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あの子

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午後2時50分…

もうすぐパートが終わる。
仕事をやめたくなる時もあるが、可愛いあの子がいるから頑張れる。

私は彼を盗み見た。
笑顔が可愛くて、懐っこい彼…
少しちゃらちゃらした見た目ではあるが、仕事はきちんとしている。
顔立ちは整っていて、パート仲間の間でも評判が良い。

服やバッグをプレゼントしたり、
食事やお茶を何度もご馳走しているのに、なかなかそういう関係には進展しない。
一回り上の、30代女は、嫌なのだろうか…
私はいつでもOKな状態にボディーを整えているのに残念でならない。

今日こそ…こちらから誘ってみようか…

夫が不倫したくらいだ… 
仮に私がこの子とどうなったって、たとえ…バレたところで…
夫に私を責める権利などない。

責められたら、ただ一言、言えばいい…
たった一言二言で、済む。

『あなたが先に私を裏切った。なのにあなたが、同じことをした私を責められるの?』

夫婦間においての不倫は先にした方が負けなのだ… 
夫は何も気付いていないようだが、私は労せずして、最高の免罪符を得た…

内容証明が届いた後から、
夏木からの慰謝料の支払いは、私の口座に順調になされている。

分割ではあるが、毎月結構な額が振り込まれる。
毎月の臨時収入…小遣いがもらえているようなもので、嬉しい気持ちになる。

夫には、ああ言ったものの、実はお金の出所などどうでも良かった。

とにかく家計から出ていなければそれで良かった。
たとえ、旦那の溜め込んだへそくりが夏木に流れ、そこから私に支払われていたとしても、家の財布に影響がなければ、私は全く構わない。

なにせ、300万円の大金だ。

仕事をしているとはいえ、20代の小娘に簡単に支払える額ではない。
きっと夫が絡んでいるのだろう…

だがもはやどうでもいい…。

「ねえ、悟君…今日暇だったら仕事の後にお茶しない…?」
今日は攻めてみよう…ううん、今日こそは仕掛けてみよう。
お金ならある…彼が前に欲しがっていた上着も余裕で買ってあげられる…

「ああ、いいっすね、ちょっと腹も減ったんで俺、飯も食っちゃうかもです」

「決まりね…じゃあ、いつもの店で4時半に…」

「うい~~っす!」彼がウインクをしてくる。

夫にはない明るさ…軽い物言いになぜだかホッとする…
ないものねだりだろうかと思いながらも、
私ははやる気持ちを抑えて、鼻歌を歌いながら、売り場の陳列を続けた。














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