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第二章 貴族学園
元平民
「そんなこと言われても……私はザガロ様に言われたからアクセサリーを着けただけですし、今日二人で一緒に登園したのも、同じ家に住んでいれば当然ですよね? なのになんで『恥を知れ』とか言われないといけないんですか? 全然意味が分からないんですけど……」
どうやら一年ほど前に平民から貴族になったばかりのジェニーさんには、令嬢に言われた言葉の意味が理解できなかったらしい。
その証拠に、冗談でもなんでもなく、本気で『意味が分からない』といった表情をしていた。
本来、貴族としての教育は幼少の頃から始められ、その内容は多岐にわたるため、たった数年で一朝一夕に覚えられるはずもない。
しかもジェニーさんは身体が弱く、伏せっていることが多いとザガロが言っていたから、最低限の教育でさえも受けられていない可能性があるのだ。そんな彼女に貴族の常識を説いたところで、理解しろと言う方が無理だろう。
けれど令嬢はそんな詳しい事情を知らないため、さらに言葉を重ねようとする。
「貴女ね、こんなことは貴族の常識であって──」
「貴族の常識なんて、私には分からないもの。だって私はほんの一年前まで平民だったのよ? 小難しい貴族の常識なんて、そう簡単に覚えられるわけがないわ」
そんな令嬢にジェニーさんは平民丸出しの言葉遣いでピシャリと言い返し、黙らせた。
同時に、教室内もシン──と静まりかえる。
おそらく儚げに見えるジェニーさんが、強気な態度で言い返したことに度肝を抜かれたのだろう。最初のうちは彼女をうっとりとした瞳で見つめていた令息達が、呆然とした顔でジェニーさんを見つめていた。
「私は所詮お母様の“連れ子”なの。だから侯爵様やザガロ様の言うことには逆らえないし、反論だってできない。だから私に文句があるなら全てザガロ様に言ってくれる? 私はただ彼らの言いなりになってるだけの“お人形”でしかないんだから」
そして彼女は私を一瞥すると、
「言ったところで素直に聞いてくれるかどうかは知らないけどね」
と微笑いながら言った。
多分だけれど、彼女はザガロとお揃いのアクセサリーのことについて言っているのだろう。
どんなに私が口うるさく言ってもお願いを聞いてくれず、堂々とジェニーさんと二人で登園して来たザガロ。
二人が耳に着けてきた高額な宝飾品は、陽の光を反射してキラキラと眩しく輝き、それがより一層周囲の人達の目を集めていた。
彼ら──というより、ザガロは一体、何がしたいんだろう?
私とお揃いで作ったブローチが出来上がるまで、ジェニーさんとの宝飾品は身に着けないよう、父に釘を刺されたはずなのに。
どうしてそれを破るようなことをしたのか。
もしかして、父のことを甘く見ている……?
だとしたら、大変なことになるかもしれない。
普段は温厚な父だけれども、一度お金が絡むと、鬼や悪魔も逃げ出すんじゃないか──というほどに恐ろしくなる人だから。
そんな人に高額な宝飾品の代金を払わせるだけ払わせておいて、交換条件として提示された約束事を破るだなんて……何が起きるかわかったものではない。
「どうなっても責任は取れないわよ……」
小さな声で呟くと、それが聞こえたのか、ジェニーさんはこちらを向いて微笑んだ。
どうやら一年ほど前に平民から貴族になったばかりのジェニーさんには、令嬢に言われた言葉の意味が理解できなかったらしい。
その証拠に、冗談でもなんでもなく、本気で『意味が分からない』といった表情をしていた。
本来、貴族としての教育は幼少の頃から始められ、その内容は多岐にわたるため、たった数年で一朝一夕に覚えられるはずもない。
しかもジェニーさんは身体が弱く、伏せっていることが多いとザガロが言っていたから、最低限の教育でさえも受けられていない可能性があるのだ。そんな彼女に貴族の常識を説いたところで、理解しろと言う方が無理だろう。
けれど令嬢はそんな詳しい事情を知らないため、さらに言葉を重ねようとする。
「貴女ね、こんなことは貴族の常識であって──」
「貴族の常識なんて、私には分からないもの。だって私はほんの一年前まで平民だったのよ? 小難しい貴族の常識なんて、そう簡単に覚えられるわけがないわ」
そんな令嬢にジェニーさんは平民丸出しの言葉遣いでピシャリと言い返し、黙らせた。
同時に、教室内もシン──と静まりかえる。
おそらく儚げに見えるジェニーさんが、強気な態度で言い返したことに度肝を抜かれたのだろう。最初のうちは彼女をうっとりとした瞳で見つめていた令息達が、呆然とした顔でジェニーさんを見つめていた。
「私は所詮お母様の“連れ子”なの。だから侯爵様やザガロ様の言うことには逆らえないし、反論だってできない。だから私に文句があるなら全てザガロ様に言ってくれる? 私はただ彼らの言いなりになってるだけの“お人形”でしかないんだから」
そして彼女は私を一瞥すると、
「言ったところで素直に聞いてくれるかどうかは知らないけどね」
と微笑いながら言った。
多分だけれど、彼女はザガロとお揃いのアクセサリーのことについて言っているのだろう。
どんなに私が口うるさく言ってもお願いを聞いてくれず、堂々とジェニーさんと二人で登園して来たザガロ。
二人が耳に着けてきた高額な宝飾品は、陽の光を反射してキラキラと眩しく輝き、それがより一層周囲の人達の目を集めていた。
彼ら──というより、ザガロは一体、何がしたいんだろう?
私とお揃いで作ったブローチが出来上がるまで、ジェニーさんとの宝飾品は身に着けないよう、父に釘を刺されたはずなのに。
どうしてそれを破るようなことをしたのか。
もしかして、父のことを甘く見ている……?
だとしたら、大変なことになるかもしれない。
普段は温厚な父だけれども、一度お金が絡むと、鬼や悪魔も逃げ出すんじゃないか──というほどに恐ろしくなる人だから。
そんな人に高額な宝飾品の代金を払わせるだけ払わせておいて、交換条件として提示された約束事を破るだなんて……何が起きるかわかったものではない。
「どうなっても責任は取れないわよ……」
小さな声で呟くと、それが聞こえたのか、ジェニーさんはこちらを向いて微笑んだ。
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