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将来のことを考えましょう
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クロードは仕事の時間を、メリッサがいる時間に合わせてくれています。わたくしが家で一人きりにならないようにです。
家に持ち帰ってできる仕事が大半のようですので、無理はないようです。
ただ、作業用の自室に籠る時もありますので、メリッサが来るまでの間、別々の部屋で過ごすこともあります。さほど広くない屋敷ですので、互いの気配は感じられますが。
その一人になる少しの時間に、わたくしは色々と考えてしまうのです。クロードが伯爵家に戻った後のことです。
住居は申し訳ないですがこのまま住まわせてもらって、何か仕事を見付けて子と二人で生活していくことになるかと思います。
その肝心の仕事についてが、わたくしにどのようなことができるのか、分からない状況ですので不安なのです。
考えられるのは家庭教師などの、何かを子どもに教える職業でしょうか。ですが、それによってどれくらいのお給金を頂けるのかも見当が付きません。
それとも住み込みで働かせてもらえるようなお仕事を探すべきなのでしょうか。働きながらまだ小さい我が子の面倒もみなければいけません。預かっていただけるようなところがあればいいのでしょうが、おそらくそれにもお金がかかるはずです。
立ちはだかるのはやはり『お金』の壁なのです。
こんなことでしたら、屋敷から出る際に宝石の一つでも持ってくるべきだったのでしょうか。
いいえ、いけません。わたくしの宝石は父か、ユーリオン様に贈っていただいたものしかないのです。それを売って生活の足しにするなど、してはいけないことです。
でも現実問題、どうしたらいいのか分からなくて、そんなことまで考えてしまうのです。
このままクロードと『男女の交わり』を持たないまま出産まですれば、クロードは良いきょうだいになるようにすると約束してくれました。ですから、生まれた子を彼に預けて外出もさせてもらって、仕事を探すこともできるでしょう。自分が世間知らずな自覚はあります。ですが、当初はお部屋に箒をかけることさえ出来なかったわたくしが、今ではお部屋の隅まで完璧に磨きあげメリッサにも太鼓判を押されるほどにお掃除名人になったのです。お料理の方はまだちょっと不安ですが、伯爵家にいた頃とは雲泥の差です。まぁ、昔は料理をする機会さえありませんでしたが。
ですから、覚えは悪くないと思うのです。働きたい熱意を伝えて、一生懸命お願いして雇ってもらえれば、クロードが去る日までには子と二人暮らしていけるようになるはずです。その為にはクロードが今お世話になっている商人の方の伝手を使うのも手かもしれません。
そこまで考えて、お昼ご飯の準備をしようと寝室に置いてある椅子から立ち上がると、いつの間にかドアを開けてその隙間からクロードがこちらを見ていたことに気がつきました。
いつドアを開けたのでしょうか。全く気がつきませんでした。考え事をしていたせいですね。
「クロード、ごめんなさい。今すぐ昼食を作りますね。」
昼食は昨日の残りのパンにハムとチーズを切って乗せたものです。
クロードの立っているドアから台所に向かおうとすれ違う時、腕を掴まれました。
「姉さま、何を考えていたのです?とても不安そうな顔をしておいででした。」
いつから見られていたのでしょうか。多分ため息も吐いてしまっていたはずです。
「何でもないのです。ただ、うちのお庭は、本当に殺風景ですから、それを嘆いていたのですよ。」
「……外出は、だめです。」
罪悪感を滲ませたような硬い表情でクロードはわたくしを見つめます。
わたくしはそれを解すように優しく頬をつねりました。
「もちろん、わかっていますわ。」
――この箱庭の中だけでわたくしが過ごせるのは、あと数ヶ月なのですから。
家に持ち帰ってできる仕事が大半のようですので、無理はないようです。
ただ、作業用の自室に籠る時もありますので、メリッサが来るまでの間、別々の部屋で過ごすこともあります。さほど広くない屋敷ですので、互いの気配は感じられますが。
その一人になる少しの時間に、わたくしは色々と考えてしまうのです。クロードが伯爵家に戻った後のことです。
住居は申し訳ないですがこのまま住まわせてもらって、何か仕事を見付けて子と二人で生活していくことになるかと思います。
その肝心の仕事についてが、わたくしにどのようなことができるのか、分からない状況ですので不安なのです。
考えられるのは家庭教師などの、何かを子どもに教える職業でしょうか。ですが、それによってどれくらいのお給金を頂けるのかも見当が付きません。
それとも住み込みで働かせてもらえるようなお仕事を探すべきなのでしょうか。働きながらまだ小さい我が子の面倒もみなければいけません。預かっていただけるようなところがあればいいのでしょうが、おそらくそれにもお金がかかるはずです。
立ちはだかるのはやはり『お金』の壁なのです。
こんなことでしたら、屋敷から出る際に宝石の一つでも持ってくるべきだったのでしょうか。
いいえ、いけません。わたくしの宝石は父か、ユーリオン様に贈っていただいたものしかないのです。それを売って生活の足しにするなど、してはいけないことです。
でも現実問題、どうしたらいいのか分からなくて、そんなことまで考えてしまうのです。
このままクロードと『男女の交わり』を持たないまま出産まですれば、クロードは良いきょうだいになるようにすると約束してくれました。ですから、生まれた子を彼に預けて外出もさせてもらって、仕事を探すこともできるでしょう。自分が世間知らずな自覚はあります。ですが、当初はお部屋に箒をかけることさえ出来なかったわたくしが、今ではお部屋の隅まで完璧に磨きあげメリッサにも太鼓判を押されるほどにお掃除名人になったのです。お料理の方はまだちょっと不安ですが、伯爵家にいた頃とは雲泥の差です。まぁ、昔は料理をする機会さえありませんでしたが。
ですから、覚えは悪くないと思うのです。働きたい熱意を伝えて、一生懸命お願いして雇ってもらえれば、クロードが去る日までには子と二人暮らしていけるようになるはずです。その為にはクロードが今お世話になっている商人の方の伝手を使うのも手かもしれません。
そこまで考えて、お昼ご飯の準備をしようと寝室に置いてある椅子から立ち上がると、いつの間にかドアを開けてその隙間からクロードがこちらを見ていたことに気がつきました。
いつドアを開けたのでしょうか。全く気がつきませんでした。考え事をしていたせいですね。
「クロード、ごめんなさい。今すぐ昼食を作りますね。」
昼食は昨日の残りのパンにハムとチーズを切って乗せたものです。
クロードの立っているドアから台所に向かおうとすれ違う時、腕を掴まれました。
「姉さま、何を考えていたのです?とても不安そうな顔をしておいででした。」
いつから見られていたのでしょうか。多分ため息も吐いてしまっていたはずです。
「何でもないのです。ただ、うちのお庭は、本当に殺風景ですから、それを嘆いていたのですよ。」
「……外出は、だめです。」
罪悪感を滲ませたような硬い表情でクロードはわたくしを見つめます。
わたくしはそれを解すように優しく頬をつねりました。
「もちろん、わかっていますわ。」
――この箱庭の中だけでわたくしが過ごせるのは、あと数ヶ月なのですから。
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