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<思惑>

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前回ルミニー達が魔王城に来た時は霧で隠された様に感じたのが不気味だったが、まるで誘い込まれた様な今回は更に異質な不気味さを放っていた。



ルミニーが言っていた其れを感じ取ったガルのメンバーは、同様に口をつぐむ。



調査内容として魔王城の存在は聞いていたが、始めて魔王城を目の当たりにしたケルマンとラタは驚き立ち尽くす。



「信じられない……、こんな荒れ地に」



思わずラタは呟き、ケルマンも頷く。



だが其の反応も仕方ない事だと云えるだろう、其れほどに有り得ないのだ。



当初ケルマンは冒険者が金欲しさに嘘を吐いていると疑っていたが、もう認めざるをえなかった。



出来れば近付きたくはない位に、危険な事は推測出来る。



だが調査は此れで終わりという訳ではなく、魔王城内部調査が残っていた。



「もう魔物が住み着いているかもしれないから、離れるんじゃないよ」



歩きだしたルミニーの忠告に、ケルマンとラタは我に返り慌てて後を追う。



「今のところ索敵範囲に反応は無しです」



魔王城内に潜入した調査隊は魔物を警戒しながら、魔王城自体の調査を始める。



「建物自体はかなり古いので百年位は経っていそうですけど、其れにしては綺麗過ぎですよね……」



まさかゴブリンが命懸けで掃除したなんて誰も思わず、リジョンの疑問に一行は頷く。



「前回はゆっくり観る暇も無く、お宝探しも出来なかったからね」



ラタが調査帳を記入している隙に、ルミニー達は棚の中や箱の中の金目の物を探し。



其れを退屈そうに眺めているケルマンは、煙草を吹かし待っている。



ガルのメンバーが今回の調査で一番お得だと思ったのは、この宝探しだった。



魔王を倒した後なら強い魔物も少なく、宝探しする時間も多いだろうという思惑である。



そんな風に、調査隊が一室ずつ時間を掛け回っている中。



リジョンの索敵範囲が及ばない上空から一部始終を眺めていたウスロスは、魔王達が戻り冒険者と鉢合わせするのを待っていた。



「ただ待つというのも暇なものですね……」



そうぼやきながらも、ウスロスの口元はニヤつき。



まるで蛇の様な舌で、舌舐めずりをしている。



当初ウスロスの思惑では、何も無い洞穴から傷付き戻って来たマヌケな魔王達を笑えれば良い位だった。



其のお遊びは冒険者を見付けた事で、鉢合わせの戦闘になったら面白いに変わり。



結果、ルミニー達は迷う事無く魔王城に辿り着く事になり。



そろそろ戻って来るはずの魔王達は、自分の悪戯で閉じ込められたのである。



そんな風にウスロスが仕組んだ思惑の全ては、知らない内に裏目に出たのだった。



だが其れを知ろうともしないウスロスは、より面白い結果を求め。



魔王達が帰って来るのを、ひたすら待つのだった。
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