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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗
第24話:美女からの指導!? オウとのタイマン訓練
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実際には、数分も経っていなかったであろう……。
しかし、二人のあまりにも早い攻防は、時間の感覚を狂わせるほどであった。
テイの繰り出した突きを交わすとオウはテイの腕を絡めとり、そのままテイを投げ飛ばした。投げられたテイは空中で体勢を整えて辛うじて着地をとった。
「さすが、中央のエリート。近接格闘もお手のものだ。私の部下でもここまでできるのは、数名もいないな」
オウは不適な笑みでテイを見た。基本オウは好戦的だ。
「ありがとうございます。ただ、常に最前線で、戦っているオウ様の足元にも及ばないですわ」
テイは少し息を切らしそう答えた。そして、構えを解いた。訓練は終わりということだ。
「ほんとは前みたいに思力様式ありで、戦いたいがな」
「それはご勘弁を。私は手も足も出ませんでしたわ」
「そう、謙遜するな。あんな戦いはそうそう出来ない。私もなかなか危なかったぞ」
「ありがたいお言葉です。これからも、国と党のために精進に勤めます」
テイはそう言ってオウに礼をした。
「さて、その戦いで大活躍したルー君。このニヶ月の成果はどうかな」
オウは今度は俺に不適な笑みを向けてきた。
「まだまだですわ。まあ、男の割にはまあまあにはなりましたが」
俺の代わりにテイが答えた。
「そうか。……よし、私が少し稽古をつけてやろう。ルーも私の部下だしな」
「そんな。それはオウ様、無駄というものですよ。私たちとは、レベルが何段階も違いますわ」
「そ、そうです。テイ様に訓練はしていただいてますが、まだまだです」
「うむ、そうだな、では、こうしよう。ルーよ。お前は思力様式を使っていいぞ。それで、一発私に入れれば、そうだな、特別ボーナスでもやるか」
そう言ってオウは豪快に笑った。
(オウは、俺を試しているのか、それともやっぱりあのときの件、根に持っているのか……)
「そ、それでは、ぜひよろしくお願いいたします。オウ様に稽古をつけていただくなんてこの上ない喜びであります」
俺は、意を決して、稽古の舞台に上がった。
途中テイとすれ違ったが、テイはなんとも言えない呆れた視線を俺に向けてきた。
「そ、それでは、お願いいたします」
そう言って 俺は、オウと向かいあった。
オウは腰に手を当ててただ、立っている。少し面白そうな笑みを浮かべて。
(思力様式を使ってもいい。それはオウにとって俺の思力様式など取るに足らないということか……)
そう。俺の貧弱な思力は、もはや思力様式と呼べるほどではない。
オウでなくとも支配者クラスなら、思力様式|《スタイル》を出して身を守るほどでもないのだろう。
つまり、オウに対して思力様式を使っても何もならないのだ。
(それでも、一泡ふかせるには……)
近接格闘でも、俺は、テイの十分の一のスピードも出せない。
本当に大人と子供以上の差があるのだ。
それでも、なんとか工夫してオウに一発入れる。
思力も格闘もオウに対しては手も足もでない。
(それなら!!)
俺は、ある作戦を思い付いた。そして、構えを取った。
「ほう、覚悟が決まったか」
オウは相変わらず仁王立ちで笑みを浮かべている。
(思力様式をオウに向けても無駄。近接格闘で手数を増やしてもむ無駄だ。なら、一発勝負だ)
意を決して、俺は、オウに向かって走り出した。
俺は、自分が思力によって出せる最高のスピード出した。
オウはまだ構えを取っていない。俺の最高のスピードなど簡単に避けられるのだ。
オウの間合いに入る刹那、俺は、二つの現象を思力で再現した。
ひとつは俺の足の裏に、摩擦係数が最大値になるイメージをつけた。
これで俺は、最高速度から一転、完全に静止することになる。
同時に、オウと俺の間に霧の壁を作り、光の屈折率を変えた。
オウから見れば、俺は、まだオウに向かっているように見えるはずだ。
俺は、掌底をオウの顔に向かって出した。正確には、幻の俺の掌底を避けようとしていオウの顔に向かって。
(入る!)
