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ひいじいじの来客
運命の出会い
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「私はシングルマザーの家庭で育ちました。仕事が忙しい母に変わり、私を育ててくれたのは祖母です。祖母は、寝物語に椿の家の昔話を語り、本土のどこかにいる人口むしと、むしに縁のある人たちに近づいたらいけない。北海道から出たらいけないよと、私に言い含めました。もとより私は北海道が大好きだったので、本土に行くつもりはありませんでした。高校卒業後は地元企業に就職する予定だったんです」
「うぶ~」
抱っこ紐の中から愛らしい声がした。
「あら、起きたのね」
優太君のお母さんが赤ちゃんを覗き込んで、にっこりする。愛おしさがあふれ出ていて、見ているだけでこっちまで笑顔になる表情だった。
「あぶ~、あは」
ご機嫌に喋る赤ちゃんをあやしながら、優太君のお母さんは続けた。
「私の通っていた高校は進学校でした。学業優先で修学旅行もなかったんです。でも、それじゃ寂しいよねって、友達が修学旅行を計画したんです。その旅行が、人生初にして最後の本土旅行になる予定でした。その旅行中、私は、友達とはぐれてしまったんです。携帯と財布を入れたバッグまで失くして、挙句、金髪のヤンキーに絡まれていた私を助けてくれたのが夫です。もやしみたいにひょろひょろな身体を精一杯踏ん張って、足をガクガクさせながら、弁護士の名刺をもんどころみたいに突き付けて、必死に追い払ってくれたんです。そのあと一緒にバッグも探してくれて、友達のところまで送り届けてくれた。歳も離れていて、全然カッコよくないのに、私には王子様に見えました。ビビビと来たっていうのはこういうことかって、運命を感じちゃったんですよね」
可笑しそうにクスクス笑う優太君のお母さんに、ひいじいじもショボショボの目でにっこりする。
「旦那さんのこと、愛しとるんじゃねぇ」
「はい。とっても」
清々しく言い切って「だから予感があったんです」と、優太君のお母さんは続けた。
「出会った瞬間、私の中のぽっかり空いた穴のような部分が、じんじん疼くような感覚もして、この人は、祖母の昔話に関係のある人に違いないと、ピンときました。出会ってしまったのだ、と、直感したんです。同時に、もう離れられないと、思いました。次の日、貰った名刺を頼りに、彼が立ち上げたばかりの個人事務所に、お菓子を持ってお礼に行きました。再び彼に会い、他愛のない話をする中で、私は絶対にこの人を好きになって、いつかこの人の子どもを産むことになると、確信しました。だから、私は、半ば押し掛けるように夫の事務所で事務員に雇ってもらい、仕事の合間に佐世保家と椿家の過去や、私たちが家族になることで起こる未来の可能性について、徹底的に調べることにしました。夫の地元にある神明大学では、地元の伝承を学べる郷土歴史学部の夜間コースがあって、そこにも通った。そして」
優太君のお母さんは、意思のこもった瞳で、ひいじいじを見つめた。
「すべてを知った上で、私は夫と結婚し、この子を産み、今、蜻蛉さんを訪ねています。決して、やみくもにお願いしているわけでも、やけくそになっているわけでもありません」
「うぶ~」
抱っこ紐の中から愛らしい声がした。
「あら、起きたのね」
優太君のお母さんが赤ちゃんを覗き込んで、にっこりする。愛おしさがあふれ出ていて、見ているだけでこっちまで笑顔になる表情だった。
「あぶ~、あは」
ご機嫌に喋る赤ちゃんをあやしながら、優太君のお母さんは続けた。
「私の通っていた高校は進学校でした。学業優先で修学旅行もなかったんです。でも、それじゃ寂しいよねって、友達が修学旅行を計画したんです。その旅行が、人生初にして最後の本土旅行になる予定でした。その旅行中、私は、友達とはぐれてしまったんです。携帯と財布を入れたバッグまで失くして、挙句、金髪のヤンキーに絡まれていた私を助けてくれたのが夫です。もやしみたいにひょろひょろな身体を精一杯踏ん張って、足をガクガクさせながら、弁護士の名刺をもんどころみたいに突き付けて、必死に追い払ってくれたんです。そのあと一緒にバッグも探してくれて、友達のところまで送り届けてくれた。歳も離れていて、全然カッコよくないのに、私には王子様に見えました。ビビビと来たっていうのはこういうことかって、運命を感じちゃったんですよね」
可笑しそうにクスクス笑う優太君のお母さんに、ひいじいじもショボショボの目でにっこりする。
「旦那さんのこと、愛しとるんじゃねぇ」
「はい。とっても」
清々しく言い切って「だから予感があったんです」と、優太君のお母さんは続けた。
「出会った瞬間、私の中のぽっかり空いた穴のような部分が、じんじん疼くような感覚もして、この人は、祖母の昔話に関係のある人に違いないと、ピンときました。出会ってしまったのだ、と、直感したんです。同時に、もう離れられないと、思いました。次の日、貰った名刺を頼りに、彼が立ち上げたばかりの個人事務所に、お菓子を持ってお礼に行きました。再び彼に会い、他愛のない話をする中で、私は絶対にこの人を好きになって、いつかこの人の子どもを産むことになると、確信しました。だから、私は、半ば押し掛けるように夫の事務所で事務員に雇ってもらい、仕事の合間に佐世保家と椿家の過去や、私たちが家族になることで起こる未来の可能性について、徹底的に調べることにしました。夫の地元にある神明大学では、地元の伝承を学べる郷土歴史学部の夜間コースがあって、そこにも通った。そして」
優太君のお母さんは、意思のこもった瞳で、ひいじいじを見つめた。
「すべてを知った上で、私は夫と結婚し、この子を産み、今、蜻蛉さんを訪ねています。決して、やみくもにお願いしているわけでも、やけくそになっているわけでもありません」
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