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6章
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「お義兄さま、分かっていないわね。姉さまの似合う色はこっちよ?」
「いいや、この色は絶対に似合う!」
シルヴィアを挟み、レイフォードとミシェルがシルヴィアの洋服を巡り、言い合いになっている。
ゴードンや仕立屋はその険悪な雰囲気に始終オロオロと動向を窺っていたが、
シルヴィアに至っては、
二人共とても仲良くなったのね!と
嬉しそうに二人の様子を笑顔で見ていた。
「シルヴィア、この色好きだって言っていたよな!?」
レイフォードはエメラルドグリーンの生地を手にシルヴィアに確認する。
「姉さまの好きな色はこの空色の生地の色よ?
全く憎らしいけれど、ソニアの髪の色が姉さまが一番好きなのよ。」
静かにミシェルが空気のように身を潜めていたソニアをチラリと見遣り言い放つ。
「・・・・!!緑も好きだって言っていた!
・・・・だよな?シルヴィア。」
レイフォードは幾分かショックを受ける。
一番好きな色がよりにもよって、ソニアの髪の色だったとは。
だが、自分の瞳の色である緑も好きだと言質は取っている。
それは事実だ。
「はい、緑も好きな色です。」
シルヴィアは微笑みながら頷く。
その返答にどうだ。と言わんばかりにミシェルを見るレイフォード。
ミシェルはふぅ、と溜め息を吐いて、レイフォードに諭すように伝える。
「確かに姉さまは緑も好きな色ですが、
その色の様に何処ぞの瞳の色ではなく、新緑など自然の緑を好んでいるのですよ?
ねえ、姉さま?」
「え、ええ。そうね。(何かしら?ミシェから圧力を感じる。)」
シルヴィアが否定を認めない程のミシェルの言葉に、思わず頷く。
「な・・・!?そんな・・・。」
自分の瞳の色で好きだと言ってくれたのでは無い・・・?
驚愕の事実に、レイフォードは更にショックを受けて、言葉を失う。
茫然自失のレイフォードにミシェルは追い討ちをかける。
「あら、まさか、ねぇ?
本気でそう思っていたのかしら?
だとしたら、本当に御目出度い性格でいらっしゃるわね。」
「くっ!」
反論する言葉も無いレイフォード。
それに構わずミシェルは話を進める。
「姉さま、この色にしましょう?
デザインはいつもの様に私に任せて貰っていいかしら?」
「そうね、綺麗な色だし。お願いしてもいい?」
「勿論よ。ドゥランさん、じゃあいつもの通りに屋敷で打ち合わせしましょう。」
「は、はい。畏まりました。」
淡々と決めていくミシェルは仕立屋に、そう指示する。
レイフォードはその様子に思わず、声を上げる。
「お、おい。勝手に話を進めるな!
というか、何故仕立屋の名を知っている!?」
「ドゥランさんは私が懇意にしている仕立屋さんの一人よ。」
事も無げにミシェルは言う。
「姉さまのあの深紅のドレスを仕立てたのも彼。
仕事が早くて丁寧なのよ。
お義兄さまも、あのドレス気に入っていたでしょう?」
揶揄う様にミシェルが口角を上げてレイフォードを見る。
「・・・・!な、あ、あのドレスだと!!」
レイフォードはあの扇情的な、だがシルヴィアに恐ろしく似合っていたあのドレス姿を思い出して、
赤面する。
それを見てミシェルは更にニヤリと笑う。
「あら?お気に召さなかったのかしら?姉さまのあのドレス?」
「え・・・。そうだったのですか?レイフォード様。」
シルヴィアが不安気な表情でレイフォードを見る。
(コイツ!!態とか!?)
ニヤニヤと楽しそうな表情のミシェルを見て、レイフォードは内心で舌打ちをする。
先にシルヴィアを安心させなければならないと考え、
シルヴィアの肩に手を置く。
「いや、あのドレス、シルヴィアに良く似合っていた。
本当だ。似合い過ぎて、(周りの男がシルヴィアに言い寄って来ないか)心配だった位だ。」
「そ、そうだったのですか?
