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明日の僕らは1
しおりを挟む季節は冬になった。本格的に受験モードに突入している。
僕は相変わらず勉強尽くめで、正直へこたれそうだった。普段から手を抜かずやってきたつもりではあったけど、大学受験ともなると高校受験のようにスムーズにいかない。
高校受験はすごく楽だったなと思う。
真喜雄もサッカー尽くめだった。
インターハイには出られなかったけど、また大きな試合の予選に向けて練習をしている。
僕と真喜雄の時間はとてつもなく少なくなっていた。
お互い時間がなかった。メールと電話が少しできるかな、くらい。
お互いに励ましあった。試合も行けたら行く予定だったけど、根詰めているので余裕がなかった。
でも約束があるから頑張れる。大学に受かって、就職を決めて卒業したら一緒に暮らすのだ。僕の支えだった。
行きたい大学も学部もなんとか絞れてきて、滑り止めの私立大学の願書も出して、ただただひたすらペンを走らせていた。
「透吾」
ちょんっと腕を叩かれた。はっと我に返って顔を上げると、真喜雄が隣でペンを持ったまま僕を見ていた。
選択美術の時間も、僕は必死に参考書をめくるようになった。
「・・爪」
「え?うわ・・・またやっちゃった」
実は僕は、昔から集中すると爪を噛む癖があった。しばらく収まっていたけど、また出てきてしまった。
ため息をつくと、ん、と拳が差し出された。手のひらを向けて差し出すと、飴玉が落ちてきた。
「ありがとう」
「・・・ここ聞いてもいいか」
教科書を差し出される。
真喜雄はすでにスカウトで行く大学が決まっているようだった。念には念をとのことで、テストでも成績を落さないように勉強をしている。
「ん・・。あ、これは・・・」
「ん・・。あのさ」
「え?」
「っと・・・今日、多分早く終わるんだけど・・・会えるか」
「あ・・ごめん、今日結構遅くて・・」
「そか」
最近こうやって断ることが増えた。
申し訳なくて何度も謝ると、真喜雄は優しく笑って、いいんだと小さく言った。
会いたいなと思うけど、その気持ちにかまけて成績を落したら今のままじゃ絶対本命は落ちてしまう。自分の気持ちを縛り付けて机に向かうのが時々窮屈だったけど、こんなこと一瞬だと言い聞かせた。
「電話してもいいかな」
「うん。待ってる」
「・・・最近、お昼も別になってしまってごめんね」
「いや、謝ることじゃない。おれが楽をしすぎなんだ」
そんなことはない。今まで頑張って来たからスカウトがもらえたのだから。
真喜雄はノートに向き直ると、がりがりとペンを走らせた。僕も、参考書に戻った。
*********
「水出、今度図書室で勉強会やんね?」
「え?」
声をかけてきたのは橋本くんと田所くんだった。この2人も受験組だった。
「頭いいやつと一緒にやった方が勢いづいて頭働く気がしてさ。塾までの時間とか、塾がない日とか」
「お前だって下にいるやつに追い越されるかもって思えば、もっと頭に入るだろ」
橋本くんが嫌味のように言う。本当に、彼は好きになれない。悪い人じゃないけど言い方にちょっと棘がるというか嫌味があるのだ。
よく和知くんは彼と付き合えているなと思う。
でも事実かもしれない。
自分の頭がいいとは思わないけど、正直彼らよりは成績がいい。ちょっと追われるくらいの方が緊張感も出ていいのかもしれない。
少し考えてから、分かったと返事をすると早速今日からやろうと言われたので、塾の時間まで図書室によることにした。
一瞬真喜雄の方を見た。けど、他のサッカー部の人と話していた。
塾の前に図書室に行くのが日課になった。誰かに教えるという行為は、結構自分の頭が整理されるのでよかった。
塾の成績も少し上がった。素直に嬉しかった。
だから、僕は大事なことを見落とした。
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