10 / 18
第1 問『あるところでは、四季が秋春夏冬の順になっている。しかも一週間は金曜日から始まる。さあ、そこはどこだ?』
お楽しみ
しおりを挟む
「すっごい、速いですね!」
「まあな! 私の初解の謎さ!」
風がびゅんびゅんと耳の横を通り抜けては音を立てる中。その背に前後となってしがみつき、大声でチナミとスクナは会話していた。
そう、目にもとまらぬ速さで青が広がる大空を翔る、紅色のドラゴンの上で。
その姿は紅。塗ったような紅ではなく透けるような紅色の鱗が太陽に輝いていた。
逆三角と言ってもいい顔形に、鋭い輝きのある金色の猫目。大きく裂けた口には刃に似た牙がびっしりと生えていた。余分な肉のない四肢は引き締まり、いっそ繊細にすら見える鱗が家一軒はあろうかという巨体を包んでいて。その背中にある四肢よりも大きな骨ばった翼は、何度も羽ばたきを繰り返すことで、体が宙に浮くのを許していた。
正直、いかつい顔をしたドラゴンとビスクドールの組み合わせはとんでもなくちぐはぐであったが、ここにそれを指摘できる人物はいなかった。
なぜなら、スクナは標高故の針のような風、寒さと耳元の轟音、あまりの地上からの高さにくらくらしていて、それどころではなかった。
「ほらもうすぐ着くぞ! ここからがお楽しみだ!」
「え? は!? ちょ、自分絶叫系は……!」
ドラゴンが飛んでいた軌道を変更する。が、ただ変更するだけじゃない。
地面に向かって頭を落とし、垂直に変えたのだ。
重力に逆らわないどころか翼をたたみ手足を折り、空気抵抗を減らして進んで地へと落ちる。その様子は一筋の赤い矢のようで、弾丸のようで。
息もろくにつかせない風圧と、耳が痛いほどの轟音。冷たい空気と頭から下にひっぱられるような感覚。さらに下にみえるレンガ調の石畳に、もしかしてこのまま激突して死ぬのではないかとスクナはドラゴンに掴まりながら泣きそうになっていた。
チナミの方はというと、低い枯れた声で外見相応に見えるくらいには喜んでいたが。
その間もどんどん地表は迫ってきていた。
「アデル」
地面から鼻先わずか2メートル。もうぶつかると目を固く閉じたスクナの前から、小さなつぶやきが聞こえた。
チナミがドラゴンの名前と思しきものを呼ぶと、地表に向けて傾けていた体を起こし、頭をあげた。
ばさりと骨ばったその翼を広げるだけで。加速していた落下は緩まり、風圧は一気に弱まる。
そうしてゆっくりとレンガ調の石畳に砂埃を立たせながら、大広場とは壁1つで区切られた小広場へと降り立った。
「まあな! 私の初解の謎さ!」
風がびゅんびゅんと耳の横を通り抜けては音を立てる中。その背に前後となってしがみつき、大声でチナミとスクナは会話していた。
そう、目にもとまらぬ速さで青が広がる大空を翔る、紅色のドラゴンの上で。
その姿は紅。塗ったような紅ではなく透けるような紅色の鱗が太陽に輝いていた。
逆三角と言ってもいい顔形に、鋭い輝きのある金色の猫目。大きく裂けた口には刃に似た牙がびっしりと生えていた。余分な肉のない四肢は引き締まり、いっそ繊細にすら見える鱗が家一軒はあろうかという巨体を包んでいて。その背中にある四肢よりも大きな骨ばった翼は、何度も羽ばたきを繰り返すことで、体が宙に浮くのを許していた。
正直、いかつい顔をしたドラゴンとビスクドールの組み合わせはとんでもなくちぐはぐであったが、ここにそれを指摘できる人物はいなかった。
なぜなら、スクナは標高故の針のような風、寒さと耳元の轟音、あまりの地上からの高さにくらくらしていて、それどころではなかった。
「ほらもうすぐ着くぞ! ここからがお楽しみだ!」
「え? は!? ちょ、自分絶叫系は……!」
ドラゴンが飛んでいた軌道を変更する。が、ただ変更するだけじゃない。
地面に向かって頭を落とし、垂直に変えたのだ。
重力に逆らわないどころか翼をたたみ手足を折り、空気抵抗を減らして進んで地へと落ちる。その様子は一筋の赤い矢のようで、弾丸のようで。
息もろくにつかせない風圧と、耳が痛いほどの轟音。冷たい空気と頭から下にひっぱられるような感覚。さらに下にみえるレンガ調の石畳に、もしかしてこのまま激突して死ぬのではないかとスクナはドラゴンに掴まりながら泣きそうになっていた。
チナミの方はというと、低い枯れた声で外見相応に見えるくらいには喜んでいたが。
その間もどんどん地表は迫ってきていた。
「アデル」
地面から鼻先わずか2メートル。もうぶつかると目を固く閉じたスクナの前から、小さなつぶやきが聞こえた。
チナミがドラゴンの名前と思しきものを呼ぶと、地表に向けて傾けていた体を起こし、頭をあげた。
ばさりと骨ばったその翼を広げるだけで。加速していた落下は緩まり、風圧は一気に弱まる。
そうしてゆっくりとレンガ調の石畳に砂埃を立たせながら、大広場とは壁1つで区切られた小広場へと降り立った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる