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「これから午後の授業始めるぜー」
咲也子が満腹感に気持ちよくうとうとしていると、赤髪の男が言った。
ぴったりと体についた肩当てなどの装備で固めているその男は、その装備の上からでもわかるほど隆々とした筋肉で冒険者候補生の子どもたちを楽しませていた。
ふと、ミリーが言っていた一言が咲也子の耳によみがえった。『汚いマッチョが……冒険者が……』いや、別に汚くはないのだが。
何とはなしにその冒険者を見て、咲也子はあることに気付いたが、別に気にすることでもないと思って放置した。さっきから反応がないなあと思ってティオヴァルトを振り向くと、眉間にしわを寄せ、赤い髪の冒険者を見ていた。ちなみに視線の鋭さは十倍増しである。
たまたまそばを通りかかり、咲也子も一緒に遊んでもらえばどうかと声をかけようとしたサーニャが半泣きになっていた。ティオヴァルトもあの冒険者に何かしら思うところがあるらしいから、それについては後で詰めていけばいいかと思いつつ、咲也子はティオヴァルトに声をかけた。
「薬草いっしょに探そう、よ」
一人では面倒くさくてそう言うと考えを読んだかのようにティオヴァルトから、呆れ気味の視線とともに了解の返事が返ってきた。野原をこえて森にやってくると冒険者は振り返った。
「よし、みんな着いてきてるなー。俺の名前はアーシュだ。午前中に薬草見ただろ? あれはこの森で採れたものなんだが、それを見つけてもらう! 見つけたら、そうだな。あの切り株にいる俺のとこに持ってきな。一番にはご褒美があるぜ!」
ご褒美、という言葉に盛り上がる冒険者候補生たちはさっそく散らばっていった。中にはグループを組んで役割分担用にしている子どもたちもいるため、賢い子たちだと思いつつ咲也子もティオヴァルトと一緒に……というか抱えられてさくさく森に入っていった。
「大きい、ね」
「でかいな」
水のにおいがするというティオヴァルトの言葉に当然のように抱っこされて森を進むと、大きな池を発見した。もう湖といってもいい大きさのそれは水底に蟹が歩いているのが見えた。
晴れた空を湖面いっぱいに映しだすそれに、咲也子はひんをカードから出した。
「ひん」
「ふぃいいいいん」
清浄な水に喜んで水を跳ね上げ遊んでいるひんを見ながら、咲也子とティオヴァルトはこの湖に来る道で生えていた五種類の薬草を交換し合った。六種類目の毒花については見かけてはいたものの、扱いが面倒なため後回しにされていた。
‘暴食‘で仕入れた知識の中にはスクールよりも詳しい生息地などがあったため、見つけるのは苦労しなかった。
ならばスクールにくる必要はないのではと思われるかもしれないが、咲也子的には机上ではなく実際に行ってみることの方が得るものは多いと考えているため、問題はない。
ひんが湖中で蟹に尾を挟まれそうになり、びびって咲也子に巻き付こうとしたりと色々ハプニングはあったものの、木の根に寄りかかりながらのんびりと午後を過ごしていた。
そんなときだった。
がさがさと木々をかき分ける音がして、なにか動物でもいうのかと振り向くと、そこに赤髪の冒険者ことアーシュが立っていた。
ティオヴァルトの横に座りながらぼんやりとひんが遊ぶ様子を見ていた咲也子は眠たげに落ちかけていた瞼を持ち上げる。
ティオヴァルトが構えるようにアーシュからは見えない位置で剣を抜いたのが分かった。
「<壮麗>か。見事だね。しかも稀少種だなんて、初めて見たよ」
ひんを褒めながらもその目は咲也子とティオヴァルトから離されなかった。
離されないその瞳に何かくすぶっているのを咲也子は感じたが特に何も言わなかった。
なぜそこまで気を使ってやらないといけないのか。
やがてもごもごと何かを言っていたが、急に苛立ったかのように頭をかきむしると、今度は明確な敵意を持って咲也子とティオヴァルトを見た。
「なんでっ! お前ら冒険者やってんだよ! ガキは死んでてもおかしくないのに何で! ティオヴァルトは奴隷になったんだろ!? なんで、冒険者スクールに、どうせ俺のこと馬鹿にしてんだろ!?」
完全に被害妄想である。とはいえ、その発言からティオヴァルトは咲也子も何かされたことに気づいたらしく目線で確認してきた。咲也子も何かに気づいたらしくティオヴァルトに視線を合わせる。とりあえず、詳細は後で確認することにして、お互いがうなずいたことで何かしら害意のある行動をくわえられたことは確認した。
