好きだといわせたい

雪帽子

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8話 ノンストップ※

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 撮影の休憩中、忍の肩に手を回して抱き寄せると、周囲からは「きゃぁ!」という悲鳴のような声が上がる。その後もBL営業を理由に耳にキスをしたり、髪を触ったりする。最初の方は「触っても大丈夫?」「キスをしても大丈夫?」と確認をとっていたが、忍も「カップルなんだから、聞かなくて良いよ」と役に入りきっているようだった。
 彼の芝居が上手いのは、演技経験のほとんどない俺でも分かる。忍は感情を表に出すのが苦手な性格で、普段から本来の自分と違う人間を演じているので芝居でも力を発揮するのではないかと、社長は言っていた。

 セックス中、忍は時折怯えた表情を見せることがあった。自分の領域に誰かが入るのを恐れているのだろうか。俺は忍が嫌がることはしたくなかった。優しく丁寧に接して、僅かでも不安を取り除いてあげたいと思う。
「……んっ」
 胸の突起に食い付いて吸ったり舐めたりすると、忍は感じているようで、身体を捩らせてその先を求めた。いつまでも俺が性器を触らないので、俺の頭を撫でるようにして、「黎、そこはもう大丈夫だよぉ……」と彼はか細い声で言った。
 そのまま快楽に溺れていく忍に、「しの、好きだよ」と伝えた。奥まで突いていき、俺から離れたくなくなるように良いところを執拗に攻めると、忍は俺の後ろに回した手の爪を立てて、背中に傷をつける。それが彼からの応えだった。黄昏時、取り残されたようなこの想いに、返事の言葉をもらったことはまだない。
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