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8章
ある意味無敵?
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「お~い!!」
一仕事を終え、ご満悦のトムが店内へ引っ込もうとした背後から、自分を呼ぶ馴染みの声に振り返る。
「おお、テッド。どうしたい?そんな血相抱えて。」
両膝に手を当て、息を整えるテッドに呑気な声でトムは声を掛ける。
「ど、どうしたも、こうしたもお前無事だったのか!?」
トムは全く見当もつかず首を傾げる。
「無事?何が?」
「シルヴィア様が来ただろう!!」
シルヴィアと聞いてトムは興奮気味で答える。
「おお~!!そうだ、そうだ!シルヴィア様な!来たぞ!
いやあ、間近で見たらすげぇ別嬪さんだったよ!
俺ぁ、あんな美しい女の人は会った事無い位、綺麗だったなぁ~。」
トムは目を瞑り、腕を組みながら先程の出来事を反芻しながら頷く。
テッドはそうじゃないと、肩を落とし、溜息混じりに言う。
「いや、綺麗なのはそうなんだが・・・・。」
「あん?何だよ?」
全く要領を得ないテッドに眉を顰める。
「もう一人!居ただろう!!シルヴィア様と一緒に!!」
テッドにそう言われて、あっけらかんと答える。
「おお、レイフォード様だろ?居たな。それがどうした?」
テッドは信じられないという顔でトムを見る。
「ま、まさか俺だけなのか・・・?」
ブツブツと呟くテッドを訝し気にトムは見る。
「おい、どうしたよ。レイフォード様が一体なんだって?」
「お前、レイフォード様に睨まれなかったのか?」
恐る恐る尋ねるテッドにトムは首を傾げる。
「睨まれる?何で?俺、レイフォード様に何にも粗相はしてないぜ?」
「いや、本人にじゃなくて、シルヴィア様にだよ。」
更に眉間に皺が寄るトム。
「シルヴィア様にこそ粗相なんかするもんか!!
俺にしては心底丁寧に対応したっての!!」
心外とばかりに声を荒げるトムに引き気味になるテッドは、落ち着かせようと宥める。
「違うって。シルヴィア様と話していたら、レイフォード様が睨んでこなかったかと聞いてるんだよ。
お前も知ってるだろ、あの噂。」
テッドに言われて考え込む。
そして、思い出す。
「おお~。あれか!
レイフォード様がシルヴィア様にベタ惚れしとるっちゅう・・・。」
「それだよ。」
「夫婦仲良く居て良い事じゃないか、なぁ。
当初はどうなる事かと思ったが、ああして二人で歩いているのを見ると、安心するな。」
「そうじゃなくて・・・。」
テッドは脱力する。
呑気にも程があるトム。
普段ならば兎も角、自分が言わんとしたい事がこうも伝わらないとは歯痒さしかない。
テッドの背中を何回も強く叩くトム。
「何、しけた面してんだ!!
レイフォード様な、険しい顔してたから、てっきり腹でも壊したのかと思ってたんだよ。
そうか、ありゃあ、俺を睨んでたのか。
レイフォード様、俺に敵意を向けるとは思わなかったな~。」
カラカラと大声を上げて笑うトムに愕然とするテッド。
「いやぁ~、レイフォード様がそんな嫉妬深いとはなぁ~。
人間は変わるもんだ。」
「お前・・・、凄いな・・・。」
確実に殺されそうな勢いの眼光を流せるトムに只々感心するしか無いとテッドは思った。
一仕事を終え、ご満悦のトムが店内へ引っ込もうとした背後から、自分を呼ぶ馴染みの声に振り返る。
「おお、テッド。どうしたい?そんな血相抱えて。」
両膝に手を当て、息を整えるテッドに呑気な声でトムは声を掛ける。
「ど、どうしたも、こうしたもお前無事だったのか!?」
トムは全く見当もつかず首を傾げる。
「無事?何が?」
「シルヴィア様が来ただろう!!」
シルヴィアと聞いてトムは興奮気味で答える。
「おお~!!そうだ、そうだ!シルヴィア様な!来たぞ!
いやあ、間近で見たらすげぇ別嬪さんだったよ!
俺ぁ、あんな美しい女の人は会った事無い位、綺麗だったなぁ~。」
トムは目を瞑り、腕を組みながら先程の出来事を反芻しながら頷く。
テッドはそうじゃないと、肩を落とし、溜息混じりに言う。
「いや、綺麗なのはそうなんだが・・・・。」
「あん?何だよ?」
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「もう一人!居ただろう!!シルヴィア様と一緒に!!」
テッドにそう言われて、あっけらかんと答える。
「おお、レイフォード様だろ?居たな。それがどうした?」
テッドは信じられないという顔でトムを見る。
「ま、まさか俺だけなのか・・・?」
ブツブツと呟くテッドを訝し気にトムは見る。
「おい、どうしたよ。レイフォード様が一体なんだって?」
「お前、レイフォード様に睨まれなかったのか?」
恐る恐る尋ねるテッドにトムは首を傾げる。
「睨まれる?何で?俺、レイフォード様に何にも粗相はしてないぜ?」
「いや、本人にじゃなくて、シルヴィア様にだよ。」
更に眉間に皺が寄るトム。
「シルヴィア様にこそ粗相なんかするもんか!!
俺にしては心底丁寧に対応したっての!!」
心外とばかりに声を荒げるトムに引き気味になるテッドは、落ち着かせようと宥める。
「違うって。シルヴィア様と話していたら、レイフォード様が睨んでこなかったかと聞いてるんだよ。
お前も知ってるだろ、あの噂。」
テッドに言われて考え込む。
そして、思い出す。
「おお~。あれか!
レイフォード様がシルヴィア様にベタ惚れしとるっちゅう・・・。」
「それだよ。」
「夫婦仲良く居て良い事じゃないか、なぁ。
当初はどうなる事かと思ったが、ああして二人で歩いているのを見ると、安心するな。」
「そうじゃなくて・・・。」
テッドは脱力する。
呑気にも程があるトム。
普段ならば兎も角、自分が言わんとしたい事がこうも伝わらないとは歯痒さしかない。
テッドの背中を何回も強く叩くトム。
「何、しけた面してんだ!!
レイフォード様な、険しい顔してたから、てっきり腹でも壊したのかと思ってたんだよ。
そうか、ありゃあ、俺を睨んでたのか。
レイフォード様、俺に敵意を向けるとは思わなかったな~。」
カラカラと大声を上げて笑うトムに愕然とするテッド。
「いやぁ~、レイフォード様がそんな嫉妬深いとはなぁ~。
人間は変わるもんだ。」
「お前・・・、凄いな・・・。」
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