神を喰らい、君を隠す

才賀ゆう

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「……入れるぞ」
 
 やがて無理やり広げられた水澄の足の間に、黒焔の熱が触れる。硬く、熱くなったそれが、ゆっくりと、水澄の入口にあてがわれた。

「――や、だ……こわい……!」

 頭を振っても、鎖が軋むだけ。黒焔の動きは止まらなかった。

「……力を抜け」

 耳元で、吐息と共に囁かれた。そのまま、ぐ、と腰が押し出される。

「……っっっ、あ……あ、あああ……っ!!」

 ずぷ、と、それが中に入り込み、ゆっくりと中を押し広げていく。その質量に水澄は息を止めた。身体が強張るのがわかる。だが黒焔は構わずに腰を進め、そのまま奥まで貫いた。
 
「ひ、あ……っ」

 黒焔の熱に侵され、水澄の身体がびくびくと震える。腰を掴まれて揺さぶられ、声が漏れる。

「っ、く……」

 黒焔の喉が、微かに唸った。
 最初はゆっくりだった黒焔の動きは少しずつ速くなり、深く、強く、押し殺していた欲望が、形を変えて水澄の中を蹂躙する。
 
「あ、あっ……や、だめ……っ」
「っ、水澄……」

 奥を突かれるたびに、甘く痺れる感覚が、意識を曇らせる。黒焔の手が強く水澄の腰を抱え込み、激しい音が室内に響く。

「あっ、ああっ、や、あっ、あ……!」

 ずちゅ、と濡れた音を立てて引き抜かれる。そしてまた奥まで抉られる。それを何度も繰り返されて水澄は身をよじった。
 
 奥に当たるたび、身体が浮いてしまいそうになる。
 けれど黒焔の腕が、腰を、脚を、押さえつけて離さない。どこまでも逃がさないとでもいうように、執拗に突き上げてくる。

「火鷹……っ、お願い……やめて……もう、やめて……っ」

 水澄はぐちゃぐちゃになった思考で火鷹の名前を呼ぶ。望んでいた再会だった。あんなに、また火鷹に会いたいと願っていたのに、こんな事になるなんて。

「っく……、水澄……」
「あっ、やぁっ、やだぁ……っ」
 
 泣きながら首を横に振る。身体が熱くて、わけがわからなくなる。黒焔は容赦なく水澄を責め立てる。
 
「……出すぞ」
「や……っ、ひぁっ、あ、あっ、ああっ!」

 黒焔の熱が一気に注がれ、水澄は体を痙攣させた。逃げることも、拒むこともできず、ただ、黒焔の執念を身体の奥に刻まれていく。何度か腰を揺らしてすべてを出し切ると、黒焔はゆっくりと水澄の中から自身を抜いた。


 すべてが終わったあとの世界は、妙に静かだった。熱の余韻だけが、ふたりの間に微かに残っている。

 水澄は、まだ荒い呼吸を整えることもできずにいた。拘束は解かれたはずなのに、全身の力が抜けて動くことができない。

 腰の奥が、じんじんと熱い。奥に注がれたものが、ゆっくりとこぼれ出ていく感触に、喉の奥がひくりと震えた。

 羞恥も、悲しみも、悔しさも――何もかもに蓋をされたまま。
 感情がすべて抜け落ちて、からっぽになってしまったようだった。
 ――その時だった。
 気付かぬうちに床に転がっていた霊鈴の音が、ひどく小さく震え、すぐにぴたりと沈黙した。

 それを確認すると、黒焔は無言のまま布を取り、水澄の脚にかかった汚れを丁寧に拭き取った。その手つきはあまりにも静かで――さっきまでの激しさが嘘のように、優しかった。

「……霊鈴が、鳴らなくなった」

 水澄は、ぽつりと呟いた。黒焔は頷きもしない。ただ一瞥だけ鈴に送り、それから、水澄の肩にそっと掛け布をかける。

「少し、眠れ」

 低く、掠れた声が落ちてくる。

「まだ少し時間はある。起きたら、お前を俺の家に連れていく」

 水澄の瞼はすでに重く、涙と苦しみと疲労で、身体は限界を越えていた。

 黒焔の手が、そっと水澄の頭に触れた。まるで壊れ物に触れるように――それでもどこか、愛おしそうに。指先が静かに髪を撫でるたび、胸の奥に、どうしようもない懐かしさが滲んでしまう。

「……火鷹」

 名前を呼ぶ声は、ほとんど夢の中のようにかすかだった。
 黒焔はただ眠りに落ちていく水澄を、黙って見つめていた。

 やがて水澄が完全に眠ったのを確認してから、静かに、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
 
「どんな形でもいい、お前を守るとあの日決めた。正しさなんて――とっくに手放した」
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