ようこそ、むし屋へ2 ~麗しの碧ちゃん&むしコンシェルジュの卵編~

箕面四季

文字の大きさ
65 / 97
むしコンシェルジュの業務

触らぬむし屋に祟りなし!?

しおりを挟む
「ほたるちゃ~ん、こっちで見学しよーよぉ」
 壁際の赤いベルベットソファに座って、碧ちゃんが手招きしている。

(碧ちゃん、ナイス助け舟!)

「では、ごゆっくりー」
 ほたるはペコリとお辞儀をして、ささささと碧ちゃんの方へ逃げだす。

「ダメほたる、ゴキブリみたいだな」
 後ろで優太君が失礼なことを言っている。

 が、目の保養を見つけたほたるは、聞き流すことにした。
 目の保養。それは、アンティークソファに座る碧ちゃんのことである。

(美少女とアンティークソファって、絵になり過ぎる~)
 うっとりする光景。
 ボルドー色のソファと碧ちゃんの水黄緑のワンピースの取り合わせもいい!
 そのまま絵画になっちゃいそうな神々しさ。

「ほたるちゃんはここね~」と、横にずれた碧ちゃんが、ほたるの場所を空けてくれる。
 ほたるがすとんと座ると、碧ちゃんはいつものようにぴっとりと腕を絡めてくっついてきた。

 相変わらず、パーソナルスペースが狭くてドキドキする。
 もしこれが水黄緑の君だったら、ドキドキしすぎて死んでしまったかもしれない。
 きゅん死ならぬ、ドキ死。
 碧ちゃんが可愛い笑顔をほたるに向けた。

「触らぬむし屋に祟りなしってねー。仕事中のむし屋には近づかないほうが身のためだよー。客に対して笑顔振りまいてるけど、内心神経ぴっりぴりだからさぁ」
「特に、珍しいむしを取り出すときにはね」
 いつの間にか、ほたるの隣にアキアカネさんまで座っていて、思わずほたるは飛び上がった。

「あ、アキアカネさん、いつの間に?」
「ついさっき」
 こともなげに言って、にっこり笑うアキアカネさん。こっちはこっちで近いんですけど。
 ドキッとしたほたるの身体が、ぐいっと反対側へ引っ張られる。

「このソファは二人掛けー。定員オーバーですぅ~。シッシッ」
「残念。このソファは三人掛けだよ。それよりオオミズアオ君、うちの店の大切な見習いスタッフを誘惑しないでくれるかな」
 鋭く微笑んだアキアカネさんが、ほたるの背中に手を回してぐいと引き寄せる。

「え、ちょっと、アキアカネさん?」
 本気でドキ死するんですけど。

「ちょっと~、ほたるちゃんが嫌がってるじゃーん。放してよー」
 負けじと碧ちゃんが、ぐいっと引っ張り返す。

「嫌がられているのは君のほうだよ」
 再びアキアカネさんが引っ張り返す。綱引きの綱ってこんな気持ち?
「ちょ、ちょっと二人とも」

「うおっほん!!!」
 年輪テーブルの方で、大きな咳払いがした。

「申し訳ございません。お客様、一旦失礼致します」
 優太君と向かい合うように座っていた向尸井さんが、音もなく椅子から立ち上がり、きっちり斜め四十五度で、優太君にお辞儀をしている。

(なんか、嫌な予感が)
 くるりと向きを変え、つかつかこちらに向かってくる向尸井さんの顔を見て「ひっ」と、ほたるは小さな悲鳴を漏らした。鬼の形相とは、まさにこの顔のこと。

「おい。そこの三バカトリオ」
 向尸井さんが、ぼそりと低く唸る。
 メラメラと、向尸井さんの身体から怒りのオーラが噴出中。

 切れ長の二重をすっと鋭く細めて、向尸井さんが切り裂くように微笑んだ。
 ぴきっと石にされたように、ほたるたちは固まる。

「これ以上騒がれるようなら、全員まとめてお引き取り願いましょうか。宇宙のかなたに」
 ベルベットソファの上にピシッと正座した三人は『すみませんでした~』と土下座をしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

エリちゃんの翼

恋下うらら
児童書・童話
高校生女子、杉田エリ。周りの女子はたくさん背中に翼がはえた人がいるのに!! なぜ?私だけ翼がない❢ どうして…❢

たったひとつの願いごと

りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。 その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。 少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。 それは…

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

処理中です...