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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗
第8話:党最高幹部の願い!? 闇を纏うシーの覚悟
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「中で話そう、オウを連れてこい」
シーは、コテージを指し言った。そして、自分はすたすたと中に入って行った。
テイも思力で拘束したオウを連れてコテージに向かった。
オウは、シーの登場に圧倒されたのか、抵抗なく従っている。
(チャンスだ……!)
シーの登場によって、テイも俺の存在など忘れたのであろう。
こんな非現実的な支配者クラスの面倒事に巻き込まれたくない。
俺はそっとフェードアウト出来るよう後退りしながら存在を消そうとした。
「お前も中に入るのだ、とっととしろ!」
「ハイ!も、申し訳ありません。失礼しました」
俺の期待虚しく、テイはにらめつけながら俺にそう指図した。
克樹からすると娘とたいして年齢はかわらないくらいなのに、俺は完全にビビりながら、テイの後ろをついて中に入った。
コテージの中は、外国風の中に華の国のテイストが少し交じっている内装であった。
奥の方にも何部屋かあり、二階もあるようであった。
入り口はリビングとつながっており、リビングには深いソファーがローテーブルを挟んで向かい合って置いてあった。
シーはその奥側に座っている。
捜査の痕跡がないので、英聖国人が死んでいたのは、別の部屋なのであろう。
テイはシーとは向かいのソファーにオウを座らせて、自分はシーのそばに立った。
俺は、できるだけ巻き込まれないよう、リビングの入り口近くに直立不動の姿勢で立った。角度的にはオウの表情はかろうじて見えない。
「さて、オウよ……」
シーは相変わらず無機質に、しかし、この世の声とは思えないくらいきれいな声で話始めた。
「手荒なマネしてすまないな。ただそれは、お主も同じだがな」
声も顔を無機質なので、冗談なのか、ただの事実を言っているのかわからない。
「手短にしよう。オウよ、この事件、明らかにせよ。揉み消すな」
オウの表情はこちらから見えないが、オウは顔を上げてシーを見た。
「シー……様。それは……」
オウはかろうじてシーに様をつけて話したがすぐに口をつぐんだ。
「そうだ、ボアではな中央側につけということだ」
オウが何を言いたかったのか分かっているかのように、シーは言った。そして、続けた。
「ボアはやり過ぎた。中央にはその手腕を評価するものもいるがな。犯罪集団撲滅の倒黒運動と称して、自分の意にそぐわないものたちの不当逮捕。さらには財産を没収して、自分の懐に入れているだろう。何より、人民を煽り、一部が徒党を組だし、党の制御も効かなくなっている」
シーは、そう静かに告げた。
ボアは、ツバキ市の党支部トップである書記長だ。
この国では、党が各市を治める。
市長は別にいるが、党が市長を任命し、様々な政策の実行を指示するので、支配権は党にある。
ボアはこの市の党支部トップとして君臨していた。
市と言ってもツバキ市は、華の国に四つしかない直轄市の一つで、指折りの大都市だ。
独自の武力組織も持ち、それが武装警官で、オウがそのトップも兼任していた。
そのため、ボアと、オウは二人三脚のような形で汚職と犯罪と戦っていた。
犯罪と汚職の摘発のおかけで、ツバキ市民の党への忠誠は他の市よりも高く、ボアの手腕は、中央でも認められていた。
次の中央政治局常務委員に入るというのが、華の国全体の既定路線になっていた。
今の華の国では、中央政治局常務委員序列六位のシーよりも、ボアの方が存在感も知名度も圧倒的に上だ。
ただ、ここ最近は、シーの言う通り、ボアは、汚職と犯罪から市を救った英雄ではなく、暴虐武人に市を支配する独裁者の面も出ていた。
「…………」
オウは黙り続け返答をしない。
「オウよ、お主は、腐敗と犯罪を心底憎み、どの市にいようと最前線で腐敗と戦ってきた。そんなお主が、今の腐敗が蔓延した中央を拒否するのもわかる」
シーは無機質な目線をまっすぐオウにぶつけていた。
「しかし、ボアの手段は華の国に蔓延する汚職そのものを体現したようなやり方だ。そんなやつが中央に入ったらどうなる?
