【完結】ダメなのはわかってる、それでも。

もえこ

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理性と本能

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その日、帰宅して間もなく、
克之からのラインが届いた。

鼓動が早くなるのをなんとか抑えて、ラインを開く。

「今日はお疲れ様でした。久々に話ができて、あと岡田さんの近況も聞くことができて、楽しかったです。
本音を言うと、あのまま岡田さんと一緒にいると、自分が何かしてしまいそうで、本当にヤバいと思っていました…。
結局、色々と聞けなかったのは残念ですが、やはりこれで良かったんだと思います。岡田さんがやはり、ご主人を好きなことがわかったし、それを聞いて僕は安心してしまいました。
岡田さんの気持ちも安定しているようだし、これからはもう、あまり連絡をしないようにしますね、今まで本当に、ありがとうございました。」

克之が、私から…離れようとしている。

これは、別れのあいさつだ。
私が返事をしたら、二度と克之の方から連絡がくることはないだろう。
私はそう、確信した。
 
克之の判断は、とても賢明だ。

完全に割り切った身体の付き合いだけを求めるような遊び目的とわかる男ならまだしも、克之のようなあまり器用にはみえない真面目なタイプの男が、夫がいる私のような女に近づいても、良いことなんて一つもないだろう。

しかも、私は決して若くない。

克之ほどの男であれば、まだいくつも若い歳下の魅力的な女性と、普通に付き合うこともできるはずだ。

そしてつい今しがた私に浮かんだ、克之から離れてくれれば…という卑怯な考えを、まるで私の心を読んだかのように、このタイミングで克之が実践して、提示してくれている。

 私の脳の、理性的な部分が、
     わたしにすぐさま、指令を出す。
     
    …今すぐ彼と、離れなさい
      あなたのために…
     そして、克之の、未来のために…

そうすれば、このもどかしくて切ない気持ちから解放され、わたしは今までどおり、人に恥じることなく、正しい道を、真っ直ぐに歩むことができる。

…今から、私のなかに存在する理性を総動員して克之に別れを告げるのだ…
ありがとう、そして、さようならと…
私は自分自身に向けて、精一杯、訴えた。

だが、この後わたしは、それとは真逆の行動に出る。
時は既に遅く、自分自身の本能的な感情を、理性で押さえ付けることができなくなっていた。

      私は完全に、壊れた。

克之が私に差し出してくれた、
 この時はまだ戻ることができた最後の橋を…
  自らの手で、自らの意思で、破壊した。

     私は自分自身に、敗北した。
  わたしはそう感じ、ゆっくり目を閉じた。

   私の今の気持ちを、彼に正直に伝える。
    それしか、私にできることはない。

   わたしは意を決して、携帯を手にした。

                 
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