そんな風にアイコンタクトを取り続ける二人に無視されたと感じたのか、アーシュは興奮したように顔を真っ赤にして続けた。
咲也子が満腹感に気持ちよくうとうとしていると、赤髪の男が言った。
ぴったりと体についた肩当てなどの装備で固めているその男は、その装備の上からでもわかるほど隆々とした筋肉で冒険者候補生の子どもたちを楽しませていた。
ふと、ミリーが言っていた一言が咲也子の耳によみがえった。『汚いマッチョが……冒険者が……』いや、別に汚くはないのだが。
何とはなしにその冒険者を見て、咲也子はあることに気付いたが、別に気にすることでもないと思って放置した。さっきから反応がないなあと思ってティオヴァルトを振り向くと、眉間にしわを寄せ、赤い髪の冒険者を見ていた。ちなみに視線の鋭さは十倍増しである。
たまたまそばを通りかかり、咲也子も一緒に遊んでもらえばどうかと声をかけようとしたサーニャが半泣きになっていた。ティオヴァルトもあの冒険者に何かしら思うところがあるらしいから、それについては後で詰めていけばいいかと思いつつ、咲也子はティオヴァルトに声をかけた。
「薬草いっしょに探そう、よ」
一人では面倒くさくてそう言うと考えを読んだかのようにティオヴァルトから、呆れ気味の視線とともに了解の返事が返ってきた。野原をこえて森にやってくると冒険者は振り返った。
「よし、みんな着いてきてるなー。俺の名前はアーシュだ。午前中に薬草見ただろ? あれはこの森で採れたものなんだが、それを見つけてもらう! 見つけたら、そうだな。あの切り株にいる俺のとこに持ってきな。一番にはご褒美があるぜ!」
ご褒美、という言葉に盛り上がる冒険者候補生たちはさっそく散らばっていった。中にはグループを組んで役割分担用にしている子どもたちもいるため、賢い子たちだと思いつつ咲也子もティオヴァルトと一緒に……というか抱えられてさくさく森に入っていった。
「大きい、ね」
「でかいな」
水のにおいがするというティオヴァルトの言葉に当然のように抱っこされて森を進むと、大きな池を発見した。もう湖といってもいい大きさのそれは水底に蟹が歩いているのが見えた。
晴れた空を湖面いっぱいに映しだすそれに、咲也子はひんをカードから出した。
「ひん」
「ふぃいいいいん」
清浄な水に喜んで水を跳ね上げ遊んでいるひんを見ながら、咲也子とティオヴァルトはこの湖に来る道で生えていた五種類の薬草を交換し合った。六種類目の毒花については見かけてはいたものの、扱いが面倒なため後回しにされていた。
‘暴食‘で仕入れた知識の中にはスクールよりも詳しい生息地などがあったため、見つけるのは苦労しなかった。
ならばスクールにくる必要はないのではと思われるかもしれないが、咲也子的には机上ではなく実際に行ってみることの方が得るものは多いと考えているため、問題はない。
ひんが湖中で蟹に尾を挟まれそうになり、びびって咲也子に巻き付こうとしたりと色々ハプニングはあったものの、木の根に寄りかかりながらのんびりと午後を過ごしていた。
そんなときだった。
がさがさと木々をかき分ける音がして、なにか動物でもいうのかと振り向くと、そこに赤髪の冒険者ことアーシュが立っていた。
ティオヴァルトの横に座りながらぼんやりとひんが遊ぶ様子を見ていた咲也子は眠たげに落ちかけていた瞼を持ち上げる。
ティオヴァルトが構えるようにアーシュからは見えない位置で剣を抜いたのが分かった。
「<壮麗>か。見事だね。しかも稀少種だなんて、初めて見たよ」
ひんを褒めながらもその目は咲也子とティオヴァルトから離されなかった。
離されないその瞳に何かくすぶっているのを咲也子は感じたが特に何も言わなかった。
なぜそこまで気を使ってやらないといけないのか。
やがてもごもごと何かを言っていたが、急に苛立ったかのように頭をかきむしると、今度は明確な敵意を持って咲也子とティオヴァルトを見た。
「なんでっ! お前ら冒険者やってんだよ! ガキは死んでてもおかしくないのに何で! ティオヴァルトは奴隷になったんだろ!? なんで、冒険者スクールに、どうせ俺のこと馬鹿にしてんだろ!?」
完全に被害妄想である。とはいえ、その発言からティオヴァルトは咲也子も何かされたことに気づいたらしく目線で確認してきた。咲也子も何かに気づいたらしくティオヴァルトに視線を合わせる。とりあえず、詳細は後で確認することにして、お互いがうなずいたことで何かしら害意のある行動をくわえられたことは確認した。
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