Retry 異世界生活記

ダース

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第2章.少年期

28.路地裏にて

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とくに打開策を思いつくこともなく1週間が過ぎてしまった。


不安を抱えつつも、シュクルムを2つ買って
あの人通りのない路地裏に向かう。

役に立つかわからないが、用心のため一応ショートソードを持っていく。
店でずっと売れていないやつだし、後で元に戻しておけば、ばれないはずだ。


このままシュクルムを渡さずにバックれてしまおうかとも思ったが、
顔も見られたし、あいつナイススレンダーが俺をどこまで知っているのかもわからないため、
この選択は致し方ない…。
そう思い、重い脚を進める。



路地裏に着くと、目立つ金髪の女性が立っていた。
「お、来たか。遅いぞ。」

なんとも偉そうな口調だ。

とりあえず、わずかな可能性をかけ、
「シュクルム2個。じゃあな。」
そう言って、足早に帰って逃げ切ろうと思い、
来た道を引き返そうとすると、


「待て。来週も2個だ。」
悪い予感は当たるものだ。

やっぱりそう言ってきた。


はぁ。と肩を落とし振り返る。

「もうお金がありません。」
ホントはもうちょっとだけあるが、
さすがに耐えられないのでそう言う。

するとナイススレンダーは悪びれた表情一つ見せず言い放つ。
「そうは言ってもわたしも金を持っておらん。普段、金を使うことがないからな。稼ぎ方もわからぬ。」


「じ…じゃあ、シュクルム食べなきゃいいだろ…!」
金がないからってかつあげはよくない。
少しイラついてきたので口調が荒くなってしまう。


「散歩がてら入った街であんなうまそうなものを見かけたら食べずにはおれんだろう。それにもう味を覚えてしまった。仕方なかろう。」


なにが仕方ないんだ。
我儘わがまますぎるだろ!


…なんかだいぶイラついてきた。

「だからってかつあげするな!俺まだ6歳だし金なんて全然持ってないんだぞ!っていうか、6歳にたかるな!」
思いのたけをぶつけた。


するとなにかナイススレンダーから、あのえも言われぬ恐怖感が漂ってきて気圧けおされそうになった。

「おまえ…わたしの正体がなんなのか。見ることができるのであろう?なんとかしろ!」
そう言うと、ナイススレンダーは自分の周りに火の球を10個ほど浮かばせてギラついた眼でこちらを見る。


こいつ、俺が「鑑定」を使えることを逆手にとって脅してるのか。
なんてあくどいやつなんだ・・・。

というか、火の球10個とかどうやってるんだ…。
やばい…。俺に火の球10個とか完全にオーバーキルだぞ。


そう思ったが、
ここで逃げ出しても火の球の餌食になるだけだと感じた俺は、打つ手も思いつかず完全に固まってしまった。


完全に固まった俺を見てナイススレンダーは
「ふぅ…。」と息を吐き、火の球を消した。

…助かった。
死ぬかと思ったぜ…。
と心の中で安堵している俺にナイススレンダーは話しかけてきた。



「わたしは森の奥で600年以上暮らしてきた。が、さすがに飽きてきてな。散歩がてらこの街を見ていたところだ。人の街はおもしろいな。なに、別になにかを壊したりしようなどとは思っておらん。」

「本当か…?子供の俺を脅してたのに。」
にわかには信じがたい。
この前の授業でも恐ろしい歴史を習ったばかりなので疑いの目を向ける。

「本当だ!やろうと思えば、あのシュクルムを店から力ずくで全て奪い取っておる。それをやらず、ちゃんとお金を払って買ったであろう。」

「お金を払ったのは俺だろ!」
なにその正式な手続きでやりましたよみたいなドヤ顔っ!
俺からかつあげしてたでしょうがっ!


…ん?というか、さっき600年以上暮らしてきたって言ったな…
こいついったい何歳なんだ…?



「鑑定」


鑑定結果
・種族:妖狐ようこ
・性別:女
・名前:---
・年齢:616



616歳!?
めっちゃおばあちゃんだ…。
さすがに若づくりしすぎじゃない?
とナイススレンダーを見つめる。

ぱっと見ると20代前半の金髪の女性姿だからだ。

そんなことを思い、ナイススレンダーを見ていると、
「おまえ、なにか失礼なことを考えていないか…?妖狐族の寿命は魔力に比例するが、少なくとも1000年は生きるぞ。」

1000年!?
あれ…っ!というか、今、スキル「鑑定」を使ったことがばれた。
そういえば、最初に会った時もなぜかばれてしまっていたな。
そしてそれこそが、今のこの状況に俺が陥った原因でもある。


そう思い、聞いてみた。
「…なんでスキルを使ったことが分かった。今まで散々使ったが悟られることはなかったぞ…」
なにかこいつには取り繕ってもバレてしまう気がしたので、素直に聞く。



「別にスキルを使ったことが分かったわけではない。おまえの行動から推測してカマを掛けただけだ。」

どうやら、ヒトに化けているあの姿、まぁ結構な美人なので他の者から見られることはあるが、

俺の行動はやつナイススレンダーをジッと見た後、急になにかハッとしたように驚きの表情をみせたのち、「ほう…」とか怪しげにつぶやいていたので
カマをかけたそうだ。

「なにかわたしの正体について知ることのできるスキルを使ったのではないか?」

大正解だ…。
ちなみにさっきも俺の表情はそうなっていたらしい。
…「鑑定」を使う時はポーカーフェイスも重要だな。と思った。



そしてこれも聞く。
「なんで俺からかつあげしたんですか。」
そう聞くと、

「かつあげ?ただ、シュクルムをくれと頼んだだけであろう。変なことを言うでない。」
ふむ。こいつにヒトの常識を説くのは時間の無駄な気がしてきた。

「ただ、頼んでもくれるものではないからな。何か弱みを掴んでから頼むとやりやすかろうと思ってな。」

それをかつあげっていうんだよ!

「そこにたまたま、おまえが引っ掛かっただけだ。」

ちくしょう。でもこいつナイススレンダーは本当にこう思っている。
短い会話しかしていないが、この妖狐、常識ゼロだ。

まぁ、森の奥で600年も暮らしたらそうもなるかと、諦める。



「それで…俺をどうするんですか。俺は来週、シュクルムを買ってくることができません。」
そう、俺の生命いのちどうなるのっ!
と平静を装いつつ聞く。


「…別にどうもせん。ヒマだったから、からかっただけだ。…ヒトと話すのも久しかったからな…。」
なにか少しぶっきらぼうにナイススレンダーが言い放つ。


「…はぁ。しかしシュクルムどうするかなぁ。そういえばあの店…店主に娘がいたか…?」
ものすごく落ち込んだような表情の口から恐ろしい言葉を発しながらブツブツとなにか言っている。



散々偉ぶっていたナイススレンダーが急に落ち込んだ様子に俺は少し戸惑ってしまった。
そして、



「…1つだったら…。1つだけったら買ってきてやるよ…。来週。」


と言ってしまった。


つぎの瞬間、
「ほ…本当か?絶対だぞ!」
と急に顔を上げた。

そして急にご機嫌になり、
「買ってきた暁には褒美をやろう…」
とか言いだした。

なにか荷物を持っている様子もないし本当か?
と思いつつ、シュクルム店主の娘の命も危ういので、
来週、1つだけシュクルムを買ってくることにしてしまった…。

浅はかだったか…っ。
と軽くなった財布の中を見ながら家路についた。

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