Retry 異世界生活記

ダース

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第3章.冒険者突入

74.道中その2

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「んぅ……」

まぶたの外に光を感じる。
朝のようだ…。

昨日は結構早く寝床に入り、いつの間にか眠りに落ちてわりとぐっすり眠っていたようだ。
旅立ち初日だし疲れていたのかな…。
よし、と目を開け起床する。

「スゥ……スゥ……スゥ……」

となりではいまだ気持ち良さそうに眠っている女性がいた。

…とりあえず寝かせておくか…。
と、水筒を持って、テントの外に出る。
今日も綺麗に晴れており、青い空と壮大な草原が広がる。

「ん~…!」

っと身体を伸ばし、水筒の水を飲む。


「我に従属せし者よアテーリアの名に誓い顕現せよ我の名はクルス・ラディクール!」

出発の準備をするため、我が召喚獣、馬のオルフェも呼び寄せる。

「ヒヒ~ン!」

「おはよう。オルフェ。しっかり休めたか?」

「ヒヒ~ンヒヒ~ン♪」

オルフェは絶好調のようで今日もご機嫌だ。


「ん…。…出発するのか…?」

すると、オルフェの声に起きたのか、コルトもテントから出てきた。

「うん。ご飯を食べたら出発だ。」
今日はハイバイソンのサンドイッチにしよう。
と鞄から取り出す。
デランさんから貰ったソースもある。

「ん~…このソースうまいなぁ~…。」

「やはり…むぐっ…うまいな…はむっ…そのソースはクルスは作れないのか?」

「秘伝のソースなんだって。大切に使わないとな。」

「はむっ…そうなのか…むぐっ……ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…」
コルトはサンドイッチを勢い良く食べ、水を飲む。

「ゴクッ…ん?クルス。水が少しぬるいぞ。」
コルトはそう言って水筒を渡してきた。

「ん?…そうか。」
俺は渡された水筒を受け取ると、魔法「ヒンヤリ」をかける。
これは水に使うと、ちょうどいいひんやりとした温度にすることができる魔法だ。

「…というか、この魔法はコルトも出来るはずだぞ?」

「ん?わたしは水の魔法はできんと言ったであろう。」

「これは水の魔法じゃなくて火の魔法なんだ。熱量を減少させるやつだし…。」

「ねつりょう…?…ふん。…クルスが出来るのであればクルスがやればよい。」

「えー…」
と思いつつ、まぁこれくらいなら別にいいかと水を冷やし終えた水筒をコルトに渡す。

「ゴクッ…ゴクッ…プハッ…ふむ。やはり冷たい方がうまいのうっ。」

「…そうだな。」



食事も終えたので後かたずけをし、荷をオルフェにくくりつけ、出発する。

「よし。オルフェ、出発だ!」

「ヒヒ~ン!」

パカラッ…パカラッ…パカラッ…
パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…
パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…

オルフェは今日も軽快に走る。


「お、道端に石ころが…エアカッター!」
ちなみに黙って乗っているのもあれなので、コルトのMPを借りて魔法を飛ばしながら進む。

\ピコーン/
スキル
・魔力操作LvLv51 → 52 (1UP)

