この世界の攻略本を拾った俺、この世界のモブな事を知る〜ヒロイン?の自由と幸せの為に最強を目指そうと思う〜

シャルねる

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1人目のヒロイン:ナナミ編

第15話

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「あぁぁぁぁぁぁぁ」

 情けない、今まで生きてきた中で初めて出したような声を出しながら、俺は地面に倒れ込んだ。
 
「小僧、倒れるにはまだ早いぞ」

 早いわけが無いだろう。
 むしろめちゃくちゃ頑張った方だし、褒めて欲しいくらいだ。
 ……いや、俺は無理を言って教えて貰ってる立場なんだし、こんなこと言わないけどさ!

 そんなことを思っている間にも、木剣……どころか、その辺にあった木の枝を持って真剣を持っているはずの俺に近づいてくる師匠。
 
 早く立たないとまた痛い目に合わされる、ということは頭では理解できているんだが、足が……体が動かない。

「守りたい者がいるのではなかったか?」

 ……うるさいなぁ。
 確かに、居ないとは言わないけど、まだ会ったことすらない相手で、俺が相手の性格を知らなければ、相手はそもそも俺の存在すら知らないんだぞ。
 ……だから、こんなに頑張る意味なんて、無いんだよ!

「ヒール、ヒール、ヒール」

 内心で悪態をつきながらも、俺は治癒魔法を使い、無理やり体を少しでも回復させ、剣を地面に突き立て、杖にするようにして立ち上がった。
 さっき思ったことに比べ、もっと言うなら、もうお金は治癒士になったおかげでいい感じに稼げてるんだから、ナナミって子を助けるだけなら、そこまで頑張って強くなる必要なんて無いんだよ。
 ……確かに、自分の身を守る役に立ったり、ナナミって子を助けた後の生活にもしかしたら役に立つかもだけど、助けることだけを考えるのなら、今こうやって頑張る必要だってないんだ。

 ……そのはずなのに、俺はなんで師匠のあんな言葉に動かされてるんだろうな。
 ……多分、あの時一旦は、と無視した本に書いてあった内容を覚えてるからなんだろうな。
 簡単なお金の稼ぎ方を本で調べた時に出てきた三つ目の項目に書いてあった文字。
 ……ナナミって子以外のヒロインってやつ。

「本当に、俺はこんなので強く慣れてるんですか?」

「さぁな」

 なんて無責任な師匠だ。
 もしも本の存在が無かったら、絶対逃げ出してたぞ。信用が出来なさすぎる。

​───────​────────

 そんなことを思いつつも頑張ったのだが、結局その日も痛めつけられるだけで終わり、あっという間に更に10日の時が経った。

 金貨を10枚も稼いでしまった。
 ……治癒士が子供ということで1回くらいは何か問題が起きるかも、なんて思ってたが、お姉さん……ハルさんのおかげでその辺も何か問題が起きることなんて全く無かった。

「そろそろ、行くか」

 結局最後まで俺を痛めつけてきていただけとしか思えない師匠ももうこの街からは出ていってしまったし、金も目標額に届いた以上、もうここに留まる理由は無いからな。
 ……まぁ、ハルさんとの生活は楽しかったりするけど、今更一度決めたことを曲げる訳にはいかない。
 それにもう、昨日のうちに挨拶やお礼はしてあるからな。…………めちゃくちゃ止められた……というか、もう少しここにいてもいいんじゃない? みたいな感じで、天使の囁きに心を動かされそうになったが、俺は行くと言ったんだ。
 乗合馬車の時間だってもう少しで締め切られてしまうし、早く行こう。
 これ以上ここにいたら、俺も決意が揺らぎそうになるしな。

 そうして、俺は頭を一度ギルドに向かって下げてから、耳につけていても違和感がかなり無くなってきた治癒士の証がちゃんとついているかを確認してから、歩き出した。

「アルス君! またね!」

 そこでそんなお姉さんの声が後ろから聞こえてきたから、振り返ると、俺に向かって大きく手を振っているハルさんの姿がそこにはあった。

「……はい! また!」

 色々と疲れたら、この街に戻ってくるのも悪くないのかもしれない、と思えた。
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