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『愛人/ラマン』

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南方のジェネラルサントスという過疎の港町で彼女ができました。転がり込んだスラムの掘っ立てトタン小屋に、彼女が転がり込んで来た。荒くれた市場で5歳から働いてきた彼女も荒くれた狼藉者でした。栃木で2年間ほどヌードダンサーを経験したらしく、彼女の日本語は不気味で荒い栃木弁でした。特別美人でもなければブサイクでもない。小さく華奢な体躯には計り知れないエネルギーが詰まってた。

極貧極まれりなある日「ゼニ稼ぎに行ってくっぺぇ~」と吐いて10日間ほど帰って来ませんでした。彼女が出稼ぎに出た当初のお話。暇を持て余した私がなけなしの金で酒を買いに行った商店で「女から既に金は頂いてる。事情は理解してるから好きな酒選んで持っていけ」でした。食料品店でも同様です。私は(どこにそんな金隠してた・・・では無く)彼女のカッコ良さに男泣き。

当時、私の二回り年下の彼女が吐く口癖は「おめェは恋人でもなく友達でもねェ。親でもなければ兄妹でもねェ。ただの私のでっけえ息子だァ!」でした。

「ジャン=ジャック・アノー 愛人/ラマン 1992」を荒くれた市場で購入しました。正規版など無いスラムです。画像最悪な海賊版でした。モーレツにエロかったから購入した私の意図に反し(敬愛するアノー監督すんません)・・・荒くれで狼藉者の彼女が号泣する姿を初めて垣間見せた奇蹟の1本です。




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