女性の顔を殴ってしまう。その事に飛田克樹としての俺は、胸が痛み、ルーとしての俺は、恐怖心をいだいた。
それでも、あのオウに一発入れるのだ。
強大な力を持つ者に。
歓喜か、恐怖か、罪悪感か。複雑な感情が渦巻きながら、俺は、腕を伸ばした。
次の瞬間、オウの顔に向かって伸ばした右腕に猛烈な痛みが襲ってきた。まるで分厚いコンクリートをなぐったような。
そして、壁にぶつけたボールのように俺は、体全身ごと跳ね返された。
「ん、当たったのか……」
オウは、何も起こってないかのようにそう呟いた。
俺は、右腕の痛みを堪えるため、地面をのたうち回った。
「だから言ったのですよ、無駄ですと」
「うむ、ま、しかし、私はまたこやつに一本取られたという分けか。ハハハハ、やはりルーは面白い男だ」
笑いながらオウは地面に寝転んでいる俺に近づいてきた。
「大丈夫か。拳でなく、掌底でよかったな。拳だったら、砕けて重症だったな」
そう言いながらオウは俺を起こした。
「あ、ありがとうございます」
まだ、右腕全体が痺れて、まともに立っていられないが、なんとかオウにそう礼を言った。
「思力は精神力の戦いだからな。あまり小細工は意味ないのだか。持たざるものの工夫で、強者に立ち向かうのはなかなかよい姿勢だ。その勢いで、ボアにも一泡吹かせてくれ。ダハハハ」
俺の肩を何度も叩きながらオウはそう豪快に笑った。
「特別ボーナスは、そうだな、色々と済んだら、私の行きつけに連れていこう。テイも、中央に戻る前にそのくらい付き合えるだろう」
「はい、もちろんです。ありがたいお誘いです。楽しみにしております」
「あ、ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします」
ニヶ月前の始めて会ったときには想像出来ないくらい和やかな空気になった。
オウは元々の性格が公正なんだろう。
誰に対しても同じような態度だ。
決してエリート街道を歩んでいるわけでない。
しかし、最前線の現場で常に体を張って正義に努める。
そんなオウの偉大さと力強さを改めて俺は、感じた。
『緊急!!緊急警報!』
そんな雰囲気をぶち壊すように突然アラートが部屋中に鳴り響いた。
『市中央で、重大思獣災害発生!武装警官は直ちに現場に急行せよ。繰り返す、巨大な思獣が発生。場所は市庁舎近くの金融ビル』
警報を聞いた瞬間、オウとテイの表情、これまでにないくらい険しくなった。
「テイ、付いてこい! ルーは他の者と共に現場に行き、民間人の救助をしろ」
オウは怒鳴るように指示を出すとそのまま、窓から飛び出て行った。
しかし、二人のあまりにも早い攻防は、時間の感覚を狂わせるほどであった。
テイの繰り出した突きを交わすとオウはテイの腕を絡めとり、そのままテイを投げ飛ばした。投げられたテイは空中で体勢を整えて辛うじて着地をとった。
「さすが、中央のエリート。近接格闘もお手のものだ。私の部下でもここまでできるのは、数名もいないな」
オウは不適な笑みでテイを見た。基本オウは好戦的だ。
「ありがとうございます。ただ、常に最前線で、戦っているオウ様の足元にも及ばないですわ」
テイは少し息を切らしそう答えた。そして、構えを解いた。訓練は終わりということだ。
「ほんとは前みたいに思力様式ありで、戦いたいがな」
「それはご勘弁を。私は手も足も出ませんでしたわ」
「そう、謙遜するな。あんな戦いはそうそう出来ない。私もなかなか危なかったぞ」
「ありがたいお言葉です。これからも、国と党のために精進に勤めます」
テイはそう言ってオウに礼をした。
「さて、その戦いで大活躍したルー君。このニヶ月の成果はどうかな」
オウは今度は俺に不適な笑みを向けてきた。
「まだまだですわ。まあ、男の割にはまあまあにはなりましたが」
俺の代わりにテイが答えた。
「そうか。……よし、私が少し稽古をつけてやろう。ルーも私の部下だしな」
「そんな。それはオウ様、無駄というものですよ。私たちとは、レベルが何段階も違いますわ」
「そ、そうです。テイ様に訓練はしていただいてますが、まだまだです」
「うむ、そうだな、では、こうしよう。ルーよ。お前は思力様式を使っていいぞ。それで、一発私に入れれば、そうだな、特別ボーナスでもやるか」
そう言ってオウは豪快に笑った。
(オウは、俺を試しているのか、それともやっぱりあのときの件、根に持っているのか……)
「そ、それでは、ぜひよろしくお願いいたします。オウ様に稽古をつけていただくなんてこの上ない喜びであります」
俺は、意を決して、稽古の舞台に上がった。
途中テイとすれ違ったが、テイはなんとも言えない呆れた視線を俺に向けてきた。
「そ、それでは、お願いいたします」
そう言って 俺は、オウと向かいあった。
オウは腰に手を当ててただ、立っている。少し面白そうな笑みを浮かべて。
(思力様式を使ってもいい。それはオウにとって俺の思力様式など取るに足らないということか……)
そう。俺の貧弱な思力は、もはや思力様式と呼べるほどではない。
オウでなくとも支配者クラスなら、思力様式|《スタイル》を出して身を守るほどでもないのだろう。
つまり、オウに対して思力様式を使っても何もならないのだ。
(それでも、一泡ふかせるには……)
近接格闘でも、俺は、テイの十分の一のスピードも出せない。
本当に大人と子供以上の差があるのだ。
それでも、なんとか工夫してオウに一発入れる。
思力も格闘もオウに対しては手も足もでない。
(それなら!!)
