こおにの手紙

箕面四季

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みえちゃん その1

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 七月も半ばを過ぎました。

 イチョウの葉っぱは青々としげり、木々は新緑のよい香りをたたせ、アブラゼミは、今日も暑くなりますよと歌います。

 そんな朝です。
 もうお日さまは、熱いまなざしを地面に注いでいました。


 いちだん、にだん、さんだん、よんだん。
 頭に二つのリボンを結んだ小さな女の子が、今日も八十八神社の石段を登っていきます。

 みえちゃんです。


 さんじゅうご、さんじゅうろく……。
 石段は全部で八十八段あります。

 大人の中には、見上げただけでギブアップをしてしまう人もあるくらいです。
 小さなみえちゃんにとっては、それは長い道のりなのです。


 しちじゅうはち、しちじゅうく……。

 ひたいにこつぶの汗をたっぷりのせて、みえちゃんはせっせこ登っていきます。
 こつぶの汗はどんどんつながって、みえちゃんのばら色のほっぺたをつたっては流れていきました。



 ジーーーーー、チリチリチリチリ




 石段が終わりに近づくと、アブラゼミの歌声はいっそう大きくなり、ついには割れんばかりの大合唱です。



「はちじゅうは~ち! ふう、ついたぁ」

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