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ゴチ

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石元さんが選んだ店は、有名な高級焼肉店だった。

少なくとも、私は一度も行ったことがないほどのグレードの店。

…席に着いてメニューを広げる…

まあまあ…

いや、かなり高い…
少なくとも10代20代が気軽に入れるお店ではないことは確かだ。 

「や~~田中さん…今日のファッションすごく素敵です。なんだか会社と全然雰囲気、違いますよね…」
「ほんとほんと~お姉さん、俺らよりいくつも年上とは思えないっすよ…や~~マジ、ヤバいっすね…大人のお姉さんの魅力、ダダ洩れっすよ…」
「いえいえ、全然ですよ…若さには勝てませんって…」

石元さんと…その友人らしきギャラリーの、あまりに軽々しい言葉を受け流し、私は早く時間が過ぎ去ることを祈る。

なんだ、この会食は… 全く、楽しくない…
当然ながら彼らの内輪の話には入っていけず、
私は適当に相槌を打ちながら、なんとかその場をやり過ごした。

それから耐え忍ぶこと、2時間、弱…
店を出る時には、既に10時近くになっていた…。
こんなはずじゃなかった…  
石元さんと素敵な店でゆっくり話をしながら、大人同士で食事ができると思っていたのに… 

結果、お会計は16万8千円…  一人あたり、二万くらい…? 
なかなかな額だ… 

私が時々行く食べ放題の焼肉店とは、わけが違う…
まあ、今の私なら全然、許容範囲内だ…
支払いは取り急ぎ、クレジットで済ませた。

「すみません、お姉さん!今日は乱入して申し訳なかったです…ご馳走様です…ホントいつか必ずお返ししますから…!」「美奈さん、おやすみなさい…!ゴチになりました~!!」

口々に言う若者たちの言葉をもちろん信じる私ではない… 
大体いつか必ず返すって、いつ…
連絡先も聞こうともしないくせに、どうやって…

不意に笑いたくなるが、なんとか答える。

「いえいえそんな…気にしないでください。」

会計なんて、一ミリも気にしてないだろと内心思いながらも、口から勝手に出てしまう社交辞令。

「じゃあ…おまえら!またな~」
石元さんが陽気に彼らに手を振る。

「じゃあ、行きましょうか、田中さん…」

「はい… 」って、どこへ… ? 駅… ?喫茶店… ?それとも…

私は長身の石元さんをゆっくりと見上げた。



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