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第3話
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もう何年経ったか数えてなんていない。
ただ、気が遠くなるような時が過ぎたことだけは間違いなかった。
「随分と悪魔が増えたな。お前もそう思わないか? ソール」
俺の傍に礼儀正しく立っていた丸っこい角が2本生えた人型の悪魔に向かって俺はそう言った。
俺が一番最初に作った悪魔であり、一番最初に現世に召喚された悪魔だったりする。つまり国を滅ぼした悪魔だな。
基本的に俺は悪魔に名前なんてわざわざ付けたりしないんだけど、こいつは一番最初ってことで特別に俺が名付けを行った存在だから、ちょっとだけ他の悪魔に比べて特別に扱っている。
他の悪魔は名前があったとしても、それは現世で召喚主に付けてもらった名前だしな。
「全て貴方様のおかげでございます」
まぁ、そうだな。
俺が作ったやつらだしな。
「これだけ増えたんだから、誰か1人くらい俺のことを現世に召喚出来る悪魔が現れてくれてもいいんだがな」
「私が貴方様のことを現世に召喚出来れば良かったのですが……」
「仕方ないさ。悪魔ってのは悪魔を召喚出来ないみたいだしな」
多分、俺は創造主だから出来るであろう確信があるけど、そもそも俺が現世に行けないんだから、そんなこと出来たって意味は無い。
「はい。私が現世に降臨した際、あれだけの人間を犠牲に貴方様を召喚しようとしたにもかかわらず、不可能でしたからね」
あー、あれ、俺のことを召喚しようとしてやった事だったんだ。
今初めて知ったわ。
もう何千年も前のこととはいえ、ソールのレベルであれだけの犠牲を作ったにも関わらず俺を召喚出来なかったって……他の悪魔に俺を召喚することを期待するのは無意味なことなのかもな。
はぁ。大人しく現世の生物に期待するしかないのか。
今なら、俺を召喚してくれたやつに人の寿命分くらいなら付き従ってやっても良いぞ、くらいの気持ちがあるから、召喚してくれねぇかなぁ。今だけだぞ? マジで。特別大サービスなんだからな!
「……はぁ」
「ッ、いつか必ず、貴方様を私が召喚して──」
その瞬間、俺は時が止まったような錯覚を覚えた。
ソールが何かを言っていたが、何も聞こえない。
ただ、俺の視界には……頭の中には……今現れたばかりの召喚門だけで埋め尽くされていた。
【誰も、それに入るな】
「「「「「「「ッッッ」」」」」」」
周辺にいた全ての悪魔が片膝をつき俺に頭を垂れるのが辛うじて見えたが、そんなことどうでもよかった。
俺はゆっくりとその場から動き出す。
1歩1歩と、本当にゆっくりと門に向かって歩みを進めた。
心臓なんてもの存在しないはずなのに、鼓動が早くなった錯覚すらも覚えた。
門に触れ……られた。
「あはっ」
やっとだ。
やっと、やっと、やっとやっとやっとやっとやっと、ここを出られる。
この何も無い、退屈な世界を出られる。
俺は冷静に自分の特徴的な目を他の悪魔共と同じ感じにして、頭から右片方にだけ適当な角を生やした。
最初の悪魔として、俺のことを伝えた悪魔が確か居たはずだからな。
一応だ。
ちょうどさっき思った通り、俺を召喚したやつには人の寿命分くらいは付き従ってやるつもりだから、無駄に騒ぎになるのは好ましくないだろう。
まぁ、気が変わって門を出た途端召喚主を殺す可能性も否定はできないけど……悪魔だし、仕方ないよな?
そうして、俺はとうとう門をくぐった。
これからの楽しい未来を夢見て。
ただ、気が遠くなるような時が過ぎたことだけは間違いなかった。
「随分と悪魔が増えたな。お前もそう思わないか? ソール」
俺の傍に礼儀正しく立っていた丸っこい角が2本生えた人型の悪魔に向かって俺はそう言った。
俺が一番最初に作った悪魔であり、一番最初に現世に召喚された悪魔だったりする。つまり国を滅ぼした悪魔だな。
基本的に俺は悪魔に名前なんてわざわざ付けたりしないんだけど、こいつは一番最初ってことで特別に俺が名付けを行った存在だから、ちょっとだけ他の悪魔に比べて特別に扱っている。
他の悪魔は名前があったとしても、それは現世で召喚主に付けてもらった名前だしな。
「全て貴方様のおかげでございます」
まぁ、そうだな。
俺が作ったやつらだしな。
「これだけ増えたんだから、誰か1人くらい俺のことを現世に召喚出来る悪魔が現れてくれてもいいんだがな」
「私が貴方様のことを現世に召喚出来れば良かったのですが……」
「仕方ないさ。悪魔ってのは悪魔を召喚出来ないみたいだしな」
多分、俺は創造主だから出来るであろう確信があるけど、そもそも俺が現世に行けないんだから、そんなこと出来たって意味は無い。
「はい。私が現世に降臨した際、あれだけの人間を犠牲に貴方様を召喚しようとしたにもかかわらず、不可能でしたからね」
あー、あれ、俺のことを召喚しようとしてやった事だったんだ。
今初めて知ったわ。
もう何千年も前のこととはいえ、ソールのレベルであれだけの犠牲を作ったにも関わらず俺を召喚出来なかったって……他の悪魔に俺を召喚することを期待するのは無意味なことなのかもな。
はぁ。大人しく現世の生物に期待するしかないのか。
今なら、俺を召喚してくれたやつに人の寿命分くらいなら付き従ってやっても良いぞ、くらいの気持ちがあるから、召喚してくれねぇかなぁ。今だけだぞ? マジで。特別大サービスなんだからな!
「……はぁ」
「ッ、いつか必ず、貴方様を私が召喚して──」
その瞬間、俺は時が止まったような錯覚を覚えた。
ソールが何かを言っていたが、何も聞こえない。
ただ、俺の視界には……頭の中には……今現れたばかりの召喚門だけで埋め尽くされていた。
【誰も、それに入るな】
「「「「「「「ッッッ」」」」」」」
周辺にいた全ての悪魔が片膝をつき俺に頭を垂れるのが辛うじて見えたが、そんなことどうでもよかった。
俺はゆっくりとその場から動き出す。
1歩1歩と、本当にゆっくりと門に向かって歩みを進めた。
心臓なんてもの存在しないはずなのに、鼓動が早くなった錯覚すらも覚えた。
門に触れ……られた。
「あはっ」
やっとだ。
やっと、やっと、やっとやっとやっとやっとやっと、ここを出られる。
この何も無い、退屈な世界を出られる。
俺は冷静に自分の特徴的な目を他の悪魔共と同じ感じにして、頭から右片方にだけ適当な角を生やした。
最初の悪魔として、俺のことを伝えた悪魔が確か居たはずだからな。
一応だ。
ちょうどさっき思った通り、俺を召喚したやつには人の寿命分くらいは付き従ってやるつもりだから、無駄に騒ぎになるのは好ましくないだろう。
まぁ、気が変わって門を出た途端召喚主を殺す可能性も否定はできないけど……悪魔だし、仕方ないよな?
そうして、俺はとうとう門をくぐった。
これからの楽しい未来を夢見て。
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