【完結(番外編)】ほかに相手がいるのに

もえこ

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〜二人〜

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「おはよう、水無月さん」

「あ…おはよう、ございます。」

朝、給湯室で背後から…
もはや、間違えようのない…愛しい…彼の、優しい声がした。

振り返ると、彼の眼差しが瞬時に私をとらえる。

「… あ…あの… 」

「… ん…?」
不思議そうな彼の瞳の中に、私は即座に包み込まれる。

駄目だ… 
何も、言葉が出てこない…。

確かに今…目が合った…のに… 
真っすぐ彼を…見つめ返すことが出来ない…。

私は反射的に、視線を自身の持つマグカップに移す。

心臓がバクバクと鳴っている気がする…

どうして私は、いまだに… 
こんなにも… 彼を…
杉崎さんを前にすると、緊張してしまうのか…

こんな素っ気ない態度を取りたいわけではないのに…なぜだか、恥ずかしくて仕方ない…。

「…あ…すみません、退きますね…もう少し、で…」

「おっと、…退かなくていいよ、ちょっと奥に行ってもらえれば…ね…?」

「えっ …あっ …杉… …っ…」

給湯室の入口の、右奥…

壁で全く見えない場所に、杉崎さんが私を指で、そっと追いやる…。
給湯室の機械本体の目の前…入口からは、そこに誰がいたとしても全く見えない場所だ…。

そんなことを職場でされたことのない私は、
いつにも増して驚いて思わず声を上げてしまう…

「あ… あの… 杉崎さん…っ…、人が… …」

「…大丈夫…まだ、誰も来ていない…俺も珈琲淹れるから…しばらく、そこにいて…」

甘く…囁くような声が、私の耳をくすぐる。

杉崎さんが悪戯っ子のような顔で笑いながら、珈琲を淹れる作業を隣で盗み見る…。

もう…無理だ…

なんて、綺麗な横顔で…
なんて、魅力的な人なんだろう…。

なんでこんな人が…こんな素敵な人が…
私を…?
私みたいに何のとりえもない人間を、好きに…
好きになって…くれたんだろう…

もはや、感謝しかない… 

そう…  まるで、夢…  夢のよう…  

考えている最中に、
杉崎さんがとても小さな声でつぶやいた…。




~お知らせ~

こちらのお話は、既に完結済の小説「ほかに相手がいるのに」の、本編、続編に続く3作目となります。
よろしければまずそちらをご覧いただけると嬉しいです。


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