でも、心配させてしまったという事は、やはりお気に召さなかった・・のでしょうか?」
レイフォードの小声の部分が上手く聞き取れなかったシルヴィアは、
何を心配したのか分からないが、レイフォードに気を使わせてしまった事の方が重要だった。
「違うぞ!似合っていると言っただろう?
だから、その・・・。」
シルヴィアは歯切れの悪いレイフォードの言葉に首を傾げる。
「その、二人だけの時に着て欲しい。」
顔を紅くしたままレイフォードは告げる。
見るのは俺だけで良い、そんな独占欲剥き出しの言葉を吐く。
これには、ミシェルが呆れたと半目でレイフォードを見るが、全く無視をしてシルヴィアを見つめる。
「夜会用のドレスを、ですか?
それは・・・、!!」
シルヴィアはパァっと顔が明るくなる。
「ダンスの練習をしてくださるのですか!?
まぁ!嬉しいです!
私、ダンスが苦手で夜会の時にお誘いを受けても、
お断りしていましたの。」
シルヴィアに対比するかのように顔が暗くなるレイフォード。
「・・・そうだな。」
(まぁ、分かっていたさ。)
ぷっと吹き出す声の後、クスクスと笑い出すミシェル。
「ふふふ。本当に学習されないお方ね。
哀れを通り越して面白くなってきたわ。」
ギロリとミシェルを睨むが、動じる事無くミシェルはドゥランに話しかける。
「さぁ、行きましょう、ドゥランさん。
姉さまの為に、3日で仕上げましょう。」
「は、はい。」
「じゃあ、姉さま、出来上がりを楽しみにしていてね。」
ミシェルとドゥランは屋敷を後にする。
「なぁ、シルヴィア。」
「はい、レイフォード様。」
レイフォードは少し間を置いてシルヴィアに声を掛ける。
「先程ダンスに誘われるって言っていたよな?」
「?はい。何人かの方がお声を掛けて下さったのですが、」
「因みに誰が声を掛けてきた?」
「え、ええと、確か・・・。」
まるで尋問の様にシルヴィアに問い質す。
シルヴィアを放っておいたのは自分であるのにも関わらず、
シルヴィアに近寄る男をどうしても許す事が出来ない。
「ファンブル侯爵家の御子息様と、
マクスウェル侯爵家の御子息様達と、
ええと、それから・・・。」
シルヴィアは記憶を辿りながら、指折り数える。
「あいつ等か・・・。」
自身の悪友達。
シルヴィアに声を掛けるのも頷ける。
釘を刺しておかねばなるまい、心の中で考える。
「後、畏れ多かったのですが王太子殿下も・・・。」
「殿下もか!?」
これにはレイフォードも声が大きくなった。
「は、はい。流石に殿下のお誘いを断る事は出来ませんでしたので、」
「・・・・踊ったのか・・・?」
声が低くなる。
自分の嫉妬深さに嫌気がさすレイフォード。
シルヴィアに対して怒っている訳では無いのに、すっかり委縮してしまったシルヴィアは無言で頷く。
「ほ、本当に殿下にはご無礼ばかりを働いてしまって・・・。」
肩を落とすシルヴィア。
「何回も殿下の足を踏んでしまって、気にしないで良いと笑っていらっしゃったのですが、
本当に何回も踏んでしまってダンスの後、ちゃんと謝罪しなければと思いました。」
話している内にシルヴィアがその事を思い出してか、ほんのり頬が赤く染まって行くのを見て、
レイフォードは腹の底が煮える釜の様に、
沸々と熱くなるのを感じた。
「殿下は本当にお優しい方で、無理に誘ってしまったのは自分なのだから謝るのは自分だと逆に謝られてしまって。」
「シルヴィア。」
もう、いいとシルヴィアの話を切る。
自分で話を振っておいて、他の男の話を聞くのが耐えれなかった。
「レイフォード様?」
目の前のこの鈍感な妻をどうしてくれよう。
「・・・ダンスの練習だったよな?」
「本当にしてくださるのですか!?」
「ああ、植物園から帰って来てから行うとしようか。」
「はい!!ありがとうございます!」
素直に喜ぶシルヴィア。
「ああ、厳しくするからな。覚悟しておけよ?」
「分かりました!頑張ります!!」
(本当に覚悟しておけよ。)
レイフォードは一人ほくそ笑んだ。
「いいや、この色は絶対に似合う!」
シルヴィアを挟み、レイフォードとミシェルがシルヴィアの洋服を巡り、言い合いになっている。
ゴードンや仕立屋はその険悪な雰囲気に始終オロオロと動向を窺っていたが、
シルヴィアに至っては、
二人共とても仲良くなったのね!と
嬉しそうに二人の様子を笑顔で見ていた。
「シルヴィア、この色好きだって言っていたよな!?」
レイフォードはエメラルドグリーンの生地を手にシルヴィアに確認する。
「姉さまの好きな色はこの空色の生地の色よ?
