存在

aoisyan

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存在

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早く自分が存在している証拠が欲しい。というのも、ある日の自動車事故から目覚めたときから俺は周りから無視されるようにになっていた。そう、俺のことが見えていないのだ。
 最初俺は、自分は死んだ。だから誰にも見えないし、自分の声が届かない。そう思った。
 だがそうも思えない。俺の葬式が行われていないのだ。
 今、自分が存在しているという証拠は少なからずある。
 例えば、俺の失踪を扱った報道機関が多いこと。親が警察に、俺の捜索届を出したということ。
 どうやら俺は、失踪者扱いらしい。
 寂しさは全くという程無かった。
 最初はこの状態を喜んだ。電車のただ乗り、女風呂に入る、女子校生の更衣室に入る。
 もちろん全て実行した。
 最初のうちは良かった。最初のうちは。
 だが、ゆうゆうと街を歩いていると度々、誰にも聞かれていないと思っている人々の陰口、横行しているいじめ、虐待。俺はこのようなものを見ると気分が悪くなった。止めようと思っても止められない。自分にはただ目をつぶることしかできないのだ。
 
あれこれ考えていると、前から歩いて来た男性とぶつかりそうになった。
 だがかわさなかった。男性は俺をすり抜けていった。
 俺は存在ごと消された。そう確信した。
 
警察は俺の捜索を諦め、親は立ち直って普段通り生活している。
 今は透明になれて嬉しい、なんて思わなくなった。
 異常なこの状況から抜け出したい。そう願いながら眠りについた。
 


―――「どうです?息子の容態は?」
 ―――「何とか生命は維持しているようですね。」
 ―――「自動車事故からちょうど一年。息子の植物状態はいつになったら治るでしょうか?」
 ―――「...安心して私たちに任せて下さい。」
 


俺は永遠にこの異常な世界を味わわないとけないのか?
 そう思いながら俺は、今日も街を歩く。
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2016.08.04 ユーザー名の登録がありません

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