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中坊

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俺は瑞樹が靴を脱ぐのを見計らって、すぐさま奴の腕を引く。

「え…あっ…ちょっ…待って、靴…揃えてなっ…」瑞樹が慌てたように声を発する。

「…そんなの、いいですから…早く、上がって、先生…」…俺の声が少し上擦る。

はやる気持ちを抑えながら、俺はまるで荷物を引きづるように、ずるずると瑞樹を自分の部屋へ引きづりこむ。

行き先はもちろん、俺の寝室。照明をつけると、俺のでかいベッドと、サイドテーブルが浮かび上がる。ベッドはダブルベッド…なぜって、俺自身の身体がでかいから、ゆっくり手足を伸ばして寝たくて…そこは譲れなかった。


んで、最初にも少し触れたが、この部屋は無駄に広い。

一般的な普通の高校生男子の部屋の場合、勉強机と収納とベッドと本棚と…って、狭いところにごちゃごちゃ配置してるのが普通だと思うが、俺んちはこれ。

幸か不幸か、多分そのへんの社会人やってる大人の男より、いい部屋に一人で暮らしてるのかもしんない。

ぼーっとしたままの、瑞樹の肩掛けの鞄を少し乱暴に奪い去り、サイドテーブル脇の椅子に置く。

連れてこられた目の前の異常にでかいベッドを前に、呆然と立ち尽くす瑞樹。
寝室にいきなり連れてこられたのに驚いているのか…、もしかしたら、俺のベッドのでかさに仰天しているのか…いや、さすがに後者はないか。

「…す…須賀、君…あの…」瑞樹が不安そうな顔で俺を見上げながら言葉を発する。

「…はい?…なんですか…?先生…」

目線の下にいる、可愛く…小さく震える子ウサギのような奴に…

今すぐ触れて…裸にひん剥いて…滅茶苦茶にむさぼりたい…のに…。
なんだよ今更…やっぱ嫌です、帰りたい…とか、言う気か…?
もう、悪いが帰す気はないぞ…もう少しだけ我慢してやるから、言いたいことあるなら、さっさと言えよ… 

…俺の内心が、湧き上がる欲情を、なんとか押さえつける。

「あの…いきなり…これは…。僕も…かなり、心の準備が…」瑞樹が俺のベッドから、おもむろに目を逸らす。
 
「あの、お腹空かない…?良かったら、先に何か…食べない?僕、実は少しお腹空いてきてて…デリバリーとか、それか…冷蔵庫に何かあるなら、僕、適当に作ろうか…美味しいかわかんないけど…」

「えっと…はあ…まあ…」

…食欲か…こいつにとっては、性欲より…食欲なのか…
…そりゃ俺だって…実はさ…夕飯時だし、腹ペコ…なんだけど…しかもさっき脳内だけで、ご飯を先に…とか、確かにシュミレーションはしたけど…いざ、そう言われると…なんか、…あーーー…腹、減ってきたかも…。

もういいや…腹が減っては戦はできぬ…って言うし…

…うん、ちょっと戦と比較するのは不謹慎かもだけど、腹が減ってはセックスはできぬ…だな…。
よし、もういい。

とりあえず、飯を食おう…腹いっぱいは後に…影響するから、腹八分目くらいまで食って一応食欲を満たして…それから…もう、有無を言わさず…コイツを…嫌がろうが泣きわめこうが…激しく…抱きまくる… うん、決定だ。

「…じゃ…出前でも取りましょうか…寿司とピザ…あと、丼の店とかなら、パンフありますよ…?」

俺はそう言って、なかば仕方なく瑞樹をリビングに誘う… 
んん…?あれ…??俺ってば、マジでどうしちゃったんだろう…?
なんか、コイツのペースに…乗っかった気がする… 

「うん!そうだね…何がいいかな…ありがとう、須賀君…」
…ふわりと…優しい満面の笑顔を俺に向け、いそいそと先に寝室を出て、その後、俺の後ろをついてくる。

あー…っやべえ…俺…なんか、そのへんの恋する中坊とかと…同じレベルな気がする…
   
                                   
                             つづく   
          
                         

































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