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序章
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ずずっ、ずずずずず、ずる、
布袋を引きずるような物音がする。
人か、獣か、
姿は一切判別できない。
現時刻が、真夜中である事もあるが、今宵は新月。
そんな状況で出歩く人間は余程酔狂であろう。
ずずず、ず、ず、ず、ず
徐々に小刻みになり、
はっ、はあ、はあはあ、は、はっ
人間のものである呼吸音も連動して聞こえるようになる。
まるで何かから逃れるように。
「だ、誰か、誰かた、助けてくれええ!誰か・・・」
静寂の中、息も絶え絶えにその人間は助けを求める。
だが、その声も虚しく闇夜に吸い込まれていく。
唯一その声に応える者が
「残念、あなたを助ける人間は居ない。」
そう無情にも告げる。
「あ、ああ、あ、お、お願いだ、い、い、命だけは、命だけは助けてくれ・・!」
息も絶え絶えになりながら、懇願する男は更に続ける。
「よう、やく、商売が軌道に、乗った所、なんだ。これから、、、金も、入ってきて、やっと、や、、っと
惨めな、暮らしから、解放、、されると、、、ふっ、、、」
徐々に嗚咽が混じりながら、絞り出す言葉に意も介さずというように
「あなたを助ける人間は居ないと、先程告げた通り、あなたを助けるつもりは無いよ?あなたの事情は私には関係のない事。私はただ回収するだけ。」
「か、回収、、、?」
淡々と話すその者の言葉を理解できずに、疑問符として反芻するしかない男。
「そう、回収。だから、私は私の仕事をするだけだ、よっ!!」
ひゅっ、とっ。
暗闇だけれども、灯りのように光る長いそれは回収、と告げた者が命乞いをする男に振り下ろし、
男の胸元で止まる。
「あ、、、え、、、、?」
何が起きたのか理解できない男は、自分の胸元とそこから伸びる棒状の刀の様な物と視線が行き来する。
刀であるならば、あの振り下ろした勢いで自分は脳天から両断されていただろう。
「ふふっ、斬られたと思った?でも斬られた方がましだったかもしれないね。」
振り下ろした者は微笑し、棒状のそれの持ち手部分に自分の唇を重ねる。
どうやら中心部は空洞の様で、すうっと水を吸い込む動作を取った瞬間、
「おお、お、お、、おご、おああああ、あああああ・・ああああ、や、やめ、あああ・・・」
男は呻いた。体の内部から何かが吸い出されているかの感覚に陥る。生きたまま臓腑を掻き出されている
不快感と激しい痛み。痛い、痛い、痛い、叫びたくてももう声を発せる事も出来ない。
この苦しみの先には確実に死が訪れるであろう事が分かった。
眼前に見える何者かが何故自分をこのような目に合わせるのか、分からないまま意識が薄らいでいく。
「・・れも・・・・なん・・・」
何か聞こえたような気がするが、痛みが勝って脳に入ってこない。足の力が抜けて膝をつく。
「ああ・・・あ・・・・・・あ・・」
恐らく自分の中の何かが全て絞り取られたのであろう。
男は膝折の状態のまま地に伏す。わずかに指が握りこまれやがてそれも停止する。
男が死んだのを確認したその者は、まるで何も無かったかのように
「さてと、帰って寝るかな。」
そう一言だけ呟いて
ふと、闇夜に消えた。
布袋を引きずるような物音がする。
人か、獣か、
姿は一切判別できない。
現時刻が、真夜中である事もあるが、今宵は新月。
そんな状況で出歩く人間は余程酔狂であろう。
ずずず、ず、ず、ず、ず
徐々に小刻みになり、
はっ、はあ、はあはあ、は、はっ
人間のものである呼吸音も連動して聞こえるようになる。
まるで何かから逃れるように。
「だ、誰か、誰かた、助けてくれええ!誰か・・・」
静寂の中、息も絶え絶えにその人間は助けを求める。
だが、その声も虚しく闇夜に吸い込まれていく。
唯一その声に応える者が
「残念、あなたを助ける人間は居ない。」
そう無情にも告げる。
「あ、ああ、あ、お、お願いだ、い、い、命だけは、命だけは助けてくれ・・!」
息も絶え絶えになりながら、懇願する男は更に続ける。
「よう、やく、商売が軌道に、乗った所、なんだ。これから、、、金も、入ってきて、やっと、や、、っと
惨めな、暮らしから、解放、、されると、、、ふっ、、、」
徐々に嗚咽が混じりながら、絞り出す言葉に意も介さずというように
「あなたを助ける人間は居ないと、先程告げた通り、あなたを助けるつもりは無いよ?あなたの事情は私には関係のない事。私はただ回収するだけ。」
「か、回収、、、?」
淡々と話すその者の言葉を理解できずに、疑問符として反芻するしかない男。
「そう、回収。だから、私は私の仕事をするだけだ、よっ!!」
ひゅっ、とっ。
暗闇だけれども、灯りのように光る長いそれは回収、と告げた者が命乞いをする男に振り下ろし、
男の胸元で止まる。
「あ、、、え、、、、?」
何が起きたのか理解できない男は、自分の胸元とそこから伸びる棒状の刀の様な物と視線が行き来する。
刀であるならば、あの振り下ろした勢いで自分は脳天から両断されていただろう。
「ふふっ、斬られたと思った?でも斬られた方がましだったかもしれないね。」
振り下ろした者は微笑し、棒状のそれの持ち手部分に自分の唇を重ねる。
どうやら中心部は空洞の様で、すうっと水を吸い込む動作を取った瞬間、
「おお、お、お、、おご、おああああ、あああああ・・ああああ、や、やめ、あああ・・・」
男は呻いた。体の内部から何かが吸い出されているかの感覚に陥る。生きたまま臓腑を掻き出されている
不快感と激しい痛み。痛い、痛い、痛い、叫びたくてももう声を発せる事も出来ない。
この苦しみの先には確実に死が訪れるであろう事が分かった。
眼前に見える何者かが何故自分をこのような目に合わせるのか、分からないまま意識が薄らいでいく。
「・・れも・・・・なん・・・」
何か聞こえたような気がするが、痛みが勝って脳に入ってこない。足の力が抜けて膝をつく。
「ああ・・・あ・・・・・・あ・・」
恐らく自分の中の何かが全て絞り取られたのであろう。
男は膝折の状態のまま地に伏す。わずかに指が握りこまれやがてそれも停止する。
男が死んだのを確認したその者は、まるで何も無かったかのように
「さてと、帰って寝るかな。」
そう一言だけ呟いて
ふと、闇夜に消えた。
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