Retry 異世界生活記

ダース

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第2章.少年期

56.課外授業

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コルトのMPを使って修行を始めてから1年ほどが経った。
代償としてコルトがシュクルムを食べる時に俺の血をちょっとあげることになってしまったが…。

修行はなかなかキツイところもあるが、コルトのMPが使える分、普段よりもいろいろな魔法が使えるので楽しみだ。
しかし、普段は自分のMP分しかないので地道に体に魔力をまとう練習をする。

\ピコーン/
スキル
・魔力操作Lv39
・身体強化Lv13

「魔力操作」
このスキルが上がると魔法が出しやすくなったり、扱いやすくなったりするのでありがたい。
いっぱい上げたらコルトのMPを借りなくてもいろんな魔法が使えるようになるのかも…。
と思いつつ、体に魔力を纏う練習をする。



「クルス。準備はできたの?」

「できたよー。」
学校へ行くまでのわずかな時間もちょこちょこ練習する。

「ショートソードを使うことがあったら手を切らないように気を付けるんだぞ?」

「わかったよ!」
その成果がついに花開く時が来たかも!
と今日は少し楽しみだ。

「「行ってきまーす!」」
アリスと一緒に学校に向かう。


教室に入ると、皆いつもより少し多くの荷物を持って待機している。

「はい。それでは、今日は課外授業です。みなさんしっかり準備してきましたか?」

「「「はーい!!!」」」

「先生と冒険者ギルドにお願いした護衛もいますが、みなさん気を付けて行きましょうね!」

そう!
今日は課外授業!
街の外に行って魔物を狩って素材をはぎ取り、調理して食べる。
そして無事に帰ってくる。
という授業だ。

今までの授業で習った魔法や、剣術、素材の取り方、調理方法などを実践してみようということらしい。
領立学校の5年目で実施する授業だ。
鍛え上げた俺の魔法でズババッとやってやるんだ!
…とは言っても、ほんのちょっと街から出て原っぱにいるモフリィを狩るくらいらしいが…。

「楽しみだね!クルスくん!!」
ブンブンと尻尾を振りながらメルが話しかけてくる。

「そうだな!ん?武器2つにしたのか?」
メルの腰を見ると、ショートソードより短い、「ナイフ」が2つ差してある。

「うん!軽いし2本あったら攻撃が2倍だよ!!」

「へ~。なんだかメルに合ってる気がするよ。」
2倍になるかどうかは別としてナイフがメルに似合っていたのでそう言う。

「えへへ!」
再びメルの尻尾がブンブンと動く。


「お、課外授業ですか。気を付けていってらっしゃい。」

「はい。ありがとうございます。冒険者ギルドから護衛も出してもらいましたから安心です。」
街の出口で先生と衛兵が会話を交わす。

先生が言っていた通り、今日は冒険者ギルドからの護衛がいる。
長い剣、ロングソードと呼ばれる武器を手にした男の人。
弓を手にした兎獣人の女性。
大きな盾を持っている大柄な犬獣人の男性。
先端に綺麗な石がはめ込まれた杖を持っている女の人。
…女の人は耳が長い…。


「鑑定」

鑑定結果
・種族:エルフ族
・性別:女
・名前:フィデネージュ
・年齢:721

おお…エルフ族…。
ちなみにエルフは数が少ないのか、この街で見かけたのはこれで2人目だ。
721歳か…。コルトより年上だな…。
しかし美人だな…。この世界の年齢はあてにならないな…。

冒険者になる予定の俺は、護衛に来た冒険者を観察する。
…結構高そうな装備してるな…。
俺の店で売ってる中古品と明らかに違う…。
やっぱり学校の課外授業の護衛とは言え、冒険者は命が大事だからなー…。
なるほどなるほど。

護衛の冒険者を観察しつつしばらく歩くと、原っぱに出た。
見晴らしがよく吹き抜ける風が気持ちいい。

遠くの方に何やら白い丸っこい物が見える。
魔物のモフリィだ。

「さて、それではみなさん。ここでもう一度荷物、装備品を確認してください。調理器具運搬担当の人はここに一度調理器具を置きましょう。」
ジムニー先生が皆にそう伝える。

準備は大事だからな。と俺も腰に差したショートソードにこぼれやヒビが無いかをチェックする。
ちなみにこのショートソードはいつもひそかに雑貨屋の店先から借りているものだが、課外授業だからと今日は父に言って正式に借りている。

「それではみなさん行きましょう!レッツゴーです!」
そう言ってジムニー先生は白い丸っこい魔物たちがいる方を指さす。

その声に皆一斉に動き出す。
ソロソロと近づく者や、全力ダッシュで突っ込む者、様々だ。

「クルスくん!行こ!」
そう言い、メルが俺の手を引っ張る。

「おう!」
とりあえず、メルのお手並み拝見だ。

モフリィは近づくととにかく標的に体当たりをしてくる。
他の生徒たちを見ていると、体当たりしてきたモフリィにもふもふされている。
しかし、もふもふの毛により痛くはないのでなんとか引きはがし武器で攻撃しているようだ。
攻撃できるような魔法を出来る生徒がまだいないのか、皆魔法ではなく武器で攻撃している。

メルも攻撃出来るような魔法はまだ使えないので両手に2本のナイフを持ちモフリィに突っ込む。
…すばしっこいよな~と思いながら見守る。

メルとモフリィの距離が1mほどとなった瞬間、モフリィがメルに向かってビョンッと飛び上がった。
メルは飛び上がったモフリィをかいくぐる。
二筋ふたすじ剣閃けんせんが見えた瞬間、モフリィの毛はしなしなになり、ポトッ…と音を立てて地面に落下した。

