ようこそ、むし屋へ2 ~麗しの碧ちゃん&むしコンシェルジュの卵編~

箕面四季

文字の大きさ
97 / 97
エピローグ ようこそ、むし屋へ

むしコンシェルジュの卵

しおりを挟む
 ペコっと元気よく頭を下げる優太君。
 ちっ、と、向尸井さんが小さく舌打ちして「余計なことを」と、碧ちゃんをジロリと睨んだ。
 でも碧ちゃんは、知らんぷり。

 ほたるは、優太君の言葉を復唱する。
 表向きは国際弁護士、しかしてその実態は、むし屋のむしコンシェルジュか。
 小学生らしい、夢のある夢な気がする! うん、いい!!

「つか、アキアカネさん。今食べてるのも昆虫食ですか?」
 自分で夢を語っておきながら、優太君の興味は早くも別のところに向いている。

「タガメのラスクだよ。食べるかい?」
「うっそ! オレの好きな水生昆虫ランキング上位に君臨するタガメが食べれるなんて、夢みたいだ」

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。テーブルに座って一緒に食べよう」
 わちゃわちゃと楽し気な二人を横目に、額に手を当て、浮かない表情の向尸井さん。

「ちょっと休憩に」
 逃げるように店の奥へ引っ込もうとしている。

「確かぁ、むしコンシェルジュとして素質ある者が弟子入りを願い出た場合~、むしコンシェルジュは技術伝承の義務により、これを受け入れなければならない~、じゃなかったけぇ?」
 碧ちゃんが、ニヤニヤと向尸井さんの背中に声をかけた。

「お前、何故それを」
「前に、蜻蛉から聞いた」
 ぱちりと、可愛くウィンクした碧ちゃん。向尸井さんがまた、ちっと、舌打ちする。
「蜻蛉のやつ、余計なことばかり吹き込みやがって。というか、オオミズアオ。そもそもお前は人間嫌いじゃなかったのか?」
「嫌いだよー。特に人間の子どもはね」

「なら、どうしてあの子に関わる」
「面白そうだから?」
 タガメラスクを齧る優太君を見て、にんまり笑った碧ちゃんが、「それにぃー」と、今度はほたるに、にっこり微笑む。
 やっぱり、碧ちゃんは可愛いな。と、見つめられたほたるはドキドキした。
 同性アイドルにキャーキャー興奮するファンの気持ちって、こんな感じだろうか。

「それにぃ~、僕が優太を推薦して、優太の後見人になれば、この店に自由に出入りする権利が手に入るからねー。そしたら、ほたるちゃんとずーーーっと一緒にいられるも~ん」
「ぐえっ。碧ちゃん、苦じい」
 ほたるに飛びついた碧ちゃんが、か細い身体で、ぎゅうぎゅうに締め付けてくる。
 碧ちゃんは、華奢に見えるけど、力士並みに力が強いのだ。

「優太少年はともかく、オオミズアオ君が店に来るのは風紀が乱れるから嫌だなぁ。ぜひ、オオミズアオ君には遠慮してもらいたいね」
 優太君と一緒にタガメラスクを齧りながら、眉を寄せるアキアカネさんに「べぇー」と、碧ちゃんがほたるに巻き付きながら、おもいっきり舌を出した。

「グロい食べ物を貪るアホメガネの方が、よっぽど風紀を乱してますよーだ。そっちこそ、ほたるちゃんがいる時は遠慮してよねー。グロいがうつるー」
「グロいがうつるという表現は世の中に存在しないよ。君は本当にバカだなぁ」

「きい~~! バカって言ったやつがバカなんですー。アホバカメガネー」
「ま、まあ、まあ、二人とも」
 二人の仲裁をしながら、ほたるは、ホクホク顔でタガメをカリっと食べている優太君を見た。

「優太君」
「ん?」
 タガメの頭を口から出して、優太君がほたるを振り返る。
 確かに、グロい。

 でも、幸せそうな顔だ。いろいろ乗り越えて、未来を向いている。
 ほたるはにっこり笑って言った。

「ようこそ、むし屋へ! これからよろしくね! むしコンシェルジュの卵さん」
「おう!」
 にかっと、はにかんだ子供らしい笑顔で、優太君は笑った。

                                 完
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

エリちゃんの翼

恋下うらら
児童書・童話
高校生女子、杉田エリ。周りの女子はたくさん背中に翼がはえた人がいるのに!! なぜ?私だけ翼がない❢ どうして…❢

たったひとつの願いごと

りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。 その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。 少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。 それは…

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

処理中です...