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ラブリーロンリープラネット
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「 映像、映ります」
「 うむ」
巨大な画面に男二人と女一人。そのなかの一人、初老の男がアップにされる。画面右上に惑星XXXの文字。
「 この対象は」
「 はっ、観察開始時にサンプルとなった知的生命体から数えて十四代目の子孫であります」
「そうか」
「 この雌のほうが、十五代目にあたります」
説明を受けながら、司令官は眉をひそめた。
「前回と同じようだな」
「ええ」
「前々回もその前も同じだったな」
「ええ」
画面では初老の男に頭をさげる青年の姿が映し出されていた。
「観察を始めてからずっと変わらない。進化がないなこの星は」
「おっしゃるとおりでございます」
「たとえこの雌雄が次世代を繁殖したとして雄が産まれても、その雄がまた同じようにふるまう。この星の知的生命体は雄が常に雌のオーナーだ」
「それなりの文明を築き、知能も他の種より発展しているのに、残念なことです」
「知能は発達しているのに、知性がないのかもしれません」
「たしかにそうである。答えがあるものには答えられるが、答えなく自ら善き社会のために答えを見つけなければならないことに対して、彼らはあまりにも逆にふるまう」
「惜しむらくは、反対勢力があまりにも無力ということでしょうか」
「仕方あるまい。彼らの知性はあまりにも欲に弱い」
「一応宗教のようなものもあるようですが」
「あれは宗教ではない。彼らの信じているあれは、ま、今は信じていたか……あれは、別のベクトルの欲を満たすための方便だよ」
「神を信じること自体が欲でございますからね」
「そういうことだ」
初老の男に殴られ、青年が苦痛にうめいたが、苦笑いのようなものが浮かんでいた。
「これも繰り返し」
「まったくであります」
「自分が受けた苦痛を、自分もそうだったからと次世代に繰り返す」
「愚の骨頂でございますね」
「私の台詞をとるな」
「はっ、申し訳ございません」
「決定だ」
戸惑いの色無く司令官が指令を下した。
「この星を植民地化するにあたり、まずこの知的生命体・雄を全滅させよ」
「かしこまりました」
しばらくすると、宇宙船から薄紫色の光線が放たれた。光線は惑星をじわりじわりと包んだ。惑星が自転を一回終えるころ、知的生命体・雄は跡を残さず消された。安全性の考慮により、それと同時に、すでに惑星上に潜んでいた彼女らがその場所と入れ替わった。彼女らの見た目は、惑星の知的生命体の雌の目には消された雄と同じように映るようにしてあった。
こうして惑星の植民地化は完了し、惑星の知的生命体を使い、彼女らは着実に資源を獲得していった。より善き社会を知性で求める彼女らのおかげで、惑星の知的生命体の社会は劇的に変化した。
問題は継続性であった。すべてが雌となった今、この惑星の知的生命体の種は従来の方法では増えなくなった。働き手が減れば、収穫も減る。そのため、惑星の知的生命体の細胞を使い、科学の力で増やしてみた(もちろん植民がばれないように従来のように雌の体からでるようにした)が、できた仔はあまりにも病弱であった。次世代の数が減っていくのを確認し、司令官が第二の指令を与えた。
こうして植民していた彼女らはかつてこの惑星の知的生命体が持っていたような生殖機能をその体に備えるようになった。それにより、種が混じり、健康的な仔が産まれるようになった。徐々に旧来の知的生命体の数が減り、混種が増えていった。旧来種が絶滅し、混種と原種だけになった頃、惑星を監視していた宇宙船が別の宇宙船により破壊された。帰るすべをなくした彼女らは惑星にとどまり繁栄を築いていった。
繁栄を極めてしばらくした頃、惑星に宇宙船が艦隊を率いて降り立った。そうして善き社会は圧倒的な暴力によって植民地化され、収奪され、あとには荒野だけが残された。
「 うむ」
巨大な画面に男二人と女一人。そのなかの一人、初老の男がアップにされる。画面右上に惑星XXXの文字。
「 この対象は」
「 はっ、観察開始時にサンプルとなった知的生命体から数えて十四代目の子孫であります」
「そうか」
「 この雌のほうが、十五代目にあたります」
説明を受けながら、司令官は眉をひそめた。
「前回と同じようだな」
「ええ」
「前々回もその前も同じだったな」
「ええ」
画面では初老の男に頭をさげる青年の姿が映し出されていた。
「観察を始めてからずっと変わらない。進化がないなこの星は」
「おっしゃるとおりでございます」
「たとえこの雌雄が次世代を繁殖したとして雄が産まれても、その雄がまた同じようにふるまう。この星の知的生命体は雄が常に雌のオーナーだ」
「それなりの文明を築き、知能も他の種より発展しているのに、残念なことです」
「知能は発達しているのに、知性がないのかもしれません」
「たしかにそうである。答えがあるものには答えられるが、答えなく自ら善き社会のために答えを見つけなければならないことに対して、彼らはあまりにも逆にふるまう」
「惜しむらくは、反対勢力があまりにも無力ということでしょうか」
「仕方あるまい。彼らの知性はあまりにも欲に弱い」
「一応宗教のようなものもあるようですが」
「あれは宗教ではない。彼らの信じているあれは、ま、今は信じていたか……あれは、別のベクトルの欲を満たすための方便だよ」
「神を信じること自体が欲でございますからね」
「そういうことだ」
初老の男に殴られ、青年が苦痛にうめいたが、苦笑いのようなものが浮かんでいた。
「これも繰り返し」
「まったくであります」
「自分が受けた苦痛を、自分もそうだったからと次世代に繰り返す」
「愚の骨頂でございますね」
「私の台詞をとるな」
「はっ、申し訳ございません」
「決定だ」
戸惑いの色無く司令官が指令を下した。
「この星を植民地化するにあたり、まずこの知的生命体・雄を全滅させよ」
「かしこまりました」
しばらくすると、宇宙船から薄紫色の光線が放たれた。光線は惑星をじわりじわりと包んだ。惑星が自転を一回終えるころ、知的生命体・雄は跡を残さず消された。安全性の考慮により、それと同時に、すでに惑星上に潜んでいた彼女らがその場所と入れ替わった。彼女らの見た目は、惑星の知的生命体の雌の目には消された雄と同じように映るようにしてあった。
こうして惑星の植民地化は完了し、惑星の知的生命体を使い、彼女らは着実に資源を獲得していった。より善き社会を知性で求める彼女らのおかげで、惑星の知的生命体の社会は劇的に変化した。
問題は継続性であった。すべてが雌となった今、この惑星の知的生命体の種は従来の方法では増えなくなった。働き手が減れば、収穫も減る。そのため、惑星の知的生命体の細胞を使い、科学の力で増やしてみた(もちろん植民がばれないように従来のように雌の体からでるようにした)が、できた仔はあまりにも病弱であった。次世代の数が減っていくのを確認し、司令官が第二の指令を与えた。
こうして植民していた彼女らはかつてこの惑星の知的生命体が持っていたような生殖機能をその体に備えるようになった。それにより、種が混じり、健康的な仔が産まれるようになった。徐々に旧来の知的生命体の数が減り、混種が増えていった。旧来種が絶滅し、混種と原種だけになった頃、惑星を監視していた宇宙船が別の宇宙船により破壊された。帰るすべをなくした彼女らは惑星にとどまり繁栄を築いていった。
繁栄を極めてしばらくした頃、惑星に宇宙船が艦隊を率いて降り立った。そうして善き社会は圧倒的な暴力によって植民地化され、収奪され、あとには荒野だけが残された。
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