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その年のバレンタインデーは、雪が降り、とても寒かったのを覚えている。
もう、五年も前の話だ。
あの頃の私は、猫を辞め人間になりたてのころだったので、いろんな本を読むことで人間と少しでも仲良くなれるように努力していた。
近所の古本屋で、バイトをしていた旦那に惹かれ、いつしか本より彼目当てでそこに通っていた。
話すきっかけは、お会計の時。
まだ、人の名字を読めるようになる前だったので、読み方を聞いてみた。
「あの、お兄さんのお名前って何て読むんですか?」
「小鳥遊です、小鳥と遊ぶなんて書いてあるのに、読み方難しいですよね…」
そんな些細な会話から、私たち夫婦の物語が始まった。
何度も彼と会計時に話していると、ふと彼からこんな提案をされた。
「来週、どこかお暇なとき、遊びに行きませ
んか…」
人間になって初めての恋。
いや、小鳥遊さん的には友達程度にしか思っていないかも。
でも、私は喜んで、って伝え連絡先も交換した。
そこからは、とんとん拍子で、何てことはなく、一回目のデートが一月半ば。
そこからは、連絡を取り続けてはいるが…。
けして、次のデートがあるような会話になるわけでもなく…。
このままでは、足踏みを続ける事になってしまう。
それが嫌で、私は勝負に出た。
「二月十四日、午後二時半ごろ、千葉駅の大画面の前付近で待ってるから…」
その日は、思ったよりも雪が降り、地面が白い絨毯のようだった。
歩きながら、あの本があーだったとか、この本の結末はあんまり~とか。
他愛のない会話をして、初デートで来た公園にて立ち止まった。
「あの、ですね…。小鳥遊さんに、これを渡したくて…」
寒くて震えていたのか、緊張で震えていたのか、どちらの可能性もある中、私はずっと右手で持っていた紙袋を渡す。
「僕から、言ってもいいかな。君の事好きになってもいいですか?」
私は、瞳を潤ませながら頷くことしか出来なかった。
でもそんな出来事のお陰で今があるので、私はバレンタインデーが好き。
美味しいチョコも食べれるからね。
もう、五年も前の話だ。
あの頃の私は、猫を辞め人間になりたてのころだったので、いろんな本を読むことで人間と少しでも仲良くなれるように努力していた。
近所の古本屋で、バイトをしていた旦那に惹かれ、いつしか本より彼目当てでそこに通っていた。
話すきっかけは、お会計の時。
まだ、人の名字を読めるようになる前だったので、読み方を聞いてみた。
「あの、お兄さんのお名前って何て読むんですか?」
「小鳥遊です、小鳥と遊ぶなんて書いてあるのに、読み方難しいですよね…」
そんな些細な会話から、私たち夫婦の物語が始まった。
何度も彼と会計時に話していると、ふと彼からこんな提案をされた。
「来週、どこかお暇なとき、遊びに行きませ
んか…」
人間になって初めての恋。
いや、小鳥遊さん的には友達程度にしか思っていないかも。
でも、私は喜んで、って伝え連絡先も交換した。
そこからは、とんとん拍子で、何てことはなく、一回目のデートが一月半ば。
そこからは、連絡を取り続けてはいるが…。
けして、次のデートがあるような会話になるわけでもなく…。
このままでは、足踏みを続ける事になってしまう。
それが嫌で、私は勝負に出た。
「二月十四日、午後二時半ごろ、千葉駅の大画面の前付近で待ってるから…」
その日は、思ったよりも雪が降り、地面が白い絨毯のようだった。
歩きながら、あの本があーだったとか、この本の結末はあんまり~とか。
他愛のない会話をして、初デートで来た公園にて立ち止まった。
「あの、ですね…。小鳥遊さんに、これを渡したくて…」
寒くて震えていたのか、緊張で震えていたのか、どちらの可能性もある中、私はずっと右手で持っていた紙袋を渡す。
「僕から、言ってもいいかな。君の事好きになってもいいですか?」
私は、瞳を潤ませながら頷くことしか出来なかった。
でもそんな出来事のお陰で今があるので、私はバレンタインデーが好き。
美味しいチョコも食べれるからね。
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