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第六章 因縁
嬉しい誤算
死ね、死ね、死ね──。
恨みを込めて、アランは何度も何度もミルドの身体を地面へと叩きつける。とんでもない高さから、低い位置から、或いは気まぐれに大きく振り回してから勢い良く──。
だが何度叩きつけても、骨が折れるほどの衝撃を与えても、次の瞬間には何事もなかったかのようにミルドはアランのことを睨みつけてくる。
何故だ……どうして? 自分は圧倒的優位に立っているはずなのに、何故こんなにも追い詰められた気持ちになるんだ?
その理由が分からずに、アランは徐々に苛立ちを募らせていく。
ミルドが無事でいられるのは、ひとえに彼の傷を癒し続ける氷依のおかげであるのだが、魔性の能力について無知なアランは、その事実に気付かない。だからこそ内心で首を傾げつつ、何度も同じ攻撃を繰り返していく。
早く、早く──。
「いい加減に死んでくださいよ、ミルド隊長ぉ!」
思い通りにならないことに苛つき、とうとうアランは気持ちの高ぶりにまかせ、ミルドの身体を女魔性に向かって思い切り投げつけた!
「うわっ!」
「きゃああっ!」
しかし、苛立ち紛れのその行動は、存外に功を奏したらしい。二人はもつれあうようにして地面へと倒れ込むと、そのまま動かなくなる。
「ふん……いい気味だ」
少しだけ口角を上げて微笑い、アランは二人にゆっくりと近付いた。
もしかしたら罠かもしれない。動けないと自分に思い込ませることで油断させておいて、突然襲いかかってくるかもしれない。
その可能性を考慮しながら、ゆっくりと、しかし確実に二人へと近付いていく。
そうして二人の側まで近付いて来てみると、その理由は簡単に知れた。
彼らの全身に纏わりついた黒い靄が二人を地面へと貼り付けにし、ピクリとも動けない状態で身体を固定していたのだ。これには流石のアランも、口から失笑が漏れた。
「おやおや……いいざまじゃないですか、ミルド隊長」
まさか隊長だけじゃなく、女魔性まで巻き添えになっているとは。
予想外の結果ではあるものの、これはこれで嬉しい誤算だ。彼女が邪魔をしないのであれば、隊長の命を奪うことなど容易いのだから。
加えてミルドは女魔性の上に乗っかり、無防備この上なく胸部を此方に曝け出してくれている。まるで「一思いにやってくれ」と言わんばかりだ。
「ここを俺が貫いたら……あなたはどうなるんでしょうね?」
答えを知っていながらも、ミルドの心臓があると思われる部分に剣先を突き立てるようにして添わせながら、アランは心底楽しげな笑みを浮かべた。
身動きの取れないミルドは、それでも必死に逃げ出そうとしているようだが、黒い靄はガッチリと彼を掴んで離さない。
「ふっ……ふふっ……くははっ」
嬉しさのあまり奇妙な笑い声をあげ、アランはぐ──と剣先をミルドの胸当てに押し込む。自らの命が失われる恐怖に、たまらずミルドは声を上げた。
「や……やめろアラン、そんなことをしても報われないぞ。私を殺したからといって、どうなるものでも──」
「そんなの、やってみなければ分からないでしょう? 報われるかどうかなんて、俺にとってはどうでも良い。分かるのは、あんたを殺せば俺はとてつもなく愉快な気持ちになれるってこと。他の誰を殺した時よりあんたを殺した時が、きっと今までで一番興奮する。それだけは間違いないんだ……」
そこで一旦言葉を切り、アランは急に真摯な表情になってミルドの瞳を真っ直ぐに見据えた。
「……隊長、覚悟は良いですか?」
恨みを込めて、アランは何度も何度もミルドの身体を地面へと叩きつける。とんでもない高さから、低い位置から、或いは気まぐれに大きく振り回してから勢い良く──。
だが何度叩きつけても、骨が折れるほどの衝撃を与えても、次の瞬間には何事もなかったかのようにミルドはアランのことを睨みつけてくる。
何故だ……どうして? 自分は圧倒的優位に立っているはずなのに、何故こんなにも追い詰められた気持ちになるんだ?
その理由が分からずに、アランは徐々に苛立ちを募らせていく。
ミルドが無事でいられるのは、ひとえに彼の傷を癒し続ける氷依のおかげであるのだが、魔性の能力について無知なアランは、その事実に気付かない。だからこそ内心で首を傾げつつ、何度も同じ攻撃を繰り返していく。
早く、早く──。
「いい加減に死んでくださいよ、ミルド隊長ぉ!」
思い通りにならないことに苛つき、とうとうアランは気持ちの高ぶりにまかせ、ミルドの身体を女魔性に向かって思い切り投げつけた!
「うわっ!」
「きゃああっ!」
しかし、苛立ち紛れのその行動は、存外に功を奏したらしい。二人はもつれあうようにして地面へと倒れ込むと、そのまま動かなくなる。
「ふん……いい気味だ」
少しだけ口角を上げて微笑い、アランは二人にゆっくりと近付いた。
もしかしたら罠かもしれない。動けないと自分に思い込ませることで油断させておいて、突然襲いかかってくるかもしれない。
その可能性を考慮しながら、ゆっくりと、しかし確実に二人へと近付いていく。
そうして二人の側まで近付いて来てみると、その理由は簡単に知れた。
彼らの全身に纏わりついた黒い靄が二人を地面へと貼り付けにし、ピクリとも動けない状態で身体を固定していたのだ。これには流石のアランも、口から失笑が漏れた。
「おやおや……いいざまじゃないですか、ミルド隊長」
まさか隊長だけじゃなく、女魔性まで巻き添えになっているとは。
予想外の結果ではあるものの、これはこれで嬉しい誤算だ。彼女が邪魔をしないのであれば、隊長の命を奪うことなど容易いのだから。
加えてミルドは女魔性の上に乗っかり、無防備この上なく胸部を此方に曝け出してくれている。まるで「一思いにやってくれ」と言わんばかりだ。
「ここを俺が貫いたら……あなたはどうなるんでしょうね?」
答えを知っていながらも、ミルドの心臓があると思われる部分に剣先を突き立てるようにして添わせながら、アランは心底楽しげな笑みを浮かべた。
身動きの取れないミルドは、それでも必死に逃げ出そうとしているようだが、黒い靄はガッチリと彼を掴んで離さない。
「ふっ……ふふっ……くははっ」
嬉しさのあまり奇妙な笑い声をあげ、アランはぐ──と剣先をミルドの胸当てに押し込む。自らの命が失われる恐怖に、たまらずミルドは声を上げた。
「や……やめろアラン、そんなことをしても報われないぞ。私を殺したからといって、どうなるものでも──」
「そんなの、やってみなければ分からないでしょう? 報われるかどうかなんて、俺にとってはどうでも良い。分かるのは、あんたを殺せば俺はとてつもなく愉快な気持ちになれるってこと。他の誰を殺した時よりあんたを殺した時が、きっと今までで一番興奮する。それだけは間違いないんだ……」
そこで一旦言葉を切り、アランは急に真摯な表情になってミルドの瞳を真っ直ぐに見据えた。
「……隊長、覚悟は良いですか?」
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