私が党のトップになったら、党のレガシーも長老も関係なく完膚なまでに腐敗を叩き潰す。そのためにはボアの中央入りは絶対に避けなければならない」
無機質な表情と裏腹に、瞳の奥は闇の炎が燃え盛っているようであった。シーの体に闇の霧が、纏い出した。
「……血統以外、実績も実力もないあなたが?」
ここにきてオウは嘲笑うかのように言い放った。
「オウ!貴様!!し、失礼だぞ!」
テイがヒステリックに叫び、オウに迫ろうとしたが、シーがそれを手の合図で止めた。
「そうだ、オウよ。わたしには何もない。党に流れる革命の血統以外にはな。だから、しがらみもなく、党の理想を実現するためだけに邁進できる」
ここでシーは、軽くスーと息を静かに吸った。
「頼む、オウよ。私に力を貸してくれ」
シーはそう言って頭を下げた。
これは驚きであった。
メンツが何よりも優先する華の国において、党のトップレベルが、活躍しているとは言え、たかだか市の公安トップに頭を下げるとは。
場合が場合なら、これだけで中央政治局常務委員を解任されてもおかしくない。
それだけ華の国でのヒエラルキーとメンツは重要なのだ。
隣に立つテイも唖然としている。
このやり方は、華の国では、逆効果だ。
先程の思闘での勝利を帳消しにしかねない。
思闘は、心理的要因が大きく影響する。
シーが頭を下げたことによって、オウの敗北感がなくなり思力が復活する可能性もある。
「!?」
シーが顔を上げたと同時にオウが狼狽えるよう体を動かした。
顔を上げたシーのその瞳は、深淵の闇よりもさらに深い闇が広がっていた。
覚悟の闇だ。尋常ではないほどの覚悟。
思力的な強さは感じないが、それとはまったく別の強さに呑まれそうになる。
遠目で見てる俺でさえ感じるプレッシャー。
真っ正面から受け止めているオウへのプレッシャーは、計り知れない。
バタッ
横で立っていたテイは腰を抜かしたかのようにその場に座り込んで震え出した。
俺も気付いたときに片ひざをついてしまっていた。
これが現フラワーナイン序列六位、そして、次期序列一位候補筆頭であるシーの力なのか。
シーは、コテージを指し言った。そして、自分はすたすたと中に入って行った。
テイも思力で拘束したオウを連れてコテージに向かった。
オウは、シーの登場に圧倒されたのか、抵抗なく従っている。
(チャンスだ……!)
シーの登場によって、テイも俺の存在など忘れたのであろう。
こんな非現実的な支配者クラスの面倒事に巻き込まれたくない。
俺はそっとフェードアウト出来るよう後退りしながら存在を消そうとした。
「お前も中に入るのだ、とっととしろ!」
「ハイ!も、申し訳ありません。失礼しました」
俺の期待虚しく、テイはにらめつけながら俺にそう指図した。
克樹からすると娘とたいして年齢はかわらないくらいなのに、俺は完全にビビりながら、テイの後ろをついて中に入った。
コテージの中は、外国風の中に華の国のテイストが少し交じっている内装であった。
奥の方にも何部屋かあり、二階もあるようであった。
入り口はリビングとつながっており、リビングには深いソファーがローテーブルを挟んで向かい合って置いてあった。
シーはその奥側に座っている。
捜査の痕跡がないので、英聖国人が死んでいたのは、別の部屋なのであろう。
テイはシーとは向かいのソファーにオウを座らせて、自分はシーのそばに立った。
俺は、できるだけ巻き込まれないよう、リビングの入り口近くに直立不動の姿勢で立った。角度的にはオウの表情はかろうじて見えない。
「さて、オウよ……」
シーは相変わらず無機質に、しかし、この世の声とは思えないくらいきれいな声で話始めた。
「手荒なマネしてすまないな。ただそれは、お主も同じだがな」
声も顔を無機質なので、冗談なのか、ただの事実を言っているのかわからない。
「手短にしよう。オウよ、この事件、明らかにせよ。揉み消すな」
オウの表情はこちらから見えないが、オウは顔を上げてシーを見た。
「シー……様。それは……」
オウはかろうじてシーに様をつけて話したがすぐに口をつぐんだ。
「そうだ、ボアではな中央側につけということだ」
