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第二章 貴族学園
もう一つの選択肢
獲物が引っかかった?
それは一体、なんのことを言っているのだろう?
分からず首を傾げていると──。
「ザガロ君。もう一つの君の選択肢はこれだ」
言いながら、父がザガロに、もう一枚の書類を差し出した。
素早くそれを手に取ったザガロは、愕然とした表情を浮かべる。
「こ、これ……本気、なんですか? 嘘ですよね? 冗談ですよね? こんなことあり得ない!」
真っ青な顔で否定するザガロを見て、私はますます首を傾げてしまう。
その書類には、何が書いてあったのだろう。
書類を握りしめるザガロの手は小刻みに震え、現実を直視することを避けるかのように、頭を振って大声を上げている。
さっきから一人で何度も大声を出しているけれど、彼ってこんなにもうるさかったかしら。侯爵家の令息らしく、もっと落ち着きのある態度をとったらいいのに。
少しばかり(もう少し静かに話をしてほしい……)と思っていると、彼は書類を引き裂かんばかりに握りしめ、恐ろしい瞳を私へと向けてきた。
「こんな……こんなこと、父上が絶対に許すはずがない。たかが子爵家ごときが、侯爵家との婚約を破棄するなんて……」
え? 今、なんて言った?
私の耳には『婚約破棄』と聞こえたような気がするけれど。
まさか、本当に?
商売の販路を広げるため、侯爵家との縁を最大限に利用していた父が、婚約破棄?
どんなに私がザガロとの将来の不安を口にしても、その方向にだけは目を向けなかった父が?
あまりにも驚いたため、父の顔を見ようとするも、ザガロの私を見つめる視線が怖すぎて目を逸らせない。
婚約破棄を言い出したのは私じゃないのに、これは完全に勘違いしているわ。
早く誤解を解かないと──。
そう思い、私が口を開こうとした時だった。
「君との婚約破棄は、私の独断によるものだ。よって娘はなんの関係もない。故に責めたところで時間の無駄だ」
と父が先に説明してくれた。
「ど、独断って……じゃあ父上はまだ何も知らないっていうことですよね? 子爵家の当主が侯爵家の当主から持ち込まれた縁談を勝手に破棄するなんて、許されると思っているんですか?」
動揺と怒りで声が震えてはいるものの、まだなんとか平静を保っているらしい。
ザガロは私に向けていた目を、父に向けて睨みつけた。
それでもやはりというか何というか、数多くの人達と商売を通じて渡り合ってきた百戦錬磨の父は、当然ながらびくともしない。
「なぁに、心配せずとも否やとは言わせんさ。我が家はこれまで婚約者という繋がりがあったからこそ貴様の家を支援してきたが……その恩を恩とも思わず、爵位を盾に脅すような輩のいる家など、いっそ潰れてしまえとしか思えんのでな」
「そ、そんな……」
それは一体、なんのことを言っているのだろう?
分からず首を傾げていると──。
「ザガロ君。もう一つの君の選択肢はこれだ」
言いながら、父がザガロに、もう一枚の書類を差し出した。
素早くそれを手に取ったザガロは、愕然とした表情を浮かべる。
「こ、これ……本気、なんですか? 嘘ですよね? 冗談ですよね? こんなことあり得ない!」
真っ青な顔で否定するザガロを見て、私はますます首を傾げてしまう。
その書類には、何が書いてあったのだろう。
書類を握りしめるザガロの手は小刻みに震え、現実を直視することを避けるかのように、頭を振って大声を上げている。
さっきから一人で何度も大声を出しているけれど、彼ってこんなにもうるさかったかしら。侯爵家の令息らしく、もっと落ち着きのある態度をとったらいいのに。
少しばかり(もう少し静かに話をしてほしい……)と思っていると、彼は書類を引き裂かんばかりに握りしめ、恐ろしい瞳を私へと向けてきた。
「こんな……こんなこと、父上が絶対に許すはずがない。たかが子爵家ごときが、侯爵家との婚約を破棄するなんて……」
え? 今、なんて言った?
私の耳には『婚約破棄』と聞こえたような気がするけれど。
まさか、本当に?
商売の販路を広げるため、侯爵家との縁を最大限に利用していた父が、婚約破棄?
どんなに私がザガロとの将来の不安を口にしても、その方向にだけは目を向けなかった父が?
あまりにも驚いたため、父の顔を見ようとするも、ザガロの私を見つめる視線が怖すぎて目を逸らせない。
婚約破棄を言い出したのは私じゃないのに、これは完全に勘違いしているわ。
早く誤解を解かないと──。
そう思い、私が口を開こうとした時だった。
「君との婚約破棄は、私の独断によるものだ。よって娘はなんの関係もない。故に責めたところで時間の無駄だ」
と父が先に説明してくれた。
「ど、独断って……じゃあ父上はまだ何も知らないっていうことですよね? 子爵家の当主が侯爵家の当主から持ち込まれた縁談を勝手に破棄するなんて、許されると思っているんですか?」
動揺と怒りで声が震えてはいるものの、まだなんとか平静を保っているらしい。
ザガロは私に向けていた目を、父に向けて睨みつけた。
それでもやはりというか何というか、数多くの人達と商売を通じて渡り合ってきた百戦錬磨の父は、当然ながらびくともしない。
「なぁに、心配せずとも否やとは言わせんさ。我が家はこれまで婚約者という繋がりがあったからこそ貴様の家を支援してきたが……その恩を恩とも思わず、爵位を盾に脅すような輩のいる家など、いっそ潰れてしまえとしか思えんのでな」
「そ、そんな……」
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