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第4話 取り引き
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「そうですか。でも両親のお2人よりもあなたの状態がもっとも悪いです。
取引をしましょう。皆さんが幸せになれるように」
彼の言葉の意味が解らなかった。私の状態がもっとも悪い? そんなわけ……。
だって、私はこんなにも動けて、お母さんやお父さんとは違って普通の生活だってできて……。なのになんで! 私は、私は……。
困惑をうまく隠せなかったのか、彼は続けてこう言葉を投げた。
「あなたを研究させてください。これ以上、この国から死者を出さないために」
彼は私に真剣なまなざしを送ってくる。
その表情から、……ううん、自分の甘え“助けてほしい”という思いからその誘いに乗った。自らの意志で選択したのだ。
こうして選び、切り開かれた道は以下の取り引きによって確立された。
①都内の大夢先生の病院に私が入院すること
②研究支援料として私の両親に毎月100万円を支払うこと
③医師として必ず私の病気や発症理由を解明すること
④研究支援のため、保健所から学校を通して入院期間中は学校を公欠とし、回復したら私は必ず学校に戻ること
両親のこと、将来の私の事を考えられた大夢先生からの提案に私は頷き、この日から少し離れた都内の病院へと入ることになった。
病院の個室に連れてこられた私は、大夢先生からマークシートになった診断表を渡された。
「とりあえず回答してださい。僕は少し手続きしてくるので、それが書き終わったらこのナースコールを押してください。看護師が来るので渡してください」
私は「わかりました」と返事をして当てはまる回答を黒くマークした。
『いま、不安なことはありますか?
1:ある 2:少しだけある 3:ほとんどない 4:ない/思いつかない』
私は“1”にマークをつけながら、不安のない人なんているのだろうか? と疑問を持つ。
どんな未来が待っているなんて誰にも分らないはず。だからこそ最悪の状況を考えて行動することは大切だし、努力はしなければならない。より優れた人間が幸せに好かれ、選ばれる世界で、私は少しでも上の人間になりたかった。
だから私には不安にならない日なんて訪れなかった……。
回答に何の意味があるかわからないまま記載項目をすべて埋た私は、大夢先生に言われたとおりにナースコールを押した。
しばらくすると若めの女性看護師さんが部屋にやってきた。
「初めまして。安藤 香奈恵と言います。
今日から佐々木さんの担当看護師として勤めさせていただきます。何かあったら気軽に相談してくださいね」
若く朗らかに優しい笑みを見せるその人に向かって私はぺこりとお辞儀をする。
「よろしくお願いします。その、えっと……」
「香奈恵でいいわよ。佐々木さん」
口ごもる私に香奈恵さんはより深く笑った。
私はその笑みに申し訳なさそうな控えめな声で「香奈恵、さん」と呟いてみる。
その様子を見た香奈恵さんはふふっと笑ってこう続けた。
「大夢先生からマークシートを受け取るようにと言われたのだけど、書き終わりましたか?」
「はい。お願いします」
「いえいえ。お預かりしますね。
大夢先生はまだ忙しそうなのでしばらく部屋で待機していてください。何かあったらまたナースコールで呼んでくださいね」
香奈恵さんはそう言葉を残して部屋から出て行った。
そして一人になった途端、私は壊れてしまうことになる──。
取引をしましょう。皆さんが幸せになれるように」
彼の言葉の意味が解らなかった。私の状態がもっとも悪い? そんなわけ……。
だって、私はこんなにも動けて、お母さんやお父さんとは違って普通の生活だってできて……。なのになんで! 私は、私は……。
困惑をうまく隠せなかったのか、彼は続けてこう言葉を投げた。
「あなたを研究させてください。これ以上、この国から死者を出さないために」
彼は私に真剣なまなざしを送ってくる。
その表情から、……ううん、自分の甘え“助けてほしい”という思いからその誘いに乗った。自らの意志で選択したのだ。
こうして選び、切り開かれた道は以下の取り引きによって確立された。
①都内の大夢先生の病院に私が入院すること
②研究支援料として私の両親に毎月100万円を支払うこと
③医師として必ず私の病気や発症理由を解明すること
④研究支援のため、保健所から学校を通して入院期間中は学校を公欠とし、回復したら私は必ず学校に戻ること
両親のこと、将来の私の事を考えられた大夢先生からの提案に私は頷き、この日から少し離れた都内の病院へと入ることになった。
病院の個室に連れてこられた私は、大夢先生からマークシートになった診断表を渡された。
「とりあえず回答してださい。僕は少し手続きしてくるので、それが書き終わったらこのナースコールを押してください。看護師が来るので渡してください」
私は「わかりました」と返事をして当てはまる回答を黒くマークした。
『いま、不安なことはありますか?
1:ある 2:少しだけある 3:ほとんどない 4:ない/思いつかない』
私は“1”にマークをつけながら、不安のない人なんているのだろうか? と疑問を持つ。
どんな未来が待っているなんて誰にも分らないはず。だからこそ最悪の状況を考えて行動することは大切だし、努力はしなければならない。より優れた人間が幸せに好かれ、選ばれる世界で、私は少しでも上の人間になりたかった。
だから私には不安にならない日なんて訪れなかった……。
回答に何の意味があるかわからないまま記載項目をすべて埋た私は、大夢先生に言われたとおりにナースコールを押した。
しばらくすると若めの女性看護師さんが部屋にやってきた。
「初めまして。安藤 香奈恵と言います。
今日から佐々木さんの担当看護師として勤めさせていただきます。何かあったら気軽に相談してくださいね」
若く朗らかに優しい笑みを見せるその人に向かって私はぺこりとお辞儀をする。
「よろしくお願いします。その、えっと……」
「香奈恵でいいわよ。佐々木さん」
口ごもる私に香奈恵さんはより深く笑った。
私はその笑みに申し訳なさそうな控えめな声で「香奈恵、さん」と呟いてみる。
その様子を見た香奈恵さんはふふっと笑ってこう続けた。
「大夢先生からマークシートを受け取るようにと言われたのだけど、書き終わりましたか?」
「はい。お願いします」
「いえいえ。お預かりしますね。
大夢先生はまだ忙しそうなのでしばらく部屋で待機していてください。何かあったらまたナースコールで呼んでくださいね」
香奈恵さんはそう言葉を残して部屋から出て行った。
そして一人になった途端、私は壊れてしまうことになる──。
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