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少し前のやり取りを思いだしながら現在。紹介状を携え、咲也子は人通りの少ない奴隷商館の前に立っていた。途中で何度か観光客と思われる人々に「お菓子工場はこっちだよ」と話しかけられ手招きされたが、それをなんとかかわして咲也子はここにたどり着いた。
何回か同じ問答をしたためか入る前から疲れてため息をついたら、腰のベルトにつけたひんのカードが何回か点滅し震えた。大丈夫? とどこか心配げな雰囲気を伝えてくるひんに、大丈夫だよとカードをひとなでしてから扉を開けた。
迷宮の隠し通路を攻略した日から、なんとなくひんの言っていることが分かるような気がして、咲也子は嬉しかった。そんなことを考えていると。もう、カードは震えていなかった。
チョコレート色の扉を開くと館の中は赤い絨毯が敷かれ、ところどころに置かれた小棚やカウンター、ローテーブルの上に華やかにラッピングされた花籠が配置されていた。どこか重厚な造りながらも大きな天窓があることで春の柔らかい光はいっぱいに入ってきていて、暗さは感じさせなかった。
まるでどこかの高級ホテルのロビーにいる気分になりながらも、この絨毯ははたして踏んでもいいものなのかと恐る恐る足を踏み出した咲也子に声がかけられる。
「こんにちは、お嬢様。僭越ながら、店をお間違えではないでしょうか」
「こんにち、はー。これ、テリアさんの紹介状で、す」
「あら、そうでしたか。大変失礼いたしました。……お客様、こちらの部屋で少々お待ちくださいませ」
暗に隣接されているお菓子工場と間違って入ってきたのではないかと告げる完壁な笑顔のフロアレディにテリアからの紹介状を見せる。
絨毯に関してはフロアレディも靴を履いているし、咲也子も脱げと言われないため履いていていいものだと思いたい。紹介状を受け取り中身を確認すると、少し首を傾げほほえみながらも思案した顔を作るという高等技術を見せながら、フロアレディは応接室と思われる部屋に咲也子を案内した。
廊下と同じ赤い絨毯に、壁には大きなひまわりと思わしき抽象画が飾られていた。その横の壁に掛けられた紅石や緑石などの宝石をあしらった、装飾感あふれるレイピアが窓からはいってきた陽光にきらりと光っている。照明はついていなかったが、シャンデリアが窓から入ってきた光を何重にも反射させきらきらと輝いているだけで、十分明るかった。
その下にあるテーブルにはこれまた華やかな花籠が飾られていたがそれには目もくれず咲也子の視線はソファーに釘づけだった。見た瞬間、咲也子は悟ったのだ。
(このソファー、人をだめにするやつだ!)
見るからにふかふかとしたアイボリーのソファーを前に立ちすくむ咲也子。戦々恐々とした内心など知らないフロアレディは不思議そうな顔で着席を促して、恐々と着席した咲也子に一礼してから部屋を出て行った。
ふかふかとしたソファーに身を置きながら、咲也子はそのすわり心地に花を飛ばさんばかりに空気を和ませた。感動しつつ、咲也子は奴隷という存在についての【白紙の魔導書】の説明文を思い出す。
『是。奴隷は大きく二種類に分けられます。一つは負債奴隷。借金が原因で奴隷となった者で、負債奴隷の値段はそのまま借金の金額になります。そのため個人によって金額が大きく異なり、解放は主人の意向次第でいつでもできます。次に犯罪奴隷についてですが、これは読んで字のごとく、罪を犯した者が犯罪奴隷となります。賠償金額の約三分の一の値段で売られ、その後の働きで賃金なり恩赦を得ることで解放となりますが、大体は奴隷のままで一生を終えることが多いという情報です。また、西寄りの大陸の方が奴隷文化が盛んであるという統計があります。実際に奴隷といっても、給料を前借りして働く人という認識の方が高いと考えられる情報が検索に引っかかりましたと回答します。また、奴隷主は奴隷に対し衣食住を保証する義務があり、暴行をしてはならないという法があると百五十年前に情報の更新があったと追加回答します』
あまり奴隷文化が盛んではない様子なのでここは西寄りの大陸ではないんだなと、地方の名前も母に寝物語に聞いただけの咲也子がつらつら考える。
膝の上に手を置いて足を揃えちょこんと座って、なんとなく向かいの誰もいないソファーを見ていると、扉が開いた。
「お待たせいたしました、咲也子さま。今回は元冒険者でパーティを組むことも視野に入れた負債奴隷をお求めということですが」
「う、ん。冒険者重要で、す」
「あいにくといいますか、いえ幸いといいますか。たった一人、元冒険者の奴隷が居りますが何分、もう冒険者としては働けない状態でして。」
いかにも困ったといった表情を作る館主に最近困った顔ばかりみているなと思いつつフードの奥の‘傲慢‘の魔力感知で魔力の乱れを見る。確かに嘘は言っていない。困っているのも本当だと判断出来た。
確かに元冒険者の奴隷がほしいとは言ったがパーティを組むことまでは考えていなかった。買って登録したらさようならをしようと思っていたのだが、そうすると金を捨てるようなものだ。それに契約印がある限り絶対に裏切らない信頼できるパーティになる。テリアはそこまで考えてくれていたらしい。
何回か同じ問答をしたためか入る前から疲れてため息をついたら、腰のベルトにつけたひんのカードが何回か点滅し震えた。大丈夫? とどこか心配げな雰囲気を伝えてくるひんに、大丈夫だよとカードをひとなでしてから扉を開けた。
迷宮の隠し通路を攻略した日から、なんとなくひんの言っていることが分かるような気がして、咲也子は嬉しかった。そんなことを考えていると。もう、カードは震えていなかった。
チョコレート色の扉を開くと館の中は赤い絨毯が敷かれ、ところどころに置かれた小棚やカウンター、ローテーブルの上に華やかにラッピングされた花籠が配置されていた。どこか重厚な造りながらも大きな天窓があることで春の柔らかい光はいっぱいに入ってきていて、暗さは感じさせなかった。
まるでどこかの高級ホテルのロビーにいる気分になりながらも、この絨毯ははたして踏んでもいいものなのかと恐る恐る足を踏み出した咲也子に声がかけられる。
「こんにちは、お嬢様。僭越ながら、店をお間違えではないでしょうか」
「こんにち、はー。これ、テリアさんの紹介状で、す」
「あら、そうでしたか。大変失礼いたしました。……お客様、こちらの部屋で少々お待ちくださいませ」
暗に隣接されているお菓子工場と間違って入ってきたのではないかと告げる完壁な笑顔のフロアレディにテリアからの紹介状を見せる。
絨毯に関してはフロアレディも靴を履いているし、咲也子も脱げと言われないため履いていていいものだと思いたい。紹介状を受け取り中身を確認すると、少し首を傾げほほえみながらも思案した顔を作るという高等技術を見せながら、フロアレディは応接室と思われる部屋に咲也子を案内した。
廊下と同じ赤い絨毯に、壁には大きなひまわりと思わしき抽象画が飾られていた。その横の壁に掛けられた紅石や緑石などの宝石をあしらった、装飾感あふれるレイピアが窓からはいってきた陽光にきらりと光っている。照明はついていなかったが、シャンデリアが窓から入ってきた光を何重にも反射させきらきらと輝いているだけで、十分明るかった。
その下にあるテーブルにはこれまた華やかな花籠が飾られていたがそれには目もくれず咲也子の視線はソファーに釘づけだった。見た瞬間、咲也子は悟ったのだ。
(このソファー、人をだめにするやつだ!)
見るからにふかふかとしたアイボリーのソファーを前に立ちすくむ咲也子。戦々恐々とした内心など知らないフロアレディは不思議そうな顔で着席を促して、恐々と着席した咲也子に一礼してから部屋を出て行った。
ふかふかとしたソファーに身を置きながら、咲也子はそのすわり心地に花を飛ばさんばかりに空気を和ませた。感動しつつ、咲也子は奴隷という存在についての【白紙の魔導書】の説明文を思い出す。
『是。奴隷は大きく二種類に分けられます。一つは負債奴隷。借金が原因で奴隷となった者で、負債奴隷の値段はそのまま借金の金額になります。そのため個人によって金額が大きく異なり、解放は主人の意向次第でいつでもできます。次に犯罪奴隷についてですが、これは読んで字のごとく、罪を犯した者が犯罪奴隷となります。賠償金額の約三分の一の値段で売られ、その後の働きで賃金なり恩赦を得ることで解放となりますが、大体は奴隷のままで一生を終えることが多いという情報です。また、西寄りの大陸の方が奴隷文化が盛んであるという統計があります。実際に奴隷といっても、給料を前借りして働く人という認識の方が高いと考えられる情報が検索に引っかかりましたと回答します。また、奴隷主は奴隷に対し衣食住を保証する義務があり、暴行をしてはならないという法があると百五十年前に情報の更新があったと追加回答します』
あまり奴隷文化が盛んではない様子なのでここは西寄りの大陸ではないんだなと、地方の名前も母に寝物語に聞いただけの咲也子がつらつら考える。
膝の上に手を置いて足を揃えちょこんと座って、なんとなく向かいの誰もいないソファーを見ていると、扉が開いた。
「お待たせいたしました、咲也子さま。今回は元冒険者でパーティを組むことも視野に入れた負債奴隷をお求めということですが」
「う、ん。冒険者重要で、す」
「あいにくといいますか、いえ幸いといいますか。たった一人、元冒険者の奴隷が居りますが何分、もう冒険者としては働けない状態でして。」
いかにも困ったといった表情を作る館主に最近困った顔ばかりみているなと思いつつフードの奥の‘傲慢‘の魔力感知で魔力の乱れを見る。確かに嘘は言っていない。困っているのも本当だと判断出来た。
確かに元冒険者の奴隷がほしいとは言ったがパーティを組むことまでは考えていなかった。買って登録したらさようならをしようと思っていたのだが、そうすると金を捨てるようなものだ。それに契約印がある限り絶対に裏切らない信頼できるパーティになる。テリアはそこまで考えてくれていたらしい。
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