可愛い鬼と過ごした日々は

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　今日は、節分だったそうで。
しかし、俺は恵方巻を食べ忘れた。
食べ忘れたと言うか、買い忘れた。
そして、同居人に滅茶苦茶文句を言われている。
「何故あなたという人は、イベントの時に必要なものを買い忘れるのですか？」
彼女は人間のはずだが、今は鬼の角が生えているように見える。
もうすぐ、三十になる彼女だが、見た目は歳よりも、若い鬼のようで美しい。
「あれ、鬼の角が見えると思ったら、鬼のコスプレしていたのか。かわいいな」
　彼は買い物を頼むと完璧に買い物をしてきてくれる。
でも、記念日やイベントごとはすぐ忘れるのだ。
別に忘れてもいいけど…。
彼がイベントごとを忘れてしまうことになったのには理由がある。
私の前に付き合っていた彼女さんが、イベントの日になると、浮気をし、ほかの男との絡みを見せつけてくるなどがあったらしい。
正直そんな人を元カノだなんて呼びたくない。
　
　その気持ちを抱えたまま、彼女にとって最後の節分が来た。
最後の節分だから恵方巻が食べたいと、彼に連絡をしたのだが、帰って来た彼の手には会社帰りのバッグだけだった。
「連絡、したんだけどなあ」
その言葉を最後に、私は記憶が飛んだ。
　
　彼女は本物の鬼になってしまった。
帰宅後見たのは、コスプレをした彼女ではなく、血まみれの鬼だった。
角が生えて、釘だらけのバットを片手に立っている鬼が、その部屋にいた。