修行にもなるので一石二鳥だ。


「クルス…わたしのMPを使ったのだから次の食事の時はクルスおまえの血を頂くからな。」

「わかってるよー…。少しだけだからな…。」

「くっくっく。」


パカラッ…パカラッ…パカラッ…
パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…


「う~ん…今日もどこにも着かなかったな…」

「そんなことよりクルス…早く腕を出せ。血が飲めないであろう。」

「取引の内容…舐めるだけじゃなったっけ…?」

「そんなもの同じだ。」

「えー…あんまり飲むと貧血になるって言って…」

ガブゥッ

「いったぁ~!まだ話してただろ!?」

「ん?気にするでない。」

「…そういうのはこっちが言うんだと思うんだ…。」





……

………


その後もオルフェの乗って走り続けたが、翌日も、そのまた翌日も街には辿りつかなかった。


「はい。コルトの分。」

「ん?このパンは何も入っておらんぞ?」

「もうこの何も入ってないパン6個しかない。」

「な…っ!なんだと…?」

移動中は1日2食で旅をしてきたのだが、あとパン6個…。
3食分だ…。
水は少ないけど、一応俺の魔法で作ることができるので大丈夫なのだが…
やっぱり…

「…腹…減ったな…。」

「はぁ…しかし他の者も道におらぬし…この先にほんとうに人の街があるのか…?」

「え!?…今さらそんな不安になるようなこと言うなよ~…。」

「ふん。人のことなのだからクルスおまえにまかせた。…はむっ…はぐっ……このパンは硬いのだな…」
コルトはそう言ってパンを食べ始めた。

「…まぁその分日持ちするんだ。」

「そうなのか…はむっ…ゴクッ…ゴクッ…」

「…今さら戻れないし、このまま進むしかないな…。…はぐっ…かたっ!…ゴクッ…ゴクッ…」




……

………

翌朝、

「今日街に着かないと食糧がなくなっちゃうな…。」

「行くしかないのであろう?」

「…まぁ…そうだな…」

と、オルフェに乗り再び出発する。


パカラッ…パカラッ…パカラッ…
パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…
パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…


しかし、今日も一向に街らしきものの影も形も見えない…
そろそろ日が傾いてきたな…と思っていると、

「ん?クルス。あそこになにかあるぞ?」

コルトがそう言い指さした方向を見ると、一軒の建物があった。

おお?ついに街か?
と思い近づく。


カッポカッポカッポ…

「結構年季入ってるな…」
手入れがあまりされてないのか結構ボロい…。
誰かいたりするかな~…と建物の周りを見る。

「お?裏手に馬車がとめてある!誰かいるかも!」
すると、建物の裏手に馬車がとめてあったので、その場所に俺もオルフェを繋ぎ、建物の中に入って見ることにした。


「ごめんくださ~い…」
誰かいてほしいという期待と、怖い人だったらやばいかもという不安の中、静かに建物の中に入る。

「ん?旅の方かい?ってまだ子供だね。」
すると、中にいた男性がそう答えてくれた。

男性の横にはもう1人の男の人がいる。
親子のように見える。


「すみません。ここは…。」

「ん?ここかい?ここは旅の人用の休憩所だよ。外に看板があったろう。」

「父さん、たしか…看板は壊れてたよ。」
さっきの男性の横にいた男の人がそう答える。
やはり親子のようだ。

「ああ…そうだったか…。昔はここも綺麗だったんだがなぁ…。あんたらどこから来たんだい?まぁ中に入りなさい。」

「あ、はい。…コルト、中に入ってもいいみたいだ。」

「ふむ。そうか。」

どうやら旅の休憩所のようだ。
久々に人に会ったので少し安堵しながら中に入る。


「こんばんわ。僕たちはラバンの街から旅をしているところで…」

「ほう…そうか。ラバンの街か。…横のお嬢さんはお姉さんか?あんまり似てないが…」
父親の男性は首をひねりながらそう言う。

「ええ。そのようなものです。」
コルトはなんだか微妙ににやりとしながらそう答える。


「俺たちはこの先の街から来てな…。領都スイフに出稼ぎに行くところなんだ。」

おお!この先の街!
どうやらやっぱり街があるようだ。
とちょっと安心する。

「へ~!そうなんですか!僕たちも領都スイフに行くところなんですよ!」

「ええ!?…だったらあんたら…逆方向だぞ…?」

「あ…ええ…。そうですね…。」

「だ…大丈夫か…?」

「え…ええ…。ちょっと寄り道をしていくことにしまして…。」

「そ…そうなのか…。しかしこの先の街までまだいくぶんかあるぞ…?…食糧はあるのかい…?」

「あ…それがもう無くて…」

「えぇ…。あんたらほんと大丈夫なのかい…?」

「あ…ええっと…。」

「…まぁ…飯でも食べるか…。一緒に食べよう…。」

「す…すみません…気を使って頂いて…。」


その後、気を使ってもらい一緒にご飯を食べることにした。
ご飯は親子が持っていた鍋で野菜とキノコのスープを作ってもらったのを一緒に食べた。
パンも2個くれた…いい人…。