「やったあ!」
メルはそう言い、絶命したモフリィを拾い俺の方に歩いてくる。

「…なんだか手なれてるな…。」
あれ…?
メルってこんなに動き速かったっけ…?
思いのほか、メルの動きがよく少しびっくりしながら声を掛ける。

「えへへ…。たまにお父さんに狩りに連れて行ってもらってるの!」

「そうなのか。なるほどな~。」
なるほど。だから手なれているのか…。

よし!ここは俺の華麗なる魔法でモフリィを仕留めてメルをビックリさせてやるか。
メルの動きにちょっとビックリさせられた俺はそう意気込んだ。

う~ん…。よし、あのちょっと大きいモフリィにしよう、と狙いを定めて少し近づく。
この辺りなら届くかな。
見た目も派手なのでここはやっぱりファイアボール。と狙いを定める。



「きゃあ!!」
「うわああ!!」

俺が魔法を撃とうとした瞬間、少し離れたところで声がした。
なんだ?と声がした方向を振り向くと、ひたいに角の生えた兎が走り回っていた。

お、あれはたしかホーンラビット。
ラバンの街でよく食べられているものだ。

しかし、モフリィしか出ないと言っていたけどな…。
ホーンラビットは結構すばしっこいし、額の角で攻撃してくるから実は結構あぶない魔物なのだ。

ん?
もしや…ここで俺があのホーンラビットを仕留めれば、大喝采を浴びるのでは…っ!
少し不純な動機も混ざってしまったが、クラスメイトの危機を救うため、俺はホーンラビットの方に「ファイアボール」を撃とうとしていた手を向ける。


「火の女神めがみカムイよ。ともはなて!ファイアボール!」


あれ…?
俺まだ魔法撃ってないんだけどな…。
俺が放つはずの「ファイアボール」の魔法詠唱がどこかから聞こえてきたため俺は困惑する。

ボシュッ!…ドサ…

すると、俺が魔法を放とうと手を向けた先で走り回っていたホーンラビットにどこかから飛んできた火の球が当たるのが見え、ホーンラビットはそのまま横たわった。

ぬぬ?どういうことだ…?
ま…っまさかっ…俺が魔法発動動作をしなくても、そう思っただけで標的に魔法が発動されるスキルを獲得したとか…っ!!お…おそろしいことだ…。

と今起こったことへの推察を進めていると、なにか向こうの方に人だかりができており、騒がしい。

ちょっと近づいて行ってみる。

「「すごーい!」」
「今のはファイアボール?」
「もう一回やって~?」

なんだか騒がしくなっている生徒たちの中心に小奇麗な少年が立っていた。

「さすがですね。あなたがいればわたし達はいらないのではないですか?」
護衛の冒険者、エルフの女性がそう話しかける。

な…美人のエルフの女性に話しかけられているっ!
ぬう!うらやましい!!

「助けてくれてありがとう…!」
先ほど走り回るホーンラビットの近くにいた女生徒だ。
なんだか目がハートになっているような気が…。

ん…?
あれ…。もしやさっきの「ファイアボール」、あの小奇麗な少年が放ったものか…?
…なんだかこの状況からするにそうらしい。
俺におそろしいスキルが発現したわけではなかった。

…くぅ!
しかし、あの小奇麗な少年が「ファイアボール」を撃たなくても俺の「ファイアボール」で仕留められていたのに!
そしたらあの女生徒の目のハートは俺に向けられていたはず…っ!たぶん…っ!

「わぁ…!魔法の攻撃!すごかったねえ!」
後ろにいたメルが話しかけてきた。
尻尾がフリフリと揺れている。

むー…。
俺も魔法の攻撃できるのにぃー…と思っていると、
どうやらホーンラビットが出たこともあって、狩りはここまで、ということになり、
あとはモフリィとさっき小奇麗な少年が倒したらしいホーンラビットをさばいて調理することになった。

モフリィのさばき方は授業でも習ったが、俺は家の手伝いで時々モフリィをさばいているのでお手の物だ。

「クルスくん、モフリィさばくのうまいね!将来は冒険者じゃなくて料理人の方がいいんじゃない?」
俺の手さばきを眺めていたメルがそんなことを言ってきた。

「な…っ!俺は冒険者になるんだ!どっちが上のランクまでいけるか勝負だからな!」
ちょっと華麗にモフリィを倒したからと言って調子に乗るんじゃあない!
と宣戦布告する。

「えへへ~いいよ!ホーンラビットだってちょちょいのちょいなんだよ!」
そう言うとまたメルの尻尾がフリフリと動く。

「本当か~?」
モフリィはまだしも、さすがにホーンラビットまでちょちょいのちょいではないだろ~と疑いの目をメルに向ける。

「本当だよ?お父さんに狩りに連れて行ってもらってるって言ったでしょ?冒険者になるために鍛えてもらってるの!あ、この前レベル10になったんだよ~!クルスくんは今レベルいくつなの?」



「え……?レベル……?」



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ステータス
・種族:人族
・性別:男
・名前:クルス・ラディクール
・年齢:8 → 9 (1UP)
・Lv:1
・HP: 78/78 → 92/92 (14UP)
・MP:99/99 → 117/117 (18UP)
・攻撃力:37 → 44 (7UP)
・魔力:85 → 103 (18UP)
・物理防御力:39 → 48 (9UP)
・魔法防御力:45 → 56 (11UP)
・敏捷:37 → 48 (11UP)

スキル
・魔力操作Lv29 → 39 (10UP)
・身体強化Lv11 → 13 (2UP)
          
固有スキル
・鑑定Lv2

魔法適性
・火、水、風、光
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