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となり
しおりを挟む選択科目は数学と英語にした。それを決めたのは4月だったので、示し合わせたわけじゃない。だけど真喜雄と同じ教科を選んでいた。不思議。
夏休み明けの最初の授業で席替えをした。数学は僕が真喜雄の2つ後ろ。英語は隣になった。
席に着くと、がこん、と机をくっつけた。
「えっ、」
「・・・教科書、見せて」
真ん中に広げてあげると、そっと覗き込んだ。授業が始まる。
ぼんやりと聞き流しながらノートを取っていると、真喜雄が隅っこにチョロチョロとペンを走らせた。
『実は 席 替わってもらった』
ちらりと顔を見る。無表情のまま、またペンを走らせた。
『一番後ろの 窓ぎわって だれにもじゃまされない いい席だろ』
黙って頷く。
もう一度視線を寄越すと、照れたように笑っていた。
『嬉しい ありがとう』
『うん 透吾の字 きれーだな』
『真喜雄は筆圧 強いね』
『よく ノートに あなあく』
思わず小さく笑うと、ペンで手の甲を撫でられた。
チラチラ周りを確認してしまう。みんな真面目に授業を受けていた。
僕らだけ隔離されたみたいな世界だった。誰の目も気にせず、音に出さないで他愛もない言葉を交わす。
教科書の隅に書き込んだ文字はしっかりと僕と真喜雄を刻んでいく。
宝物みたいにキラキラ光っていて、綺麗だった。
『透吾』
『なに?』
『透吾』
『どうしたの?』
『透吾←おれ この漢字一番好きだ』
しっかりと、大きく書かれた文字に指先が震えた。
真喜雄はペンを置くと、頬杖をついて窓の方に顔を向けた。背けたつもりだろうけど、耳が真っ赤だった。
多分僕も同じ。
誤魔化すように俯いて、ノートを取るふりをして、聞こえない教師の声を必死に探した。
聞こえなかったのはもちろん真喜雄のせいだ。バクバクとうるさい心音にかき消されてしまったのだ。
くっつけた机の下で足がぶつかった。少し驚いて、またくっつける。多分心音は穏やかにはならないし、顔の火照りも、しばらく取れることはない。
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