オウが何を言いたかったのか分かっているかのように、シーは言った。そして、続けた。
「ボアはやり過ぎた。中央にはその手腕を評価するものもいるがな。犯罪集団撲滅の倒黒運動と称して、自分の意にそぐわないものたちの不当逮捕。さらには財産を没収して、自分の懐に入れているだろう。何より、人民を煽り、一部が徒党を組だし、党の制御も効かなくなっている」
シーは、そう静かに告げた。
ボアは、ツバキ市の党支部トップである書記長だ。
この国では、党が各市を治める。
市長は別にいるが、党が市長を任命し、様々な政策の実行を指示するので、支配権は党にある。
ボアはこの市の党支部トップとして君臨していた。
市と言ってもツバキ市は、華の国に四つしかない直轄市の一つで、指折りの大都市だ。
独自の武力組織も持ち、それが武装警官で、オウがそのトップも兼任していた。
そのため、ボアと、オウは二人三脚のような形で汚職と犯罪と戦っていた。
犯罪と汚職の摘発のおかけで、ツバキ市民の党への忠誠は他の市よりも高く、ボアの手腕は、中央でも認められていた。
次の中央政治局常務委員に入るというのが、華の国全体の既定路線になっていた。
今の華の国では、中央政治局常務委員序列六位のシーよりも、ボアの方が存在感も知名度も圧倒的に上だ。
ただ、ここ最近は、シーの言う通り、ボアは、汚職と犯罪から市を救った英雄ではなく、暴虐武人に市を支配する独裁者の面も出ていた。
「…………」
オウは黙り続け返答をしない。
「オウよ、お主は、腐敗と犯罪を心底憎み、どの市にいようと最前線で腐敗と戦ってきた。そんなお主が、今の腐敗が蔓延した中央を拒否するのもわかる」
シーは無機質な目線をまっすぐオウにぶつけていた。
「しかし、ボアの手段は華の国に蔓延する汚職そのものを体現したようなやり方だ。そんなやつが中央に入ったらどうなる?
私が党のトップになったら、党のレガシーも長老も関係なく完膚なまでに腐敗を叩き潰す。そのためにはボアの中央入りは絶対に避けなければならない」
無機質な表情と裏腹に、瞳の奥は闇の炎が燃え盛っているようであった。シーの体に闇の霧が、纏い出した。
「……血統以外、実績も実力もないあなたが?」
ここにきてオウは嘲笑うかのように言い放った。
「オウ!貴様!!し、失礼だぞ!」
テイがヒステリックに叫び、オウに迫ろうとしたが、シーがそれを手の合図で止めた。
「そうだ、オウよ。わたしには何もない。党に流れる革命の血統以外にはな。だから、しがらみもなく、党の理想を実現するためだけに邁進できる」
ここでシーは、軽くスーと息を静かに吸った。
「頼む、オウよ。私に力を貸してくれ」
シーはそう言って頭を下げた。
これは驚きであった。
メンツが何よりも優先する華の国において、党のトップレベルが、活躍しているとは言え、たかだか市の公安トップに頭を下げるとは。
場合が場合なら、これだけで中央政治局常務委員を解任されてもおかしくない。
それだけ華の国でのヒエラルキーとメンツは重要なのだ。
隣に立つテイも唖然としている。
このやり方は、華の国では、逆効果だ。
先程の思闘での勝利を帳消しにしかねない。
思闘は、心理的要因が大きく影響する。
シーが頭を下げたことによって、オウの敗北感がなくなり思力が復活する可能性もある。
「!?」
シーが顔を上げたと同時にオウが狼狽えるよう体を動かした。
顔を上げたシーのその瞳は、深淵の闇よりもさらに深い闇が広がっていた。
覚悟の闇だ。尋常ではないほどの覚悟。
思力的な強さは感じないが、それとはまったく別の強さに呑まれそうになる。
遠目で見てる俺でさえ感じるプレッシャー。
真っ正面から受け止めているオウへのプレッシャーは、計り知れない。
バタッ
横で立っていたテイは腰を抜かしたかのようにその場に座り込んで震え出した。
俺も気付いたときに片ひざをついてしまっていた。
これが現フラワーナイン序列六位、そして、次期序列一位候補筆頭であるシーの力なのか。
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