「ゴクッ…ゴクッ…はむっ…うま…。」

「コルトさんは食べっぷりがいいな!」



……

………

食事をしながら雑談を交わす。

この親子はこの先にある、ラグラスという街から来たそうだ。
昔はとても栄えていたんだけど、今はからっきしみたいで、出稼ぎに行くようだ。


「そうだ。俺の家はラグラスでアメリー亭っていう宿屋をやってるんだ。よかったら泊まっていってくれな。」

「ありがとうございます!是非泊まらせてもらいます!」

「しかし、ラグラスに行っても今はあんまり儲からないぞ?」

「お金はほしいですが…いろんなところに行ってみたいなと思って冒険者になったので…」

「はっはっは!そうか。まぁ街に着いたらゆっくりしていってくれな。ここから馬車で3日ほどだ。君の馬ならもう少し早く着くかもな。」

「そうですね!」

「それから…これはうちの宿に泊まってくれる礼だ。」

「あ…これは…」

「はっはっは!気にすることはない。」
そう言って、その親子は俺たちにパンを6個くれた。

「あ…ありがとうございます!」




……

………


翌朝、

「本当にいろいろして頂いて…。」

「はっはっは!元気にな。君は口調がなんだか固い時があるな…。」

「宿に着いたら、奥さんにもお礼を言っておきます!お元気で!」

こんないい人がいるのか…と、思いつつ、
食糧って大事だな…と少し反省し次の街ラグラスに向けて出発することにした。
馬車で3日ならオルフェなら明日には着くかもな…。



パカラッ…パカラッ…パカラッ…
パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…
パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…


そして、俺たちは再びオルフェに乗って走り続けた。
景色は相変わらず草原だが、道の片側かたがわは山が連なっている。


パカラッ…パカラッ…パカラッ…
パカラッ…パカラッ…パカラッ…パカラッ…

休憩所を出発して2日後…、

「お…?あれ…街じゃないか!?」

「ほう…そうだな…。」

山のふもとに広がるように建物が立ち並ぶ街を発見した。


カッポカッポカッポ…

ゆっくりと門に近づく。


カッポカッポカッポ…

門に近づくと、「ラグラスの街へようこそ!」と書かれていた。


カッポカッポカッポ…

「こんにちわ。旅の方ですか?」
門に近づくと、門の手前に受付のようなもがあり、近くにいた衛兵のような人が話しかけてきた。

「こんにちわ。はい。冒険者で…」

「そうですか。冒険者の方は久しぶりですね…。あちらで街に入る手続きをお願いします。」


そう言われ、案内された手続き受付の場所に行く。
「こんにちわ。街に入りたいのですが…。」

「こんにちわ。身分証などはお持ちですか?」

「あ、はい。」
そう言われ、冒険者ギルドカードを渡す。

「冒険者の方ですね?少々お待ちください……はい。問題ありません。こちらお返しします。」
受付の人はギルドカードを受付台の下あたりでなにかゴソゴソした後、そう言って、カードを俺に返した。

「ありがとうございます。」

「お一人ですか?」

「いえ、二人です。」
人数を聞かれたので、俺の後ろにいるコルトを指さしながらそう答える。
…あ…ステータス確認されたらどうしよう…。

「かしこまりました。それでは入場税お二人で2,000ガル頂きます。10日以上街に滞在する場合、同額を再び納付するか、冒険者ギルドでのクエストを達成する必要がありますのでお気を付けください。」

「はい。わかりました。」
よかった…。
一人が身分証持ってればOKなのかな…。
街によって違うのだろうか…。

少しほっとしながら入場税を払い、街に入ることにした。


街に入ってからはオルフェから降りて、歩く。

「ええっと…たしか冒険者ギルドのすぐ近くって言ってたな…。」
俺たちはとりあえず、休憩所で紹介された宿屋アメリー亭というところに向かうことにした。



……

………

「お、冒険者ギルドだ!…結構大きいな…。ラバンの街のギルドより大きいかも…。」

「ほう。…しかしその割に人が少ないな…。」

「…そうだな…。」
なんだか街の施設の割に活気がない…。

何があったんだろう…と思いつつも宿屋を目指す。



……

冒険者ギルドから歩くこと5分。
「アメリー亭」と書かれた看板を見つけた。

「お、あったぞ!」

「これでうまいものが食べられるのだな?」

「…そうだといいけど…。」




ギイッ…

カランカラ~ンッ


「は~い。いらっしゃ~い。」




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みんなの感想(35件)

Nayar
2017.06.12 Nayar

続きまだですか?凄い楽しみにしてます。

解除
みけ
2017.05.22 みけ
ネタバレ含む
ダース
2017.05.23 ダース

お読み頂きありがとうございます!
世界観としては中世ヨーロッパのような感じです。
主人公クルスが水魔法で水は確保できるという点と、魔物を狩ればなんとかなるかもという楽観的な感じで移動してしまった!
というお話でした!

解除
Nayar
2017.05.16 Nayar
ネタバレ含む
ダース
2017.05.16 ダース

お読み頂きありがとうございます!
修正しました!

解除

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