1 / 30
1人目のヒロイン:ナナミ編
第1話
しおりを挟む
数日前、両親が死んでしまった。
家族が居なくなってしまった俺は、まだ現実を受け入れられておらず、気がついたら、母さんと父さんとの思い出の場所である花畑に足を運んでいた。
多分、一人になりたかったんだと思う。
村のみんなは俺がまだ12歳という若さで一人になってしまったから、と色々と優しく声をかけてくれるが、村の人達に優しく話しかけられる度に、現実を思い出してしまって嫌だったんだ。
「……なんだ? あれ」
何も考えず、そこからの景色を見ていると、花畑の中に少し大きめの黒い本? のようなものが落ちていることに気がついた。
……本なんて、高級品だ。
一体誰があんなころに落としたんだろうか。
ここは俺や母さんと父さんだけの秘密の場所のはず、なんだけどな。
母さん……父さん……
「…………本、拾うか」
悲しい感情を誤魔化すようにそう呟き、俺はそのまま花を踏まないようにして本の元にゆっくりと歩みを進めた。
そして、本のところまで来た俺は、本を手に取り、これは母さんや父さんが残してくれた何かなんじゃないか? という希望を持ちながら、本を開いた。
【第一に、この世界の主人公はオリム君だ】
希望が打ち砕かれた。……と同時に、俺は主人公じゃなかったらしいことを知った。……そんなの、こんな本に言われるまでもなく、分かってたことだけどさ。
【もしもこの攻略本を拾ったのがオリム君以外なら、この文字が見えていることだろう。君は自分が主人公じゃないことにガッカリしているかもしれない。モブなことに絶望しているかもしれない。だからこそ、一つだけ書き残そう。君は、運がいい】
運がいい?
思わず笑ってしまった。
運がいいわけが無い。
だって、もしも運がいいのであれば、俺は今頃、父さんの畑仕事でも手伝っているか、母さんが作ってくれた昼食を食べている頃だろう。
……だから、運がいいわけが無いんだよ!
本なんかに当たったって仕方がない。
そう分かっていながらも、感情を抑えられなかった俺は、思わずその場から本を思いっきり力を入れて、投げ飛ばしていた。
本が空中で不自然に止まる。
意味が分からなかった。
【個体名、アルスが攻略本の所有者に設定されました】
宙に浮かんでいる……止まっている本の上に文字が現れたかと思うと、そんなことが書かれていた。
「は? え? 所有者……?」
さっきまでの苛立ちなんか忘れて、俺は困惑していた。
だって、意味が分からない……以上に、これ、泥棒なんじゃないのか?
「う、うわっ」
もうあんな本はあそこに放置して帰ろうかと考えては、でもここは思い出の場所だし、あんな物を残すのは……なんて葛藤をしていると、宙に止まっていた本が突然動き出したかと思うと、俺の手の中にすっぽりと収まってきた。
「なっ!? い、要らねぇ。こ、こんなの、要らねぇよ! そ、そもそも、なんなんだよ! これ!」
当然といえば当然なんだが、本は俺の叫びに全く反応することなく、突然パラパラと独りでにページが開き始めたかと思うと、また突然止まり、まるでそのページを俺に見ろとでもばかりに動かなく……動かせなくなった。
なんなら、手からも離れない。
「な、なんなんだよ、これ……」
恐怖心が湧いて出てきた。
とはいえ、本当に離れてくれないから、俺は恐る恐るそのページに目を落とし、書いてある文字を読み始めた。
☆ ☆ ☆
独りでに開かれた本のページを読み終わった。
簡単にまとめると、内容はこんな感じだった。
ヒロイン? とかいうやつの一人らしいナナミは両親に売られ、奴隷になってしまうらしい。
奴隷になったナナミは俺と同じ12歳にして恥辱? に塗れた酷い生活を送ることになるそうだ。一応、具体的にどんな生活を送るのかとかも書かれてはいたんだが、そこは読み飛ばした。……あまりにも最低な内容すぎて、読めなかったんだ。
とはいえ、3年後にはさっき書いてあった主人公とかいう奴が助け出して、幸せにしてくれるらしい……ということがまるで自分が助けられないことを後悔するような言い訳がましい文章で長々と書かれていた。
最後に彼女が奴隷として売られる時期や値段、売られてから買われていくまでの日数に助けてやって欲しいということも書かれていた。
「……なんだよ、それ」
