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十七、食事
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多分、スリップしたのだろうと思う。
と、言うのも、先程まで寝ていて、突然の衝撃に起きたら、乗っていたバスが横転していたからである。
山を一つ超える予定だったバスは、よりによって電波の届かない山の中で立ち往生することになってしまった。
幸い、酷いけが人はなく、ともかく全員脱出した。が、しかし、如何せん寒さが襲ってくる。
しばらくの間、運転手を囲んで騒いでいた人々も、一人二人と疲れたように座り込んだ。雨雲が見えないのは不幸中のなんとやらと言うやつだろうか。
冬の日はあっという間に沈み、辺りは静けさと寒さが押し寄せてくる。
指先はかじかみ、うまく動かず、足先は感覚すら何処かへ行ってしまった。
皆、イライラとし始める。
かと言って、騒ぐのも無駄と知っているから、空気だけがどんどん淀んでいく。
嫌だな、と思った時だった。
「あのー、お腹、減りませんか?」
一人の乗客がおそるおそると言った調子で辺りに声をかけた。
その手には、いつ見つけてきたのか、木の実や、植物が抱えられている。
好奇心に負けてフラフラと近づく。
どうやら、キャンプに行く予定だったらしい。テキパキと小さな焚き火を作り、大きな荷物から調理道具を次々と出し、手早く火を通していく。
その火の暖かさに引かれ、遠目に見ていた人々も集まってくる。
「できましたー!」
ただ、火を通しただけのものを一口口に運んで驚いた。
胃袋がポカポカとしてくる。
それだけではない。
かじかんだ手足に血流が戻ってきたようで、感覚がクリアになった。
周りを見ると、誰もが同じように感じているらしかった。
作り手にこの感動を伝えようとしたとき。
「あ、救助の人…」
救助が来たようだった。
思わず歓声を上げて近寄る。
全員が救助され、ほっと一息をついた。
誰からともなく、あの料理の話になる。
「えーっと、誰が作ったんでしたっけ?」
誰も声を上げない。
「………あんな大荷物、持ってた人いましたっけ…?」
誰もが黙って顔を見合わせた。
あの時、結局、料理を振る舞ったのは誰だったのだろうか。
と、言うのも、先程まで寝ていて、突然の衝撃に起きたら、乗っていたバスが横転していたからである。
山を一つ超える予定だったバスは、よりによって電波の届かない山の中で立ち往生することになってしまった。
幸い、酷いけが人はなく、ともかく全員脱出した。が、しかし、如何せん寒さが襲ってくる。
しばらくの間、運転手を囲んで騒いでいた人々も、一人二人と疲れたように座り込んだ。雨雲が見えないのは不幸中のなんとやらと言うやつだろうか。
冬の日はあっという間に沈み、辺りは静けさと寒さが押し寄せてくる。
指先はかじかみ、うまく動かず、足先は感覚すら何処かへ行ってしまった。
皆、イライラとし始める。
かと言って、騒ぐのも無駄と知っているから、空気だけがどんどん淀んでいく。
嫌だな、と思った時だった。
「あのー、お腹、減りませんか?」
一人の乗客がおそるおそると言った調子で辺りに声をかけた。
その手には、いつ見つけてきたのか、木の実や、植物が抱えられている。
好奇心に負けてフラフラと近づく。
どうやら、キャンプに行く予定だったらしい。テキパキと小さな焚き火を作り、大きな荷物から調理道具を次々と出し、手早く火を通していく。
その火の暖かさに引かれ、遠目に見ていた人々も集まってくる。
「できましたー!」
ただ、火を通しただけのものを一口口に運んで驚いた。
胃袋がポカポカとしてくる。
それだけではない。
かじかんだ手足に血流が戻ってきたようで、感覚がクリアになった。
周りを見ると、誰もが同じように感じているらしかった。
作り手にこの感動を伝えようとしたとき。
「あ、救助の人…」
救助が来たようだった。
思わず歓声を上げて近寄る。
全員が救助され、ほっと一息をついた。
誰からともなく、あの料理の話になる。
「えーっと、誰が作ったんでしたっけ?」
誰も声を上げない。
「………あんな大荷物、持ってた人いましたっけ…?」
誰もが黙って顔を見合わせた。
あの時、結局、料理を振る舞ったのは誰だったのだろうか。
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