俺は、ある作戦を思い付いた。そして、構えを取った。
「ほう、覚悟が決まったか」
オウは相変わらず仁王立ちで笑みを浮かべている。
(思力様式をオウに向けても無駄。近接格闘で手数を増やしてもむ無駄だ。なら、一発勝負だ)
意を決して、俺は、オウに向かって走り出した。
俺は、自分が思力によって出せる最高のスピード出した。
オウはまだ構えを取っていない。俺の最高のスピードなど簡単に避けられるのだ。
オウの間合いに入る刹那、俺は、二つの現象を思力で再現した。
ひとつは俺の足の裏に、摩擦係数が最大値になるイメージをつけた。
これで俺は、最高速度から一転、完全に静止することになる。
同時に、オウと俺の間に霧の壁を作り、光の屈折率を変えた。
オウから見れば、俺は、まだオウに向かっているように見えるはずだ。
俺は、掌底をオウの顔に向かって出した。正確には、幻の俺の掌底を避けようとしていオウの顔に向かって。
(入る!)
女性の顔を殴ってしまう。その事に飛田克樹としての俺は、胸が痛み、ルーとしての俺は、恐怖心をいだいた。
それでも、あのオウに一発入れるのだ。
強大な力を持つ者に。
歓喜か、恐怖か、罪悪感か。複雑な感情が渦巻きながら、俺は、腕を伸ばした。
次の瞬間、オウの顔に向かって伸ばした右腕に猛烈な痛みが襲ってきた。まるで分厚いコンクリートをなぐったような。
そして、壁にぶつけたボールのように俺は、体全身ごと跳ね返された。
「ん、当たったのか……」
オウは、何も起こってないかのようにそう呟いた。
俺は、右腕の痛みを堪えるため、地面をのたうち回った。
「だから言ったのですよ、無駄ですと」
「うむ、ま、しかし、私はまたこやつに一本取られたという分けか。ハハハハ、やはりルーは面白い男だ」
笑いながらオウは地面に寝転んでいる俺に近づいてきた。
「大丈夫か。拳でなく、掌底でよかったな。拳だったら、砕けて重症だったな」
そう言いながらオウは俺を起こした。
「あ、ありがとうございます」
まだ、右腕全体が痺れて、まともに立っていられないが、なんとかオウにそう礼を言った。
「思力は精神力の戦いだからな。あまり小細工は意味ないのだか。持たざるものの工夫で、強者に立ち向かうのはなかなかよい姿勢だ。その勢いで、ボアにも一泡吹かせてくれ。ダハハハ」
俺の肩を何度も叩きながらオウはそう豪快に笑った。
「特別ボーナスは、そうだな、色々と済んだら、私の行きつけに連れていこう。テイも、中央に戻る前にそのくらい付き合えるだろう」
「はい、もちろんです。ありがたいお誘いです。楽しみにしております」
「あ、ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします」
ニヶ月前の始めて会ったときには想像出来ないくらい和やかな空気になった。
オウは元々の性格が公正なんだろう。
誰に対しても同じような態度だ。
決してエリート街道を歩んでいるわけでない。
しかし、最前線の現場で常に体を張って正義に努める。
そんなオウの偉大さと力強さを改めて俺は、感じた。
『緊急!!緊急警報!』
そんな雰囲気をぶち壊すように突然アラートが部屋中に鳴り響いた。
『市中央で、重大思獣災害発生!武装警官は直ちに現場に急行せよ。繰り返す、巨大な思獣が発生。場所は市庁舎近くの金融ビル』
警報を聞いた瞬間、オウとテイの表情、これまでにないくらい険しくなった。
「テイ、付いてこい! ルーは他の者と共に現場に行き、民間人の救助をしろ」
オウは怒鳴るように指示を出すとそのまま、窓から飛び出て行った。
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