全く憎らしいけれど、ソニアの髪の色が姉さまが一番好きなのよ。」
静かにミシェルが空気のように身を潜めていたソニアをチラリと見遣り言い放つ。
「・・・・!!緑も好きだって言っていた!
・・・・だよな?シルヴィア。」
レイフォードは幾分かショックを受ける。
一番好きな色がよりにもよって、ソニアの髪の色だったとは。
だが、自分の瞳の色である緑も好きだと言質は取っている。
それは事実だ。
「はい、緑も好きな色です。」
シルヴィアは微笑みながら頷く。
その返答にどうだ。と言わんばかりにミシェルを見るレイフォード。
ミシェルはふぅ、と溜め息を吐いて、レイフォードに諭すように伝える。
「確かに姉さまは緑も好きな色ですが、
その色の様に何処ぞの瞳の色ではなく、新緑など自然の緑を好んでいるのですよ?
ねえ、姉さま?」
「え、ええ。そうね。(何かしら?ミシェから圧力を感じる。)」
シルヴィアが否定を認めない程のミシェルの言葉に、思わず頷く。
「な・・・!?そんな・・・。」
自分の瞳の色で好きだと言ってくれたのでは無い・・・?
驚愕の事実に、レイフォードは更にショックを受けて、言葉を失う。
茫然自失のレイフォードにミシェルは追い討ちをかける。
「あら、まさか、ねぇ?
本気でそう思っていたのかしら?
だとしたら、本当に御目出度い性格でいらっしゃるわね。」
「くっ!」
反論する言葉も無いレイフォード。
それに構わずミシェルは話を進める。
「姉さま、この色にしましょう?
デザインはいつもの様に私に任せて貰っていいかしら?」
「そうね、綺麗な色だし。お願いしてもいい?」
「勿論よ。ドゥランさん、じゃあいつもの通りに屋敷で打ち合わせしましょう。」
「は、はい。畏まりました。」
淡々と決めていくミシェルは仕立屋に、そう指示する。
レイフォードはその様子に思わず、声を上げる。
「お、おい。勝手に話を進めるな!
というか、何故仕立屋の名を知っている!?」
「ドゥランさんは私が懇意にしている仕立屋さんの一人よ。」
事も無げにミシェルは言う。
「姉さまのあの深紅のドレスを仕立てたのも彼。
仕事が早くて丁寧なのよ。
お義兄さまも、あのドレス気に入っていたでしょう?」
揶揄う様にミシェルが口角を上げてレイフォードを見る。
「・・・・!な、あ、あのドレスだと!!」
レイフォードはあの扇情的な、だがシルヴィアに恐ろしく似合っていたあのドレス姿を思い出して、
赤面する。
それを見てミシェルは更にニヤリと笑う。
「あら?お気に召さなかったのかしら?姉さまのあのドレス?」
「え・・・。そうだったのですか?レイフォード様。」
シルヴィアが不安気な表情でレイフォードを見る。
(コイツ!!態とか!?)
ニヤニヤと楽しそうな表情のミシェルを見て、レイフォードは内心で舌打ちをする。
先にシルヴィアを安心させなければならないと考え、
シルヴィアの肩に手を置く。
「いや、あのドレス、シルヴィアに良く似合っていた。
本当だ。似合い過ぎて、(周りの男がシルヴィアに言い寄って来ないか)心配だった位だ。」
「そ、そうだったのですか?
でも、心配させてしまったという事は、やはりお気に召さなかった・・のでしょうか?」
レイフォードの小声の部分が上手く聞き取れなかったシルヴィアは、
何を心配したのか分からないが、レイフォードに気を使わせてしまった事の方が重要だった。
「違うぞ!似合っていると言っただろう?