家族が居なくなってしまった俺は、まだ現実を受け入れられておらず、気がついたら、母さんと父さんとの思い出の場所である花畑に足を運んでいた。
多分、一人になりたかったんだと思う。
村のみんなは俺がまだ12歳という若さで一人になってしまったから、と色々と優しく声をかけてくれるが、村の人達に優しく話しかけられる度に、現実を思い出してしまって嫌だったんだ。
「……なんだ? あれ」
何も考えず、そこからの景色を見ていると、花畑の中に少し大きめの黒い本? のようなものが落ちていることに気がついた。
……本なんて、高級品だ。
一体誰があんなころに落としたんだろうか。
ここは俺や母さんと父さんだけの秘密の場所のはず、なんだけどな。
母さん……父さん……
「…………本、拾うか」
悲しい感情を誤魔化すようにそう呟き、俺はそのまま花を踏まないようにして本の元にゆっくりと歩みを進めた。
そして、本のところまで来た俺は、本を手に取り、これは母さんや父さんが残してくれた何かなんじゃないか? という希望を持ちながら、本を開いた。
【第一に、この世界の主人公はオリム君だ】
希望が打ち砕かれた。……と同時に、俺は主人公じゃなかったらしいことを知った。……そんなの、こんな本に言われるまでもなく、分かってたことだけどさ。
【もしもこの攻略本を拾ったのがオリム君以外なら、この文字が見えていることだろう。君は自分が主人公じゃないことにガッカリしているかもしれない。モブなことに絶望しているかもしれない。だからこそ、一つだけ書き残そう。君は、運がいい】
運がいい?
思わず笑ってしまった。
運がいいわけが無い。
だって、もしも運がいいのであれば、俺は今頃、父さんの畑仕事でも手伝っているか、母さんが作ってくれた昼食を食べている頃だろう。
……だから、運がいいわけが無いんだよ!
本なんかに当たったって仕方がない。
そう分かっていながらも、感情を抑えられなかった俺は、思わずその場から本を思いっきり力を入れて、投げ飛ばしていた。
本が空中で不自然に止まる。
意味が分からなかった。
【個体名、アルスが攻略本の所有者に設定されました】
宙に浮かんでいる……止まっている本の上に文字が現れたかと思うと、そんなことが書かれていた。
「は? え? 所有者……?」
さっきまでの苛立ちなんか忘れて、俺は困惑していた。
だって、意味が分からない……以上に、これ、泥棒なんじゃないのか?
「う、うわっ」
もうあんな本はあそこに放置して帰ろうかと考えては、でもここは思い出の場所だし、あんな物を残すのは……なんて葛藤をしていると、宙に止まっていた本が突然動き出したかと思うと、俺の手の中にすっぽりと収まってきた。
「なっ!? い、要らねぇ。こ、こんなの、要らねぇよ! そ、そもそも、なんなんだよ! これ!」
当然といえば当然なんだが、本は俺の叫びに全く反応することなく、突然パラパラと独りでにページが開き始めたかと思うと、また突然止まり、まるでそのページを俺に見ろとでもばかりに動かなく……動かせなくなった。
なんなら、手からも離れない。
「な、なんなんだよ、これ……」
恐怖心が湧いて出てきた。
とはいえ、本当に離れてくれないから、俺は恐る恐るそのページに目を落とし、書いてある文字を読み始めた。
☆ ☆ ☆
独りでに開かれた本のページを読み終わった。
簡単にまとめると、内容はこんな感じだった。
ヒロイン? とかいうやつの一人らしいナナミは両親に売られ、奴隷になってしまうらしい。
奴隷になったナナミは俺と同じ12歳にして恥辱? に塗れた酷い生活を送ることになるそうだ。一応、具体的にどんな生活を送るのかとかも書かれてはいたんだが、そこは読み飛ばした。……あまりにも最低な内容すぎて、読めなかったんだ。
とはいえ、3年後にはさっき書いてあった主人公とかいう奴が助け出して、幸せにしてくれるらしい……ということがまるで自分が助けられないことを後悔するような言い訳がましい文章で長々と書かれていた。
最後に彼女が奴隷として売られる時期や値段、売られてから買われていくまでの日数に助けてやって欲しいということも書かれていた。
「……なんだよ、それ」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる