先生、私は間違っていますか……?

雨宮 苺香

文字の大きさ
14 / 29

第14話 電話

しおりを挟む
 ――そして今に至る。



 私は今も病室を出れずにいる。
 もちろん、何度か外に出てみようと思った。
 体が受け付けることなんて、なかったけれど……。




 月日は過ぎ、本来なら高校2年の冬の12月だ。この間、大夢ひろむ先生に「進路とか考えてる?」と尋ねられた。
 私は頭にはてなが浮かんで黙り込んでしまった。
 そんな私に大夢先生は「焦らなくていいから考えてみてね」と笑ってくれた。

 ――あれからずっと考えている。学校には戻れないかもしれない。社会にも出れないかもしれない。
 でも親に迷惑なんてかけられないし……。

 親……。今、お母さんとお父さんはどうなっているのだろう。

 私は気になって大夢先生に聞いてみることにした。


「大夢先生、私のお母さんとお父さんは今どんな感じなのでしょうか……」

「だいぶ元気になったよ。電話、かけてみる?」


 思わぬ提案に私は困惑をする。
 掛けてもいいものだろうか、私のことなんて忘れているかもしれない。
 すごく迷った。
 でも私はお母さんとお父さんの声が聞きたかった。


「いいですか、掛けてみても」

「もちろん。僕の携帯でもいいかな?」


 私は「はい」と言いながらスマホを受け取った。
 画面には〝佐々木さんのお宅〟と書かれている。
 私は深呼吸をして、電話マークをタップした。

 プルルルルル……プルルルルル、ガチャッ。


「もしもし、……お母さん?」

「その声は、麗桜うらら?」

「!! そうだよ、分かるの……?」

「分かるに決まってるでしょ! どうなの、状態は」


 お母さんにそう言われてなんて答えたらいいか、分からなくなった。
 治ってきてるよ、も、元気だよ、も自信を持って言えなかったからだ。


「治るようにがんばってるよ」


 前向きな言葉を言った途端、胸が痛くなった。
 それを隠すように「お母さんは?」と問う。


「よくなったよ。今は少しずつだけど働いてるし、あ、そうそう。お父さんはハローワークに通って働き口をさがしているの。
 また暮らせるといいわね」


 普通の生活……。考えただけで頭が痛い。
 何か私が変わるきっかけがあればいいんだけど。
 そんなことを考えながら「うん」と返事をする。

 その後は「体に気をつけて」とか「早く会えるといいね」とかを話して、電話を切った。


「大夢先生、携帯ありがとうございました」

「いえいえ。お話出来て良かったですね」

「はい、元気そうで何よりでした」

「佐々木さんも良くなります。絶対に」


 大夢先生のその眼差しが、私に自信をつけてくれるようで、さっきの前向きな言葉が本物になったらいいなと思ったのだ。
 でも頭の隅に〝歩夢あゆむ先生と離れたくない〟という文字列が浮かんでいた──。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていました~

あんねーむど
恋愛
 栄養士が騎士団の司令官――!?  元社員食堂の職員・白城千鳥は、ある日突然「聖女」として異世界アルゼリオン王国に召喚される。  しかし期待された聖女の力はまったく発現されず、判明したのは彼女がただの一般人だという事実。  役立たずとして放逐されるかと思いきや、千鳥は王宮食堂で料理人として働くことに。慣れない異世界生活の中でも、栄養管理や献立作りを通して騎士たちの体調を支え、静かに居場所を築いていく。  そんなある日、問題児ばかりを集めた新設部隊アルゼリオン王国騎士団戦術騎士隊【アルタイル】 が発足。なぜか千鳥が司令官に任命されてしまう。  戦えない、魔法も使えない、指揮の経験もない。  困惑する千鳥を待っていたのは、王子である身分を隠している隊長のエドガー、年下で聡明だが一途すぎるノエル、俺様で口の悪い元衛士隊のクラウディオ、外見に反してドSでマッドサイエンティストのフェルナンド、癖も事情も抱えたイケメン騎士たちだった。  最初は反発され、軽んじられ、失敗も重ねる千鳥。それでも彼女は食事、生活管理、観察力といった〝戦えないからこそ持つ力〟で騎士一人ひとりと向き合い、少しずつ信頼を勝ち取っていく。  聖女でも悪役令嬢でもない。戦場に立つことすらできない彼女は、やがて隊員たちを導く司令官として成長していく。    ★にキャラクターイメージ画像アリ〼  ※料理モノの物語ではありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

一条さん結婚したんですか⁉︎

あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎ 嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡ ((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜 ⭐︎本編は完結しております⭐︎ ⭐︎番外編更新中⭐︎

処理中です...