。
あの札を剥がしたい──剥がしてあげたい、お願いやらせて……。
そんな気持ちを込めて、まっすぐに奏を見つめる。すると、ラズリの懸命な思いが通じたのか──奏はまず闇を一瞥し、彼が肩をすくめたせいもあったと思われる──最終的には首を縦に振ってくれた。
尤も、とても納得したとは言い難い、苦々しげな表情を浮かべていたが。
「……勝手にしろ。強制的に止めたところで文句ばっかり言い続けられそうだし、仮に説得しようとしたところでお前は絶対に譲らなさそうだからな。……それに、すぐ傍には俺がついてる。好きにやればいいさ」
「うん、ありがとう!」
言われたことには少しばかり引っ掛かりを覚えつつ、けれど許可してもらえたことは嬉しかったため、ラズリは素直に──せっかく許しをもらえたのに、余計なことを言って機嫌を損ねることは、さすがにしなかった── お礼を言った。
これでこの人を助けてあげられる。いくら敵だとはいえ、見殺しにするのは夢見が悪いもの……。
「今、剥がしてあげるからね」
自分にまで害があったらどうしよう? と若干不安に思いながらも、すぐ傍についていてくれる奏の存在に安堵し、ラズリはそっと札へと手を伸ばす。
今は嫌な気配に躊躇している場合じゃない。少しずつ、本当に少しずつだけれど、女魔性の輪郭が薄れてきているような気がするのだ。
一刻も早く札を剥がしてあげなければ、彼女の命が危ない。
逸る気持ちを感じながら、それでも札の放つ気配により焦りは禁物と自分に言い聞かせ、ラズリは慎重に指で札の端へと触れた。
「……きゃっ!」
刹那、札がビクッと反応したように動き、それに驚いたラズリは反射的に札から離れ、尻もちをつきそうになる。が、そこは奏に受け止められ、事なきを得た。
「大丈夫か⁉︎」
声を掛けられるも、ラズリの目は札を見つめたまま動かない。否、動かせないと言った方が正しいだろうか。とにかく、たった今起きた出来事が信じられず、しばし唖然としてしまった。
見ている時にはピクリともしなかったのに……どうして?
自分が触った時、あの札は確かに反応した。
突然つままれて驚いたような──自分に反応したような。
どちらかは分からないし、また、どちらの理由でもないかもしれない。けれど、あの札が自力で動いたことだけは間違いなくて。
あの札は生きている……?
そんな考えが脳裏を過ぎった。
まさか、そんな。
ふと思い浮かんだ馬鹿げた考えをすぐに打ち消すも、指に残る感触が忘れられず、ラズリはゾクリと寒気を感じた。
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