Retry 異世界生活記

ダース

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第2章.少年期

31.名前

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再び翌週。

結局俺はまたシュクルムを1つ買い、あの路地裏に向かう。

なんだかんだ今日ここに来るためにはとか、
金の元になる魔物を持ってくるのだからとかうまいこと説得されてしまったのだ。


なんでこうなるんだ…と思いつつ歩き、
あの路地裏に到着した。
しかし、ここは本当に人が来ないな。

俺がここで殺されたら誰も発見してくれなさそうだ…。


視線を上げると、
いつものごとく金髪のあいつナイススレンダーは既にいた。

「まずは食べてからだな。」


…大丈夫。
気にしないことにしてるから…。


「…くふぅ!やっぱりうまいな…。」
勢いよくシュクルムをほおばるナイススレンダーを横目で見ながら辺りを見回す。

あれ?なにもない。
魔物を数匹倒して持ってくると先週約束したはずだ。

もしやもう忘れてるのか…?

そう思い、やつナイススレンダーの方を見る。

「忘れてないだろうな。」
俺がそう言うと、

「安心しろ。ちゃんと持ってきておる。」
そういうと、なにやら小さめの鞄をとりだした。

ん?この鞄に入っているのか?
確かに弱い魔物をと言ったからな…。
しかしこれでは…と思っていると、

ナイススレンダーは鞄に手を突っ込み
何かを掴んで鞄の外に取りだした。

ドサッ…ドサドサッ…

「ええ!?」
明らかに鞄の体積より大きいものが出てきた…。
これにはさすがにと驚く…。

その鞄そんなに入る…?
物理法則おかしくない…?
この世界でそんなこと考えても意味はないだろうが、


「その鞄なに…。」
おもわず聞く。


「ん?これか?これは以前わたしを狙ってきたヒト族を倒したとき、そやつがに持っていたものだ。
たくさん物が入るので便利だからと貰っておいた。」

鞄の中をまじまじと見てみるが、中は何か暗くてよく見えない。
なんと便利な…。
後で街で探してみよう。


とりあえず、ナイススレンダーが出した魔物を見てみる。
でかい豚に、でかい蜂か…
あ、確かこれは授業で習ったな。

学校の剣術の授業では
剣術といいつつ、魔物の素材になる場所や剥ぎ取り方なども習っているのだ。

「でかい豚の方はタルポークだな、ん~これはちょっと難しいか。」
タルポークは脂身の多い肉質のため、少し高級な肉として食べられるが、
可食部が少ない魔物だ。


「でかい蜂は…タンクビーか。これは…あ、いけるかも!」
タンクビーは蜂型の魔物で花の蜜を腹に大量に詰める習性がある。
針の毒性はそこまで強くないが、集団で襲われると非常に危険な魔物である。


「どうだ?なにか金を作る方法は思いついたか?」
ナイススレンダーが考え込んでいる俺に話しかける。

「このタンクビー。よく取れるのか?こいつの腹の中にある花の蜜があればいけるかもしれない」

「ホントか!?そいつは日に2~3匹は見かけるぞ。」

おそらく花の場所とタンクビーの巣の導線上にナイススレンダーの住処があるのだろう。

「俺の店は雑貨屋なんだ。まぁ物を売っているんだが、このタンクビーの蜂蜜をそこで売らせてもらおうと思う。」

ちなみにもっと強い魔物もこいつナイススレンダーなら狩れるだろうが、
そんなものをいきなり父に持っていっても怪しまれるので、
なんとか言い訳できそうなものにするため、弱い魔物を狩ってきてもらったのだ。


蜂蜜なら別にタンクビーからの採取以外でも、
普通に小さい蜂の巣からでも取れるし、怪しまれることはなさそうだな。

学校の友達の姉がどうしても売ってみたいと言っているとか言って父さんを説得しよう。




「それで金を稼いだら、もっとシュクルムを食えるのか?」
目を輝かせたナイススレンダーがこちらを食い気味に見てくる。

「まぁ、魔物はお前が狩ったものだしな。売れた金額分は食べてもいいんじゃないか。」
俺がそう言うと、

「ほう?言ったな?しかと聞いたぞ?くっくっく…」
と不敵な笑みを浮かべていた。

俺はタンクビーが絶滅するといけないと思い、週に2匹程度にすることと言っておいた。
すると再びめんどうくさく怒りだしたが、店のスペースが足りなくなるなどと言って了解してもらった。

蜂と花は持ちつ持たれつつの関係なのだ。
説明しても理解はしてもらえなかったが…。




そして、今日はもう1つ目的がある。

「お前の魔法を教えてもらおう。」

そう。あの火の球10個出すやつとかを教えてほしいのだ。
あれはなかなかに迫力があってかっこよかったし。


「ふむ。よいだろう。しかしヒトはいきなりわたしのようには魔法は使えまい。もともとの魔力が違うからな。まぁ、基本からだ。」

それはたしかにそうだなと納得する。
なぜなら俺は火の球1個で限界なのだ。
10個はだいぶ遠い。


「それと…わたしは「お前おまえ」ではない。人にものを教わるときは敬うものだぞ?」

ちぃっ!
こいつナイススレンダー、自分が少しでも有利になるとすぐ偉ぶってすごくめんどうくさくなるんだよな~。
と思いつつ、あらがっても仕方が無いので、

「…魔法を教えてください。…ナイスス…。ん…?そもそもお前、名前はなんて言うんだ?」
ナイススレンダーは俺が付けたかりの名だ。
本当の名前はなんだと思い、聞いてみる。


「名前?…名前か…。とくにそういったものを持ったことはないな。ヒトからは、やれ化物だ、厄災だなどとは呼ばれてはおったが。」


「…おまえは、なにかわたしを呼びたいと思う名はあるか…?」
そう問われた。


ナイススレンダーです!
と言いたいが、前世が日本人の俺は空気を読めば右に出るものはいない in この世界。
ということでなにか呼びやすい名前を考える…。
ん~いざ考えると出てこない。

こいつに合った名前…

ん~600歳のわりに我儘わがままだしな~。
じゃじゃ馬のようなやつだ。




「…コルト。」
なにかちょっとピンと来た名前があったのでそう言ってみる。


「コルト…?コルトか…。ふん。気に入った。わたしの名前は「コルト」だ。」

胸に手を当てて俺に向かってナイスス…コルトがそう言った。
どうやらこの名前が気に入ったようだ。


一応念のため、「ナイススレンダー」という名も提案してみたが、
その名で読んだ暁には首をねじり落とすと言われたのでやめることにした。


「ところでおまえの名前はなんという。わたしだけ名前を教えるのは不公平であろう。」
コルトがそう言う。

ついさっき俺がつけた名であろうに。
相変わらずだ…。
まぁ、でも気にしてもしょうがないので、コルトに向かって俺の名前を伝える。

「俺の名前はクルス。クルス・ラディクールだ。」


「クルスか。わたしはヒトに魔法を教えたことなど無いから加減がわからぬし、そもそも手加減はできんからな。」


「ふん。元からお前コルトの正体は知っている。それは承知の上だ。気にするな。」


「…その言葉、忘れるでないぞ?」
コルトは再びあのにやりとした表情をしてそう言った。



-------------------------------------------------------------------------------
・種族:妖狐ようこ
・性別:女
・名前:コルト
・年齢:616



・タンクビー:蜂型の魔物。腹の中に花の密を溜め込む習性がある。
そのため、その蜂蜜を狙う冒険者も多い。
タンクビーの針の毒性は低いが、集団で教われた場合、大変危険である。
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