だから、その・・・。」
シルヴィアは歯切れの悪いレイフォードの言葉に首を傾げる。
「その、二人だけの時に着て欲しい。」
顔を紅くしたままレイフォードは告げる。
見るのは俺だけで良い、そんな独占欲剥き出しの言葉を吐く。
これには、ミシェルが呆れたと半目でレイフォードを見るが、全く無視をしてシルヴィアを見つめる。
「夜会用のドレスを、ですか?
それは・・・、!!」
シルヴィアはパァっと顔が明るくなる。
「ダンスの練習をしてくださるのですか!?
まぁ!嬉しいです!
私、ダンスが苦手で夜会の時にお誘いを受けても、
お断りしていましたの。」
シルヴィアに対比するかのように顔が暗くなるレイフォード。
「・・・そうだな。」
(まぁ、分かっていたさ。)
ぷっと吹き出す声の後、クスクスと笑い出すミシェル。
「ふふふ。本当に学習されないお方ね。
哀れを通り越して面白くなってきたわ。」
ギロリとミシェルを睨むが、動じる事無くミシェルはドゥランに話しかける。
「さぁ、行きましょう、ドゥランさん。
姉さまの為に、3日で仕上げましょう。」
「は、はい。」
「じゃあ、姉さま、出来上がりを楽しみにしていてね。」
ミシェルとドゥランは屋敷を後にする。
「なぁ、シルヴィア。」
「はい、レイフォード様。」
レイフォードは少し間を置いてシルヴィアに声を掛ける。
「先程ダンスに誘われるって言っていたよな?」
「?はい。何人かの方がお声を掛けて下さったのですが、」
「因みに誰が声を掛けてきた?」
「え、ええと、確か・・・。」
まるで尋問の様にシルヴィアに問い質す。
シルヴィアを放っておいたのは自分であるのにも関わらず、
シルヴィアに近寄る男をどうしても許す事が出来ない。
「ファンブル侯爵家の御子息様と、
マクスウェル侯爵家の御子息様達と、
ええと、それから・・・。」
シルヴィアは記憶を辿りながら、指折り数える。
「あいつ等か・・・。」
自身の悪友達。
シルヴィアに声を掛けるのも頷ける。
釘を刺しておかねばなるまい、心の中で考える。
「後、畏れ多かったのですが王太子殿下も・・・。」
「殿下もか!?」
これにはレイフォードも声が大きくなった。
「は、はい。流石に殿下のお誘いを断る事は出来ませんでしたので、」
「・・・・踊ったのか・・・?」
声が低くなる。
自分の嫉妬深さに嫌気がさすレイフォード。
シルヴィアに対して怒っている訳では無いのに、すっかり委縮してしまったシルヴィアは無言で頷く。
「ほ、本当に殿下にはご無礼ばかりを働いてしまって・・・。」
肩を落とすシルヴィア。
「何回も殿下の足を踏んでしまって、気にしないで良いと笑っていらっしゃったのですが、
本当に何回も踏んでしまってダンスの後、ちゃんと謝罪しなければと思いました。」
話している内にシルヴィアがその事を思い出してか、ほんのり頬が赤く染まって行くのを見て、
レイフォードは腹の底が煮える釜の様に、
沸々と熱くなるのを感じた。
「殿下は本当にお優しい方で、無理に誘ってしまったのは自分なのだから謝るのは自分だと逆に謝られてしまって。」
「シルヴィア。」
もう、いいとシルヴィアの話を切る。
自分で話を振っておいて、他の男の話を聞くのが耐えれなかった。
「レイフォード様?」
目の前のこの鈍感な妻をどうしてくれよう。
「・・・ダンスの練習だったよな?」
「本当にしてくださるのですか!?」
「ああ、植物園から帰って来てから行うとしようか。」
「はい!!ありがとうございます!」
素直に喜ぶシルヴィア。
「ああ、厳しくするからな。覚悟しておけよ?」
「分かりました!頑張ります!!」
(本当に覚悟しておけよ。)
レイフォードは一人ほくそ笑んだ。
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