タイトルなんてなくていいだろ

ひなちゃん

 「ひなが泣き止むまで一緒にいてくれなきゃ嫌だ…」
彼女は小林さん。
何故か僕は、下駄箱で彼女に捕まってしまった。
いや、腕を掴まれてしまい動けなくなっている。
彼女との接点は、同じクラスという事だけ。
普段会話はしないし、なんなら連絡先も知らない。
じゃあ、何故こんなことになっているのか。
遡っても分からないので遡らない。
どうしたら、俺は腕から手を離してもらえるのだろうか。
素直に言ってみるか。
「あの、小林さん。腕から手を離して貰ってもいいですか？ 僕達普段からまともに会話したことないのになんでこんなことになってるんですかね」
「田中くん、ひなの彼氏でしょ？ だからひなが泣き止むまで一緒にいるのは当たり前だよ？ 」
ちょっとよく分からないことを言う人だということが分かった。
むしろそれしか分からない。
彼氏になったつもりは無いし、彼女から彼氏になってと言われたわけじゃないし。
「小林さん、他に彼氏いるんじゃないの？ 僕とその人間違えてるとかないですかね」
僕のような人の顔にあまり興味がなくても小林さんが可愛いことは分かる。
そんな彼女に彼氏がいるのはおかしくない。
でもそれが僕だとはどうしても思えないというか、記憶にないから違うと思うんだ。

 「ひな、田中くんの彼女だし、お嫁さんだよ？」

とぼけたことを言われて、理解が出来ないので僕はダッシュで逃げた。