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第二章 赤い魔性
振り下ろされた足
徐々にミルド達との距離が近くなっていく。
出来ればもう彼と話したくはなかったけれど、ミルドと話をしない限り、放火の理由について知る事はできない。だからこそ、嫌な気持ちを抑えつけながら、ラズリは半ば無理矢理足を進める。
よほど強く地面に叩きつけられたのか、彼等は未だ目を覚ましてはいないようだ。また剣を持ち出して襲い掛かられても面倒だから、出来れば彼等にはずっと気を失っていてもらいたいが、それでは火事の詳細を聞き出す事ができないため、起こすしかないだろう。
同時に、見晴らしが良くなった事で他の騎士達もこちらの様子に気付いたようで、近付いて来ようとしているようだ。これは、少し急いだ方が良いかもしれない。騎士達に囲まれてしまったら、身動きが取れなくなってしまう可能性があるし、奏が自分を見捨てるとは思わないけれど、万が一という事もあるのだから。
そんな風に考えつつ、隣を歩く奏に視線を向ければ、満面の笑みが返された。その笑顔に、彼を疑ってしまったラズリの良心が、ズキリと痛む。
奏はこんなにも優しくしてくれるのに、自分は未だ彼を信じきれないでいるのだ。
大切な人達を失った後であるし、どうしようもない事なのかもしれないが、それでも、何ら関係のない自分に手助けしてくれる奏に対し、申し訳ないと思う。だからせめて少しぐらいは、彼の気持ちに応えたいと思うも、どうにも感情がままならない。
どうしたら、奏を信じきる事ができるの……?
思考の海に沈み、考えを巡らせていると、奏がいきなり足を止めた。
「どうしたの?」
思わず聞いて視線を前方へと向ければ、いつの間にそこまで歩いて来ていたのか、すぐ目の前にミルド達が倒れていて。
完全に意識を失っているが、命に別状はなさそうだ。
「……どうするつもり?」
ミルド達を見つめたまま動きを止めている奏を見上げ、ラズリは首を傾げる。
すると奏は、徐に右足を高々と振り上げた後、ラズリに向かって悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
一直線に、真っ直ぐ足を振り上げたその姿は、一本線のようで美しい。というか、身体バランスどうなってるの? という疑問まで感じさせる。
顔や能力だけでなく、身体バランスまで完璧だなんて、魔性だけ狡すぎるのではないだろうか? もう少しぐらい人間も贔屓してくれても良いのに。と思うものの、そこは嫉妬したところでどうしようもないと、黙ってラズリが奏を見つめていると──。
「そんじゃ、いっちょ目を覚ましてもらうとしようか……なっ!」
振り上げられた奏の足が、勢い良くミルドの背中へと振り下ろされた!
「ぐぎゃっ!」
途端に、ミルドから発せられたのは、なんとも言えない情けない悲鳴であり。蹴られた反動により、反り返った身体と伸びた両手足は、更に男の情けなさを倍増させた。
普段のラズリであれば、そんな風に背中を踏みつけられた様を見たなら、痛そうとか可哀想などと思ったかもしれない。だが、今のラズリの心境は、とても彼等に同情できるようなものではなかったため、「ザマアミロ」と思わなかっただけでも、マシであったといえよう。
それどころか、あれだけ衝撃を与えられても意識を取り戻さないのね……などと考えてしまう始末で。
「まさか死んでないわよね?」
あれだけ思い切り良く踏まれても意識を取り戻さないなんて、もしや今の一撃がトドメになってしまったのでは? と不安になり、死なれては情報が聞き出せないと、ラズリはミルドへ近付こうとする。が、それより早く、不意にミルドの体が動いた。
否、正しくはミルドの体ではない。ミルドの下敷きになって倒れていた男が動いたのだ。
「おっ。漸くお目覚めか?」
それに気付いた奏がすかさずラズリを庇うように立ち、意識を取り戻した男へと声を掛ける。
直接踏まれたミルドではなく、何故踏まれてない方の人が起きるのか。
ラズリはそれを疑問に思いはしたが、意識を取り戻したなら別にどっちでも問題ないかと、すぐに思い直した。
恐らくだが、どちらの男に聞いても自分の望む情報は得られるだろうと考えたからだ。
実際ミルドはかなり強く奏に踏みつけられたため、一瞬意識を取り戻しはしたものの、身体的ダメージにより再び意識を飛ばしていたのだが、そんなことにラズリが気付くはずもなく。
ミルドの下敷きになっていたアランは逆に、上に乗っていたミルドの身体に衝撃が加えられた事により、それが刺激となって意識を取り戻したというわけだった。
出来ればもう彼と話したくはなかったけれど、ミルドと話をしない限り、放火の理由について知る事はできない。だからこそ、嫌な気持ちを抑えつけながら、ラズリは半ば無理矢理足を進める。
よほど強く地面に叩きつけられたのか、彼等は未だ目を覚ましてはいないようだ。また剣を持ち出して襲い掛かられても面倒だから、出来れば彼等にはずっと気を失っていてもらいたいが、それでは火事の詳細を聞き出す事ができないため、起こすしかないだろう。
同時に、見晴らしが良くなった事で他の騎士達もこちらの様子に気付いたようで、近付いて来ようとしているようだ。これは、少し急いだ方が良いかもしれない。騎士達に囲まれてしまったら、身動きが取れなくなってしまう可能性があるし、奏が自分を見捨てるとは思わないけれど、万が一という事もあるのだから。
そんな風に考えつつ、隣を歩く奏に視線を向ければ、満面の笑みが返された。その笑顔に、彼を疑ってしまったラズリの良心が、ズキリと痛む。
奏はこんなにも優しくしてくれるのに、自分は未だ彼を信じきれないでいるのだ。
大切な人達を失った後であるし、どうしようもない事なのかもしれないが、それでも、何ら関係のない自分に手助けしてくれる奏に対し、申し訳ないと思う。だからせめて少しぐらいは、彼の気持ちに応えたいと思うも、どうにも感情がままならない。
どうしたら、奏を信じきる事ができるの……?
思考の海に沈み、考えを巡らせていると、奏がいきなり足を止めた。
「どうしたの?」
思わず聞いて視線を前方へと向ければ、いつの間にそこまで歩いて来ていたのか、すぐ目の前にミルド達が倒れていて。
完全に意識を失っているが、命に別状はなさそうだ。
「……どうするつもり?」
ミルド達を見つめたまま動きを止めている奏を見上げ、ラズリは首を傾げる。
すると奏は、徐に右足を高々と振り上げた後、ラズリに向かって悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
一直線に、真っ直ぐ足を振り上げたその姿は、一本線のようで美しい。というか、身体バランスどうなってるの? という疑問まで感じさせる。
顔や能力だけでなく、身体バランスまで完璧だなんて、魔性だけ狡すぎるのではないだろうか? もう少しぐらい人間も贔屓してくれても良いのに。と思うものの、そこは嫉妬したところでどうしようもないと、黙ってラズリが奏を見つめていると──。
「そんじゃ、いっちょ目を覚ましてもらうとしようか……なっ!」
振り上げられた奏の足が、勢い良くミルドの背中へと振り下ろされた!
「ぐぎゃっ!」
途端に、ミルドから発せられたのは、なんとも言えない情けない悲鳴であり。蹴られた反動により、反り返った身体と伸びた両手足は、更に男の情けなさを倍増させた。
普段のラズリであれば、そんな風に背中を踏みつけられた様を見たなら、痛そうとか可哀想などと思ったかもしれない。だが、今のラズリの心境は、とても彼等に同情できるようなものではなかったため、「ザマアミロ」と思わなかっただけでも、マシであったといえよう。
それどころか、あれだけ衝撃を与えられても意識を取り戻さないのね……などと考えてしまう始末で。
「まさか死んでないわよね?」
あれだけ思い切り良く踏まれても意識を取り戻さないなんて、もしや今の一撃がトドメになってしまったのでは? と不安になり、死なれては情報が聞き出せないと、ラズリはミルドへ近付こうとする。が、それより早く、不意にミルドの体が動いた。
否、正しくはミルドの体ではない。ミルドの下敷きになって倒れていた男が動いたのだ。
「おっ。漸くお目覚めか?」
それに気付いた奏がすかさずラズリを庇うように立ち、意識を取り戻した男へと声を掛ける。
直接踏まれたミルドではなく、何故踏まれてない方の人が起きるのか。
ラズリはそれを疑問に思いはしたが、意識を取り戻したなら別にどっちでも問題ないかと、すぐに思い直した。
恐らくだが、どちらの男に聞いても自分の望む情報は得られるだろうと考えたからだ。
実際ミルドはかなり強く奏に踏みつけられたため、一瞬意識を取り戻しはしたものの、身体的ダメージにより再び意識を飛ばしていたのだが、そんなことにラズリが気付くはずもなく。
ミルドの下敷きになっていたアランは逆に、上に乗っていたミルドの身体に衝撃が加えられた事により、それが刺激となって意識を取り戻したというわけだった。
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